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モダナイゼーションとは?マイグレーションとの違いや目的、事例を解説!

最終更新日:2024/12/06 モダナイゼーションとは?マイグレーションとの違いや目的、事例を解説!

ITの世界は技術革新が著しいため、長年使い続けたシステムが時代から遅れを取ることがあります。そのような場合にはモダナイゼーションする必要があります。この記事ではモダナイゼーションの概要と、その意義、具体的な手法について解説します。

INDEX

  1. モダナイゼーションとは?わかりやすく解説
  2. モダナイゼーションが重要な理由
  3. モダナイゼーションのメリット
  4. モダナイゼーションの手法
  5. モダナイゼーションの注意点
  6. モダナイゼーションの実際の事例を紹介!
  7. まとめ

モダナイゼーションとは?わかりやすく解説

モダナイゼーションとは、レガシーシステムを最新の技術の製品やサービスに更新し、その柔軟性と効率性を高めるプロセスです。また、単にレガシーシステムを新しい“器”に置き換えるだけでなく、ビジネスプロセスの再設計、アプリケーションの再構築、データの再構成なども含みます。これによって、企業はレガシーシステムの制約を克服し、市場の変化に迅速に対応し、顧客の要求に応えることが可能になります。

モダナイゼーションプロジェクトは、まず、レガシーシステムの分析から始まります。これには、システムのアーキテクチャ、使用されている技術、ビジネスプロセスとの整合性、そして現在および将来のビジネス要件を満たす能力の分析が含まれます。

次に、目標を定義し、達成するための戦略を策定します。これには、どのコンポーネントをアップグレードするか、どのプロセスを改善するか、どの新技術を導入するかが含まれます。

そして、実装フェーズでは、新しいシステムの設計、開発、テストが実施されます。

最終的には、新しいシステムへの移行、そしてレガシーシステムからのデータ移行が行われます。

レガシーシステムとは?

レガシーシステムとは、企業や組織で長年使用されている古い情報システムです。当初の設計や技術が古くなっているため、現代の技術やビジネスニーズに対応することが難しくなっている場合があります。レガシーは遺産を意味しますが、レガシーシステムには、“負の遺産”の意味合いが含まれています。信頼性や安定性が高い一方で、保守や運用のコストが高止まりし、新しいシステムとの統合が困難なときもあります。企業や組織はシステムの更新や移行を検討する必要があります。

モダナイゼーションとレガシーマイグレーションとの違いは?

モダナイゼーションと類似した用語に、マイグレーションがあります。この2つはどのように違うのでしょうか。

マイグレーションは、システムやデータベース、アプリケーションをある環境から別の環境へ移行するプロセスを指します。これには、古いサーバーから新しいサーバーへの移行、あるいはオンプレミスのインフラストラクチャからクラウドへの移行などが含まれます。一方、モダナイゼーションは、既存のシステムを最新の技術やプラットフォームに更新し、改善することを指します。これには、ソフトウェアのアーキテクチャの再設計、新しいプログラミング言語への書き換えなどが含まれることがあります。

つまり、マイグレーションが主にシステムの場所移動に焦点を当てているのに対して、モダナイゼーションは機能そのものの能力向上を目的としています。

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モダナイゼーションとDXとの違いは?

一方、システムを刷新する概念としてはDXという用語もあります。モダナイゼーションとDXとの違いは、前者がレガシーシステムを最新の技術に更新し、機能や性能向上を図るのに対して、後者は単なる技術の更新にとどまらず、デジタル技術を活用してビジネスモデル自体を変革し、新たな価値を創出することをめざすという点にあります。しかし、これら2つの概念は相互に関連しあっているともいえ、モダナイゼーションが成功すればDXの実施が容易になり、DXが進むことでモダナイゼーションの必要性が高まるという側面があります。

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モダナイゼーションが重要な理由

モダナイゼーションは、企業が時々刻々と変化する事業環境で競争力を維持し、成長を促進するために不可欠です。技術は進歩し続けており、レガシーシステムでは新しい市場の要求に迅速に対応することができません。たとえば、今日ではAI活用があります。レガシーシステムはAI活用を前提として設計されていません。モダナイゼーションによって、企業はこうした技術を取り入れ、プロセスを効率化するとともに、顧客体験を向上させることができます。

また、既存ビジネスが確実に継続できるというだけでなく、新しいシステムの持つ能力によって、新しいビジネスの創出といったことも可能になります。

さらに、セキュリティの観点からもモダナイゼーションは重要です。新しい技術は、セキュリティ機能が強化されており、データ漏えいやサイバー攻撃のリスクを軽減することができます。

つまり、モダナイゼーションは、企業が長期的な競争優位性を確立し、変化する市場環境に柔軟に対応するための鍵であり、持続的な成長と成功を達成する上で企業にとって非常に重要な投資です。

モダナイゼーションのメリット

企業がシステムのモダナイゼーションを実施することには多くのメリットがあります。ここでは主なメリットとして、以下の6点を紹介します。

俊敏性が向上する

レガシーシステムやプロセスを最新の技術に置き換えることで、開発サイクルを短縮し、製品やサービスの改善を素早く行えるようになります。たとえば、クラウドベースのサービスを利用すれば、リソースのスケーリングが容易で、需要の変動に合わせて迅速に対応できます。また、モダナイゼーションを通じて、継続的インテグレーションや継続的デリバリーといったアジャイル開発の実践を促進でき、結果的にビジネスの機敏性を高めることにも寄与します。

コスト削減が図れる

レガシーシステムはしばしば高額なメンテナンス費用や運用コストを要しますが、最新の技術に更新することで、これらのコストを大幅に削減することが可能です。また、モダナイゼーションではプロセスの自動化が促進できるため、人的エラーが減少します。人的エラーが減少するということは、事後の対応で発生するコストを節約できるということです。さらに、最新のシステムはスケーラビリティに富んでおり、企業の成長に合わせてリソースを効率的に調整できるという点でも投資を最適化できます。

パフォーマンスが向上する

最新の技術を取り入れることで、処理速度が向上するため、システムの応答時間を短縮することができます。これにより、ユーザーの満足度を高めることが可能です。また、システムの最適化を行うことにより、効率的なリソース使用ができるようになります。これは運用コストの削減にもつながります。さらに、新しい機能やサービスの迅速な展開も可能になるため、結果として市場の変化に柔軟に対応できます。

データ駆動の意思決定が可能になる

最新技術の採用は、データ活用の可能性を高めます。そのため、企業はデータ駆動型の意思決定が行えるようになります。これは、データとその分析に基づいて決断できるということで、リアルタイムでの洞察を得ながら、市場の変化や顧客のニーズに迅速に対応できるようになります。データ活用によりリスクを低減し、コスト効率の良い企業経営が行えるようになります。さらに、企業に新しいビジネスチャンスを見出すための基盤も提供可能です。

コンプライアンス遵守が容易になる

新しい技術を採り入れることは、企業が法的要件や業界基準を満たす能力を強化するのにも役立ちます。これは、違反による罰金や評判の損失を防ぐために不可欠です。法令は頻繁に改正される傾向にあり、それらへの対応はレガシーシステムでは時間もコストもかかる作業ですが、こうした課題が解消されます。また、新しい環境ではコンプライアンスツールなども導入しやすくなり、継続的な監視と報告を行う体制が確立できます。

エコシステムとの統合が可能になる

エコシステムとの統合とは、企業が外部のビジネスパートナーやサービス、プラットフォームと効率的に連携することを意味します。これにより、システム間でのデータやリソースの共有が容易になり、ビジネスプロセスを自動化したり、最適化することを促進できます。また、他の企業との協業は、新しい市場への進出やイノベーションの創出の機会を生み出すとともに、ユーザビリティの向上にも貢献します。

モダナイゼーションの手法

具体的なモダナイゼーション手法としてはいくつかの種類があります。どの手法を選択するかは、満たすべきビジネス要件や予算、期限、人員リソースなどを考慮して決定します。

リプレース

古いハードウェアやソフトウェアを最新のものに交換するモダナイゼーションは、リプレースと呼ばれます。これまでのシステムがビジネスの成長や変化に対応できなくなったり、システムのメンテナンスが困難になった、コストがかかりすぎるという場合に特に有効です。パフォーマンスの向上やシステムの拡張性や柔軟性が期待できるという点がメリットですが、移行の際に互換性の問題に直面する場合もあります。

リホスト

リホストとは、既存のアプリケーションやデータを、新しいホスティング環境に移行することです。コードやアーキテクチャの大幅な変更を行わずに、アプリケーションをオンプレミスシステムやクラウドプラットフォームに移します。これにより、企業はレガシーシステムの制約から解放され、ビジネスニーズに応じた柔軟な拡張や変更が行えるようになります。リホストは、他の手法と比較して、比較的低リスクで迅速に実施できます。しかし、アプリケーションの構造を変更しないため、古いコードやアーキテクチャに依存した問題が残る可能性があります。

リライト

リライトは、古いプログラム言語や技術を最新のものに置き換える手法です。コードベースを根本から見直し、最新のプログラミング言語やフレームワークを使用してシステムを再構築します。メリットは、システムの長期的な持続可能性が確保できるようになることです。システムは将来の変更や拡張に対応しやすくなります。また、新しい言語やツールは、開発者にとってより使いやすく、生産性を高めることができます。しかし、その反面、レガシーシステムが複雑である場合、リライトプロセスは時間がかかり、コストが高くなる可能性があります。

リファクター

リファクターは、プログラムの外部的な振る舞いを変えることなく、内部構造を改善する手法です。具体的には、ソースコードを新しいプログラミング言語やライブラリに書き換えることになりますが、ここには単に言語を変更するだけでなく、より効率的かつ保守しやすいコードへと改善することも含まれます。これにより、コードの可読性が向上し、保守性も高まるため、品質の高いソフトウェア開発が可能になります。ただし、リファクタリングには時間とリソースが必要で、既存の動作しているコードを変更することで新たなバグを発生させるリスクがあります。

リビルド

リビルドは、既存のシステムを新しい技術やプラットフォームに合わせて再構築するアプローチです。この手法は、現行システムを完全に見直し、新しい技術やプラットフォームを用いてシステムを一から再構築します。新しい技術を取り入れることで、システムのパフォーマンス、セキュリティ、そして将来のビジネスニーズに対する柔軟性を大幅に向上させることができます。しかし、新しいシステムの設計から実装までを全面的に行うため、開発にかかる時間と費用が増加する傾向にあります。

モダナイゼーションの注意点

その一方で、モダナイゼーションは総じて大がかりなプロジェクトになる傾向があり、取り組み方をまちがえると失敗することもあります。ここでは、モダナイゼーションを進める上での注意点を挙げました。

レガシーシステムの詳細な分析を行う

まずは、レガシーシステムのアーキテクチャ、使用されている技術、依存関係、データフロー、そしてプロセスの全体像を理解することが不可欠です。

具体的には、第1ステップとして、レガシーシステムの構成要素を洗い出し、それぞれの要素がビジネス機能にどのように寄与しているかを見出します。続く第2ステップでは、システムの強みと弱みを分析し、改善が必要な領域を特定します。ここではまた、レガシーシステムが直面している問題点や制限事項を明らかにします。これらを新システム設計の指針として、移行計画の策定、リスクの特定と軽減、最終的なシステムの設計と実装とモダナイゼーションのロードマップを作成します。

ビジネス要件を明確にする

現在のビジネスプロセスを理解し、将来的な目標とそれを達成するための具体的な要件を定義しなければ、モダナイゼーションを成功させることはできません。それにはまず、関係者全員が合意するビジョンを設定し、それに基づいて必要な機能やシステムの性能要件を洗い出します。また、これらの要件を満たすために必要な技術的な解決策やリソースを特定し、優先順位をつけることも重要です。

データの移行と整合性を担保する

レガシーシステムから新しいシステムへデータを成功裡に移行し、整合性を保つことは非常に重要です。そのため、移行するデータの範囲と形式を特定し、新旧システム間でのデータ構造の違いを理解します。次に、データのクレンジングと変換計画を策定し、不整合や重複、欠落がないかを確認した上で作業を進めます。実際にデータを移行する際には、移行するデータ量に関する考慮やビジネスへの影響を最小限に抑えるための戦略も綿密に立案する必要があります。

徹底的にテストとバリデーションを行う

新しいシステムが求められた要件を満たしていることを保証することは、モダナイゼーションプロジェクトチームにとって不可欠といえます。そのため、新しいシステムが期待されたとおりに稼働し、レガシーシステム上に格納されていたデータが整合性を持って取り扱われているかを徹底的に確認します。テスト環境は本番環境をできるだけ再現するように設定し、テストデータは実際のデータの特性を反映したものを使用するようにしましょう。

モダナイゼーションの実際の事例を紹介!

モダナイゼーションを実施すると、コストが削減できたり、新しい技術を用いることでシステムの柔軟性や拡張性、可用性が向上するなど、多大な利点があります。ここでは、モダナイゼーションを通じてビジネスの効率化と成長を実現した実際の企業事例をいくつかご紹介します。

基幹EDIインフラをAS/400からAWSへ刷新

A社では、基幹EDIインフラとして動かしてきたAS/400が保守切れとなり、20年超運用してきたため、プログラムのブラックボックス化が進んでいました。また、開発・運用技術者の減少により、ITサービス品質低下の恐れがありました。そこで、エンタープライズ・データ連携プラットフォーム ACMS Apexとデータハンドリング プラットフォーム RACCOONを採用し、短期間でのAWSマイグレーションを決断、品質・コスト・納期を満たした上で、先進的な基幹EDIクラウドが完成しました。

EDIシステム刷新を契機にグループデータ連携基盤を実現

B社では、NTTのISDNサービスの終了に伴ってシステムが影響を受けるEDIの2024年問題に対応するため、次期EDI基盤を検討することになりました。また同社グループではメインフレーム上の基幹システムをオープンシステムのERPへ移行する取り組みも進めており、システム間のデータ移行やデータ連携問題もが浮上していました。同社は、グループ企業全体で利用できるデータ連携基盤をACMS Apex + RACCOONで構築することにし、その結果、データ移行処理の開発コストは1/3以下ですみ、データ変換処理の属人化も解消しました。

止まらない基幹システム構築のためデータ連携基盤を導入

C社では、データセンターの老朽化が進んでいました。そのため、稼働していたIT基盤にクラウドサービスを採用しながら移行することにしました。しかし、止まらない基幹システムを構築するためには、サービスを補完するデータ連携基盤が必要でした。そこで、ACMS Apexを導入してこれを実現。たとえクラウドの状態が不安定になっても、フェールオーバーしてすばやくリカバリできるようになり、担当者の精神的な安心感が高まりました。

まとめ

今回は、モダナイゼーションについていろいろな角度から考察しました。これは、単なる技術的な取り組みではありません。ビジネスの文化とマインドセットの変革をも意味しており、DXにもつながっていきます。デジタル時代に企業が競争力を維持し続けるためには、革新的で柔軟なアプローチを果敢に採用する必要があります。モダナイゼーションは、このような変革を実現するための手段といえます。

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この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

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経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。

  • 明石市役所

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