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ERPとは?導入のメリットやプロセス、形態の種類について解説

最終更新日:2024/09/05 ERPとは?導入のメリットやプロセス、形態の種類について解説

企業の効率化と経営の最適化を図る上で、ERP(Enterprise Resource Planning)システムの導入は今や企業にとって不可欠な戦略となっています。ERPは、企業の財務、人事、製造、供給チェーン管理など、様々な業務プロセスを統合し、情報の一元化を実現します。これにより、企業は意思決定の迅速化と透明性の向上が得られます。本記事では、ERPがどのように企業運営を変革し、これによってどのようなメリットが得られるのか、また導入プロセスや異なる形態のERPシステムについて詳しく解説していきます。ERPを活用することで、企業は市場の変動に迅速に対応し、競争優位性を確立することが可能となるとともに、リアルタイムでのデータ分析により、より精度の高いビジネスインテリジェンスを実現することが可能になります。

INDEX

  1. ERPとは?
  2. ERPの特徴
  3. ERPと基幹システムの違い
  4. ERPを導入するメリットとは?
  5. ERPのデメリット
  6. ERPの導入の流れ
  7. ERPの導入形態
  8. ERPを選ぶ際のポイント
  9. まとめ

ERPとは?

ERPとは、そもそもは経営の効率化を図るために企業全体を統合的に管理しようという概念のことをいいます。正式名称はEnterprise Resources Planningといい、企業資源計画と訳されることもあります。しかし、現在は、この概念に基づいて開発されたソフトウェアのことを指して、そのままERPあるいはERPパッケージと呼ぶのが一般的です。

ERPの特徴

大きな特徴は、現金、原材料、生産能力といった、企業が所有する経営資源を有効活用すべくソフトウェアが設計されていることです。具体的には、1つの大きなアーキテクチャ体系の中に複数のシステムが統合されて存在します。たとえば、会計管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、購買管理システム、生産管理システム、人事給与管理システムなどがその例です。このように、さまざまな基幹業務の管理機能を持つシステムをベンダー1社が包括的に提供しますから、システム間でのデータ連携もスムーズに行えます。ただし、その業務のカバー範囲はベンダーによって微妙に異なります。たいてい、導入の際に企業はERPパッケージベンダーを1社に絞りこみますが、よりフィットした製品・サービスを利用したいと、ときに業務ごとに違うベンダーを選択する場合もあります。

ERPと基幹システムの違い

ERPと関連性の高い用語として基幹システムというものがあります。ともに企業運営を担うシステムという点では同じですが、ERPと基幹システムには違いもあります。具体的にどのようなところが異なるのでしょうか。

基幹システムとは

基幹システムは、企業活動を進める上で不可欠かつ重要な業務システムの総称です。基幹システムが停止すると、企業は文字どおり何もできなくなるため、最優先で稼働がまもられるべきシステムといえます。ただ、企業の業種業態によって基幹システムという用語でカバーされる範囲は微妙に異なります。財務会計システムや人事管理システムのように、どの企業にも普遍的に存在するものもあれば、特定の業種業態においてのみ基幹システムとみなされるものもあります。たとえば、製造業界における生産管理システム、小売業界のEDI(電子商取引)システム、保険業界における契約管理システムなどがそれに当たります。

基幹システムとは? ERPとの違いやメリットや導入方法、ポイントを解説

ERPの登場

この基幹システムを情報の一元化をめざす仕組みとして登場したのがERPです。ERPを導入する目的は、複数の基幹業務間で最初から一つのデータベースを共有、経営の戦略や戦術を立案するのに必要な情報を提供することです。たとえば、販売管理システムからリアルタイムに受注状況を取得すれば、その良し悪しによって生産管理システムで生産量を柔軟に調整することができます。受注状況をうまく知ることができなければ、工場はよかれと思って最大限の生産能力を発揮してしまい、かえって不良在庫を増やしてしまうかもしれません。このように業務部門間で連動できるようにして、企業パフォーマンスの最適化につなげていくことが可能になるため、近年多くの企業が導入へと舵を切っています。

ERPとSAPの違い

ERPに関連した話の中に、SAPという用語がよく登場しますが、SAPというのはベンダー名であり、製品/サービス名です。ERPという概念を世界的に広めたドイツのSAP社が提供しているERPパッケージ、それがSAPというわけです。その意味で、SAPはERPの一種といえます。ちなみに、SAPはエス・エー・ピーと読み、現在主軸の製品/サービスはSAP S/4HANAです。

ERPを導入するメリットとは?

多くの企業が導入をめざすERPですが、それはやはりそこに多くのメリットがあるからです。ここでは、ERPを導入するメリットの中で主なものを列挙してみました。

情報の一元化が可能になる

ERPでは、複数業務の間でデータベースを共有します。そのため、情報の一元化を図ることができます。別途システム間連携を考える必要はありません。そのデータベースの情報を源として、企業全体の観点で今の状況を正確かつ迅速に把握できることで、有効な経営戦略や戦術を立案することができます。

業務の標準化・効率化が図れる

ERPには、世界優良企業のベストプラクティスが、その業務処理設計に採用されています。長く企業活動を営めば、その企業ならではの商習慣や社風が生じます。それが業務上、他社にない強みとなることもありますが、どこかにムダ・ムリ・ムラが生じて、知らぬ間にビジネスの足枷となることもあります。その点、ERPには多くの企業から学んだすぐれた管理手法が用いられているため、その製品・サービスに業務を合わせることで、自ずと標準化・効率化が図れます。

法律や制度変更への迅速な対応が可能になる

基幹システムを自社で構築する場合、それぞれの業務に関係した制度や法律が変更になるたびに、自ら改修しなければなりません。これは時間もコストがかかる作業で、企業にとって負担の大きいものです。しかし、パッケージを導入すれば、こうした変更対応はベンダーが担ってくれるため、企業は利用に専念することができます。

経営情報の可視化や意思決定の迅速化が実現する

ERPのデータベース内に格納されている数々のデータは、統計やレポートという形で可視化され、経営層にも提供されます。その時点での最新の業務データにアクセス可能になることで、経営層には自社のビジネスが今どういう状況にあるかが容易に把握でき、次に取るべきアクションを迅速に判断することができます。進めているプロジェクトを加速させる、あるいは方向転換を図るなどといった重大な意思決定が、データという裏付けを持ってスピーディーに行えるようになります。

ERPのデメリット

一方で、ERPを導入することのデメリットというものも存在します。導入をめざす上では、こうしたマイナスの要素も事前によく認識しておく必要があります。

システム選定が難しい

ERPの選定は、多くの企業にとって難題です。市場には多種多様なERP製品/サービスが存在し、それぞれ異なる機能、特性、価格帯を持っています。最良の選択を行うためには、企業の現状と将来のビジネス目標をよく考え、それに最も合致するものを見極める必要があります。それでも、その企業に100%ぴったり合うということはまれです。フィット&ギャップをよく考え、製品/サービスに業務を合わせるのか、カスタマイズを施してでも業務に製品/サービスを合わせるのかといった判断も求められます。このプロセスは大量の時間とリソースを消費します。

導入・保守費用が高額

ERPの導入および保守には、高額なコストがかかることが一般的です。初期投資だけでなく、もし必要ならシステムのカスタマイズ費用も考えなければならず、導入後もユーザーサポートやアップデートに継続的な費用を覚悟しなければなりません。これらのコストは、中小企業にとっては大きな負担となり得るため、導入前に十分なコスト分析と投資収益率の評価を行うことが不可欠です。

活用のために全社的な教育が必要

ERPを効果的に活用するためには、従業員全員がシステムの操作方法を理解し、日常業務に適用できるようになる必要があります。非常に高機能なITであるため、一朝一夕に使いこなすのは難しく、全社的な教育とトレーニングの時間を考慮しなければなりません。このプロセスは、企業にとって時間とコストの両面でそれなりの負荷がかかります。また、従業員の間で心理的な抵抗が生まれるリスクもあり、変化対応を促す全組織的な取り組みも求められます。

ERPの導入の流れ

ERP導入に成功するためには、一定のプロセスに従ってプロジェクトを進める必要があります。ここには主要なプロセスを挙げてみました。

システムの導入目的を明らかにする

まずは、何のためにERPを導入するのか、組織レベルでベクトルを合わせます。ここが明確かつ幅広く共有されていないと、プロジェクトが迷走するもとになります。

プロジェクト体制を整える

情報システム部員に加えて、ユーザー部門を幅広く巻きこみ、組織横断的なプロジェクトチームづくりが理想です。また経営の観点から意思決定できる企業幹部の関与も重要です。

要件定義を行う

現状業務のヒヤリングを行い、どういう点が現状の課題なのかを洗い出します。その上で、どのようにERPによって業務改革を行えるか方向性を探っていきます。

導入する製品/サービスを選定する

幅広く情報収集を行い、自らの組織で求める機能要件、非機能条件を挙げて比較検討します。選定のめどが立ったら、より詳細なレベルでフィット&ギャップ分析を進めます。

導入計画を立てる

プロジェクトのQ(Quality,品質)、C(Costコスト)、D(Delivery納期)に関して見積りを立てます。自社で持てるリソースを考えながら、無理のない計画を立てるのが重要です。

必要であれば設計・開発を行う

重要なビジネス習慣がERPの標準機能では間に合わない、というときにはカスタマイズ開発を行うことになります。

テストを行う

事前に作成したテストシナリオを利用したり、旧システムとの結果比較などによって、システムが正しく動作するかどうかを確認します。往々にしてプロジェクトが計画より遅れ、このプロセスに無理がかかりがちですが、本番システムの安全を考え、端折らないようにしましょう。

ユーザートレーニングを行う

新システムが完成したら、研修機会を設けたり、わかりやすいマニュアルを準備するなどして、エンドユーザーがスムーズに移行できるよう施策を講じます。

運用保守を行う

本番稼働後は、運用保守フェーズに入ります。このプロセスでは、微細なシステム修正やユーザーフォロー、新たな要望に対応した機能追加などを行っていきます。

ERPの導入形態

一口にERPといいますが、実はそこには複数の利用形態・導入形態が存在します。自社に最も合ったものを選択するために、その違いをよく理解しておくことは重要です。

クラウド型ERP・オンプレミス型ERP

利用形態としての分類として、クラウド型ERPとオンプレミス型ERPがあります。

クラウド型ERPとは、インターネットを介して提供され、サービスとしてのソフトウェア(SaaS)モデルに基づいています。最大の特徴は、企業にとってインフラストラクチャへの投資が不要であり、メンテナンスやアップデートが提供事業者によって行われるため、企業はITリソースを他の重要な業務に集中させることができます。

一方、オンプレミス型ERPは、企業の内部サーバーに直接インストールされるシステムで、企業が全ての管理とメンテナンスを自ら行う必要があります。そのため、ハードウェアの購入とメンテナンス、ソフトウェアのアップデート、セキュリティ対策など、継続的な投資と専門知識が求められますが、データの管理とセキュリティを完全にコントロール下に置けるという利点があります。

クラウド型ERPとオンプレミス型ERPの主な違いは、クラウド型は初期投資が少なく、管理が簡単であるのに対して、オンプレミス型はカスタマイズしやすく、セキュリティ面でのコントロールが強いという特徴があります。

ERPパッケージ・フルスクラッチ型ERP

開発形態としての分類として、ERPパッケージとフルスクラッチ型ERPがあります。

ERPパッケージは、会計、人事、生産管理などの機能を一つのソフトウェアパッケージにまとめたものです。これに対して、フルスクラッチ型ERPは、企業の独自の要件に合わせてゼロから開発されるシステムで、企業特有の業務プロセスやルールに完全に対応するよう設計されます。

ERPパッケージは、市場で既に確立された製品を使用するため、導入が比較的迅速で、初期コストが低く抑えられる傾向にあります。また、標準化された業務プロセスを採用することで、業界のベストプラクティスを取り入れやすい利点もあります。

一方で、フルスクラッチ型ERPは、企業の詳細な要件に基づいて一からシステムを構築するため、導入までの時間とコストがかかりますが、企業の運用に最適化されたシステムを実現できます。

統合型ERP・コンポーネント型ERP

統合型ERPは、企業の基幹業務を一元管理するための包括的な製品/サービスです。これにより、財務、人事、生産管理など、企業のあらゆる業務データが一つのデータベースで管理され、部門間の情報の不整合を防ぎながら、迅速かつ効率的な意思決定を支援します。これに対して、コンポーネント型ERPは、企業が必要とする特定の機能のみを組み合わせて使用することができます。

統合型ERPを利用すれば、経営資源の最適化と全社的なデータの一元化が図れますが、包括性が高いために、導入やカスタマイズにはそれ相応の時間とコストがかかります。一方、コンポーネント型ERPは、特定の業務に焦点を当て、必要な機能のみを提供するため、導入が比較的容易で、コストも抑えられる傾向にあります。そのかわり、得られる効果は限定的というデメリットもあります。

ERPを選ぶ際のポイント

ERPの導入は企業として大きなプロジェクトになります。選択を誤ると被る損失も大きいため、事前に十分調査して、自社に最も適した製品/サービスをかしこく選び取る必要があります。

①費用対効果は十分か

投資に見合った価値が得られるかどうかは、ERPの選定において最も重要なポイントです。費用対効果を評価するとき、初期導入コストだけでなく、研修教育コスト、運用コストや将来的なアップグレード費用も含めた包括的なコストを考慮しましょう。また、システムの機能を活用することによる業務効率化効果を定量的に評価するとともに、従業員満足や企業ブランド価値の向上など定性的効果についても検討します。

②機能が十分備わっているか

ERPが提供する機能が企業のニーズに合致しているかという点についても考えておきましょう。必要な機能がすべて含まれているか、またそれらが従業員にとって使い勝手もよいものかどうかといった点を重点的に検討してください。機能が多ければ良いというわけではありません。重要なのは、自社にとって必要な機能が適切に組み込まれているかどうかです。不必要な機能が多すぎるとかえって操作性が悪くなり、従業員の混乱を招きます。

③自社の業務に適した基本機能があるか

ERPの提供する基本機能が、自社の業務に適しているかを確認することも怠ることはできません。業種によって必要とされる機能は異なるため、自社の業務プロセスに合わせてカスタマイズ可能な製品/サービスを選ぶことです。ただし、カスタマイズを施しすぎると、保守やバージョンアップが難しくなる場合もあり、その点は注意が必要です。また、将来的な事業拡大や業務の変化に柔軟に対応できるかどうかも、長期的な視点で評価するべきポイントです。

④カスタマイズの自由度

カスタマイズの自由度もよく見ておきたいポイントです。企業にはそれぞれ独自の商習慣が存在します。それが市場において競争優位性を保つカギである場合、それらに合わせてシステムを調整できるかどうかは、企業経営の今後を大きく左右します。カスタマイズが容易なシステムは、企業のその後の成長や変化にも柔軟に対応しやすいため、長期的な視点で見るとコストパフォーマンスに優れているといえます。

⑤セキュリティの万全さ

企業を狙ったサイバー攻撃や社内不正リスクを否定できない現在、セキュリティの万全さというのもERP選定ポイントとして見逃すことはできません。企業の貴重なデータを守るためには、高度なセキュリティ機能が組み込まれたERPを選ぶ必要があります。特に、強固なデータ保護機能と定期的なセキュリティ更新機能については、事前によく確認しておいてください。

⑥自社と近い業種や規模での導入実績

自社と近い業種や規模での導入実績の有無は、ERPが自社のニーズに適合するかどうかを判断する上でよい参考資料となります。同業他社は類似の業務プロセスや課題を有している可能性が高く、当該ERPを利用しているということは、そうした業務プロセスがシステム化できたり、課題を解決できたことを意味しているからです。ただ、たまたま同業他社での事例がないだけという場合もあり、その点については留意しておく必要があります。

⑦サポート体制は十分か

サポート体制が充実しているかどうかは、ERPを選ぶ際に欠かせない要素です。導入後のトラブルや疑問に、ベンダーが迅速かつ的確に対応可能であることは、システムを使い続ける上で非常に重要です。そうでなければ業務の中断を余儀なくされる場合も生じるからです。導入前に、検討しているERPベンダーが長期的なパートナーシップを築くのに足る存在であることをよく見極めてください。

まとめ

ここまで、ERPの概要と導入のメリット/デメリット、導入の流れ、製品/サービスを選定するポイントを見てきました。ERPの導入は、企業にとって大きなターニングポイントになります。後悔しないよう自社に最適なものを選び、企業のさらなる成長と発展につなげていきましょう。

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この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

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経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。


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