データ活用・データ連携のお役立ちコラム
データ活用・データ連携のお役立ちコラム
ICTが高度に進歩した今日、企業はERP(Enterprise Resource Planning)やEDI(Electronic Data Interchange)、CRM(Customer Relationship Management)といったさまざまなシステムを導入しています。一方で、多くの企業はそうしたシステムから必要な情報を迅速に取得できる状況にはありません。業務・部門ごとに開発したシステムがほとんどであり、各システム上にデータが分散したままとなっているからです。このような課題を解決するために、EAI(Enterprise Application Integration:企業アプリケーション統合)ツールを導入する企業が多くなっています。そこで、このコラムではEAIとはそもそもどのようなものなのかといったところから、EAIツールの機能や導入メリットを解説します。
EAIとは、複数の異なるシステムを連携させることで、各々のデータやプロセスの統合を目指す概念です。
EAIを手組みで実現するには、データを連携するためにインターフェースやプログラムを個別に開発する必要があります。また、各システムに改修やバージョンアップが発生した場合には、インターフェースやプログラムも改修しなければなりません。そのため、これまではEAIを実現するには多大な工数とコストが発生していました。
しかし、データやプロセスの統合に必要な機能を搭載しているEAIツールの登場によって、こうした状況は変わりつつあります。
EAIツールは、一般的に異なるシステムを連携させるミドルウェアとして提供されています。その主な機能は、次の通りです。
連携したシステムの中心となるサーバ(いわゆるハブ)と各システム間とのデータ授受を実現するための機能です。従来のように、インターフェースやプログラムを個別に開発する必要はありません。
各システムから受け取ったデータを変換する機能です。ERPやEDI、CRMといった異なる形式やプロトコルのデータ同士を連携することができます。
受け取ったデータの内容に合わせて、配信先と配信順序を自動的に決定する機能です。
上記3つの機能を組み合わせて、目的とするデータ処理を実行するための制御を行う機能です。多くのツールでは、プログラムをコーディングすることなく、GUIを使って簡単にプロセスを定義付けすることができます。
前述のような機能を持つEAIツールの導入には、次のような3つのメリットがあります。
前述の通り、EAIツールを活用すればインターフェースやプログラムを個別に開発する必要がありません。そして、EAIツールの多くには直感的に操作できるGUIが搭載されています。そのため、データ連携に必要な作業を効率化でき、運用開始までの工数を大幅に削減することが可能です。
連携するシステムに改修やバージョンアップが発生した場合にも、ユーザ自身がプログラムをコーディングし直す必要がありません。GUIを使った直感的な操作で必要な変更を加えることができるため、迅速に対応することができます。
データ入力やプログラム開発において、手作業が多くなればなるほどヒューマンエラーの発生する可能性は高まります。EAIツールを導入すれば、システムの統合に必要な作業の多くを自動化することができます。そのため、ヒューマンエラーによるデータの誤変換・喪失などを防ぐことが可能です。
データ連携やシステム統合を実現できるものとしては、EAIツール以外にもETL(Extract・Transform・Load)ツールやESB(Enterprise Service Bus)ツールが存在します。では、この2つのツールとEAIツールとの間にはどのような違いがあるのでしょうか?
ETLツールは、データを抽出・変換・書き出すことによって、データを集約・統合することを目的としています。その用途も、高度なデータ分析やデータマイニングが主であり、バッチ処理的な使い方が基本です。
一方で、EAIツールはデータを単一のデータウェアハウスやデータマートに集約するのではなく、CRMやERPなどを使った業務システムやメインフレームシステム、Webシステムといったシステムの違いを吸収し、アプリケーションを統合してデータをやり取りすることを目的としています。
このように、ETLツールはバッチ処理を基本としたデータ集約を実現するツールで、EAIツールはアプリケーション統合によるリアルタイム処理を実現するツールという違いがあります。
ESBは、SOA(Service Oriented Architecture:サービス指向アーキテクチャ)に基づいたアプリケーション統合を目指す考え方です。ESBでは、各システムのビジネスプロセスをサービスという単位に細分化したうえで、サービスどうしを組み合わせることで新たなアプリケーションを構築します。
サービスどうしを組み合わせるESBツールは、一般的にバスを介してサービスにアクセスするというバス型の分散処理による疎結合を採用しています。この点が、ハブ&スポーク型の集中処理を採用しているEAIツールとは異なります。
このように、EAIツールとETLツール、ESBツールとの間には用途や機能に違いがあります。そのため、目的に従って必要なツールを選択することが重要といえるでしょう。
また、EAIツールひとつをとっても、今日では機能や特長の異なるさまざまなものが提供されています。そこで、最後にEAIツールを選定する際のポイントをご紹介します。
EAIツールの選定においては、次の4つのポイントから比較検討しましょう。
運用開始までの作業や運用開始後のシステム改修やバージョンアップへの対応を迅速に進めるには、データ連携とデータ処理を可視化できる仕組みが必要です。
セキュリティ標準に対応したデータの暗号化や、ファイル転送時に無駄なファイルコピーを残さない仕組みが求められます。
EAIツールは、多岐に渡るシステムのデータを扱います。そのため、24時間365日稼働できる高可用性と、ハードウェア障害とソフトウェア障害に対する耐障害性を兼ね備えていることも重要な選定条件となります。
企業システムにはオンプレミスで稼働している多くのソフトウェアがあります。クラウド型のEAIツールを利用する場合は、これらとの連携に問題はないかをチェックすることが必要です。
このような4つのポイントを参考に、自社にとって最適なEAIツールを選定しましょう。