基幹システム製品のクラウド化で求められたデータ移行工程の見直し
RACCOONで精査が必要なデータを簡単かつ高品質に移す体制を確立
ガスは一般家庭で利用される二大エネルギーの一つである。すぐに頭に浮かぶのは都市ガスだが、これはその名前のとおり都市部を中心に普及しており、実は日本国土の5~6%程度しかカバーしていない。それ以外の地域で頼りにされているガスといえばLPガスで、約19,000社の事業者が需要家の生活を支えている。
株式会社 カナデンブレインは、このLPガス事業者向けにLPG統合情報ネットワークシステム「SuperX」を提供しているシステムインテグレータだ。1981年の設立以来、業容を拡大しつつ同社は一貫してLPガス事業者に寄り添いながら事業を進めてきた。
「SuperX」は2001年にバージョン1.0をリリースして以来バージョンアップを重ねており、現在「SuperX02」と呼ばれているこの製品の最大の特長は、LPガス事業者の販売管理・仕入、検針、保安、配送、顧客管理など業務全般をニーズに密着した形で統合的にサポートしていることにある。そのため高い業界シェアを誇っているが、これはどちらかというと中堅および大規模顧客を対象としているシステムだった。
そこで同社は、小規模事業者にも低い初期投資で販売管理システムの利点を享受してもらおうとクラウド版の開発を決断。これがクラウド型LPガス販売管理システム「みねるば」である。
「みねるば」のビジネスモデル構築にあたって、その成否のカギを握る重要な課題が一つ浮上した。 顧客が持つ既存データの移行だ。「SuperX02」でも行ってきた工程で、これまでは案件担当のSEがそれぞれ自身で開発したスクリプトツールを使用していた。
しかし、「みねるば」は低価格モデルで対象とする顧客層も一気に広がるため、そのたびにSEが関わっていたのでは利益を削ることになる上、そもそも手が回らない。代わりの担い手として考えたのは営業担当者だ。
ただ、小規模事業者の場合、既存データがExcelや紙で保管されている可能性があり、その内容は中・大規模事業者が持つデータよりも入念に精査してからシステム投入する必要がある。つまり、「みねるば」では、より難易度の高いデータをより簡単にデータ移行できる体制の確立が求められたのである。
この課題を解決するために、大きく3つの方向性を考えた。 1つめは「SuperX02」時代の習慣をそのまま踏襲すること、2つめは標準的なデータ移行ツールを自社開発すること、3つめは完成されたデータ移行ソリューションを導入することだ。
このとき、株式会社 カナデンブレイン 経営企画部 経営戦略チーム チームリーダー叶俊信氏の頭にはすでに頭に浮かぶ製品があった。それがデータ・アプリケーションのデータ ハンドリング プラットフォームRACCOONだ。最初の出会いは2016年の展示会。同氏は次のように振り返る。
「データ・アプリケーションのことは、電力自由化に伴って電力事業者が電力広域的運営推進機関へデータ連携を行うデータ交換ソリューションを提供していたベンダーということで名前を知っていました。そのベンダーが出しているデータ移行ツールということで興味を持ったのですが、移行元データがExcelベースでもよく、RACCOONで内容をチェックしながらデータベースへ登録できるというのが非常に印象的でした。
また、一度データの定義体を作成しておけば、その後カスタマイズを施しながら有効活用し続けられる点もいいなと思いました」
ただ、ひとまず有力な候補になったものの、社内では従来体制の踏襲や標準ツール自社開発を推す声もあったという。しかし、同社が最終的に選んだのはRACCOONだった。それはなぜだったのか。叶氏は次のように語る。
「バラバラのツールを使っていては、データ移行工程がどうしてもブラックボックス化してしまい、引き継ぎのたびに苦労します。
次に、たとえツールを一つに統一したとしても、自社開発してしまうとその後ずっとメンテナンスがついてまわります。しかし、データ移行は必要な工程ではあっても、『みねるば』の本質ではありません。クラウドシステムはサービスインしたらそれで終わりではなく、顧客の声を聞きながら継続的に磨きをかけていく必要があります。当社としてSEリソースはそこに最大限割くべきで、それ以外の部分については専業ベンダーに任せようという判断を下しました」
「みねるば」は当初の予定どおり2017年1月にサービスインを果たした。現状、顧客から利用申し込みが寄せられると、担当営業者は既存データを受け取り、一段階目のRACCOON変換で、項目長、数値書式、一意性等のチェックを行い不正なデータをExcelに出力する。担当者はこの結果を元に入力データの修正を行う。この精査と修正を繰り返し、不正データがなくなった時点で二段階目のRACCOON変換でクラウド上のデータベースへデータを登録する。「 みねるば」におけるこの製品の貢献を語るのは、株式会社カナデンブレイン 品質管理部 開発チーム鈴木徹氏だ。
「実は当初、ある営業担当者が元SEということもあって、自作のスクリプトツールでデータ移行を試みたんです。しかし、想像以上に難しいデータで、そのままではかなりの手間がかかりそうだった。そこでRACCOONに切り替えたところ、データチェック機能で出てきた不整合データの修正を行う事で比較的手短に移行を終えることができました。
また、これは当人も言っていたことですが、高いレベルでデータの品質チェックが行えるのがいいですね。目視ではデータの整合性を見抜くのは難しく、過去には本番移行してから不具合が見つかることもありました。それは極力避けたい事態で、社を挙げてさらなるシステム品質向上を掲げているさなかでもあるので、非常に助かっています」
さらに、データ移行期間も大幅に短縮している。「 SuperX02」のそれと比較すると1/2以下だ。システム規模が異なることは考慮しなければならないが、スムーズなデータ移行はビジネス上も歓迎するところであるという。
「クラウドシステムですから、手続きは簡単・迅速であることが理想です。最終的にはそこへ持ちこみたい。現在は実現できていないシステム区分の変換や、初期データの内容セット、データの特性ごとの分割移行等についても機能強化を進め、データ移行を営業担当者のみですばやく完結できるようになればと考えています」(叶氏)
そして、その先に見据えているのは、「SuperX02」への適用だ。RACCOONを社内統一ツールと位置づけることで、同社はデータ移行の透明性、正確性、迅速性のさらなる向上を狙っている。
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