日本最大級のeコマースプラットフォーム事業者「楽天」のFinTechサービス事業を牽引する楽天カード株式会社は、クレジットカード事業、カードローン事業、信用保証業務を展開している。同社は2005年に「楽天カード」の発行を開始し、2018年1月時点でカード会員数は1500万人を突破、2017年度通期のカードショッピング取扱高は国内クレジットカード会社として初となる6兆円を達成している。また、同社は「年会費永年無料」「ポイント高還元」を特長とし、2017年度日本版顧客満足度指数調査において、9年連続クレジットカード部門 第1位に輝いている。
同社では、前身の会社で採用した富士通メインフレームが基幹システムとして稼働していた。しかし、さすがに約25年が経過して、性能低下という問題に直面し始めた。背景には急激な会員増につれてデータ量も増大していること、新サービスを次々に投入してシステムが高度化・複雑化していたこともあるが、そこではバッチ処理量が膨らみ続けていた。業務に支障をきたすのを避けるため、人による運用でカバーするなどバックエンドの負担が増していた。2014年、同社はシステムの性能・可用性向上と中長期的な視点で顧客が安心して利用できるクレジットカードの取引環境の構築をめざして、基幹システム刷新を決断した。
検討の結果、新システムはJavaをプログラム言語とし、自社管理のデータセンター内にオープン系テクノロジーで構築、一部機能は、Oracleクラウド環境も利用するソリューションを選択することになった。
課題はデータ移行だった。メインフレームから文字コード変換を含めた移すデータが合計で約90TBにも上った。進めるべき業務が山積していたプロジェクトチームは堅実なパッケージソリューションを採用したいと考え、選定にあたって2つの要件を挙げた。1つは扱うデータファイルのサイズに上限がないこと、もう1つは導入実績が豊富であること。これらを満たして選ばれたのがDALのRACCOONだった。プロジェクトでデータ移行を統括した楽天カード株式会社 システム運用部 サービス運用グループ マネージャー森田訓章氏は理由を次のように語る。
「基幹システム上のデータファイルは大半が大容量で、これらが扱えないことには話になりませんでした。RACCOONはこの要件をクリアした唯一の候補製品で、またデータ変換ツールとして実績の高いAnyTranの後継製品なので安心して選べました」
2015年夏には、RACCOONがメインフレーム上の35,000種のCOBOL Copy句を自動で読み取り、これを9割以上の変換率でデータ変換を行うことが確認された。
しかし2016年夏、実際の移行を見据え、本番環境同等のテスト環境でRACCOONを使用し始めると、変換速度が気になり始めた。というのも今回、基幹システム刷新は3日間で完全移行することが予定されていたからだ。データ移行に与えられる時間は最初の1日、つまり24時間だった。この時間内にすべてのデータを移し切らなければならない。これを乗り越えるにはRACCOONのチューンナップしかないと、プロジェクトチームはDALの技術者をプロジェクトに呼び寄せた。そして、特定のデータファイルを指定、目標タイム内に変換を完了するよう求めた。
これに対しDALは、まずRACCOONが持つユーザ定義関数が外部呼び出しだったのを内部処理へと変更、また、データクレンジング機能や変換定義体自動作成機能の追加といった製品改善を行った。それだけでなく、基幹システムの入力データの出現形態(マルチレイアウト)に合わせたRACCOON設定やデータ処理単位なども提案。これらを短い期間で実施した結果、あるデータ変換では、16分36秒かかっていた変換速度は、目標タイム3分15秒を切ったのである。楽天カード株式会社 システム戦略部 プロジェクト推進グループ アシスタントマネージャー 細田剛志氏は、この時期を振り返って次のように語る。
「変換速度を上げるためには、とにかく何でもするぞという覚悟でした。データ移行は基幹システム移行のトップバッターで、これが終わらないことにはその先へ進めません。そのため納期・品質・性能を厳しく求めましたが、DALは真摯にかつ迅速に対応してくれ、大変助かりました。おかげで時間内に変換完了できる目途が立てられました」
その後、プロジェクトチームはテスト環境で繰り返し移行リハーサルを実施。それと同時に現行システムと新システムとの間でプログラム実行結果を比較、問題点を洗い出しながら新システムの完成度を高めていった。
いよいよ迎えた基幹システム刷新当日の2017年4月22日。データ移行は、Oracle APサーバ上のRACCOONが200セッション同時実行という高い多重度で富士通メインフレームからデータを読み出し、文字コード変換していく作業で始まった。データ量が膨大であるため、ここではその受け皿としてOracleのパブリッククラウド環境も活用された。結果として、目標の24時間よりさらに短い16時間で最大サイズ約2TBのデータを含む数TBのメインフレームデータの移行を完了。システム刷新は流れるように後続作業へと移り、3日間で基幹システムの完全移行を成し遂げるという一大プロジェクトはみごと完了した。
その後、約600名の同社情報システム部門スタッフが総員を挙げて万一の事態に備えたが、新システムは拍子抜けするほど安定稼働を続けた。
トランザクションデータは業務の特性上、間違えることが許されないミッションクリティカルなシステムであり、同社の経営層は今回の基幹システム刷新成功を喜び、今なお「よく成功させた」と言及するという。
このシステムは2017年、公益社団法人 企業情報化協会において、「クレジットカード業務における基幹システムの短期高品質でのオープンシステム化」が高く評価され、ITマネジメント賞を受賞している。
楽天カードのさらなる成長を可能にした新基幹システム実現の陰には、データ ハンドリング プラットフォーム RACCOONのひそかな活躍があった。
メインフレームからオープン環境への国民健康保険システム移行
PC1台で数千万件のデータ変換を13時間で可能としたRACCOON
公共・自治体向けパッケージで生じるデータ移行プロセス
RACCOON採用で属人化を解消、生産性と利益率が向上
EDIシステムの刷新をきっかけに
ACMS Apex + RACCOONで、グループ全体のデータ連携基盤を実現
基幹システム製品のクラウド化で求められたデータ移行工程の見直し
RACCOONで精査が必要なデータを簡単かつ高品質に移す体制を確立
回線環境の変化を好機と捉え、EDI基盤を刷新
ACMS Apex & RACCOONでDXも推進
めざしたのは4通販サイトへのデータ提供の自動化
RACCOON導入で情報の精度・スピードが一気に向上
基幹EDIインフラをAS/400からAWSへ
ACMS Apex、RACCOONが短期開発に貢献