データ活用・データ連携のお役立ちコラム
データ活用・データ連携のお役立ちコラム
デジタル庁が、地方公共団体で利用される基幹業務のシステム統一・標準化を進めています。そこで重要視されている項目の一つに文字要件があり、そのために考案されたのが行政事務標準文字です。ここでは行政事務標準文字の概要、これがMJ+と呼ばれる理由、導入にあたって考えられる課題を見ていきます。
現在、デジタル庁では、地方公共団体における住民サービスの向上と業務全体にかかるコスト抑制、システムベンダー間での容易な移行を実現するため、基幹業務などシステムの統一・標準化を進めています。ここでいう基幹業務とは、住民基本台帳、戸籍、戸籍の附票、固定資産税、個人住民税、法人住民税、軽自動車税、印鑑登録、選挙人名簿管理、子ども・子育て支援、就学、児童手当、児童扶養手当、国民健康保険、国民年金、障害者福祉、後期高齢者医療、介護保険、生活保護、健康管理の20業務を指します。
システムの統一・標準化を実現するには、データ要件・連携要件を標準化することも重要で、その中の欠かせない要件の一つに文字要件があります。これまで特殊な文字は主に外字で対応してきましたが、これには作成コスト、維持コスト、システムベンダーロックインなどさまざまな課題があります。そこで考案されたのが行政事務標準文字です。これは、文字情報基盤という、主に行政で使用される人名漢字を含む漢字セットに、デジタル庁が指定した基幹業務システムの運用上必要な文字を加えた拡張文字セットです。デジタル庁では、行政事務標準文字の定義を、「文字情報基盤の文字セットに、基幹業務システムのその他の文字セットの文字のうち、文字情報基盤の文字セットに同定できない文字であって標準準拠システムの運用上必要な文字としてデジタ ル庁が指定した文字を加えた文字セット」と規定しています。
行政事務標準文字は、別名 MJ+と呼ばれています。文字情報基盤がMJであるため、それを拡張したものという意味で+マークが付されています。
MJは、戸籍統一文字や住民基本台帳ネットワーク統一文字 約6万字を網羅しており、すべての国民の氏名をコンピュータで扱うことを目的として2011年に策定されました。これにより、フォントの作成や文字情報技術が促進し、行政機関の業務での利用が可能となりました。また、外字作成や管理コストの削減、システム間の相互運用性の確保が実現しています。
一方、MJ+にはMJでカバーできなかった文字 約1万文字が追加されています。これにより、戸籍システムなどで使用される文字の範囲が拡大し、より多くの個人名や地名などを正確に扱うことができるようになりました。MJ+にはまた、たとえばUnicodeの拡張領域にある私的領域にコードポイントが割り当てられた文字も含まれており、これにより従来の外字を使用せずに済むようになっています。
行政事務標準文字は約7万字あります。その内訳を見ると、文字情報基盤文字が約60,000字、行政事務標準文字追加分が約 9,000字、平仮名・片仮名・英数字などが約1,000字となっています。
このように文字数が非常に多いため、単一のフォントファイルでは実装できません。フォントファイルに収録できる文字数の上限は、フォントのフォーマットによって異なりますが、多くのフォントを格納できることで知られるOpenTypeフォーマットでも、最大約65,000字までです。特に、地方公共団体で利用されるシステムには、国際標準化されていない文字など特殊な文字を含む場合があり、このことを考えてもすべてを一つのフォントファイルに統合することは困難です。そのため、実際の運用場面では、基本的な文字セットを提供する基本フォントファイルと、特定の用途や要件に応じて追加されるフォントファイルを分けて管理し、必要に応じて組み合わせて使用することになります。
行政事務標準文字の文字要件に関する最終的な確定日はまだ公表されていません。しかし、デジタル庁は関連する検討会を定期的に開催しており、その過程で進捗状況を更新しています。最近の検討会では、文字要件の改定、実証事業などについて議論されました。
文字要件は確定していませんが、デジタル庁は行政事務標準文字のうち、文字情報基盤文字中の使用が見込まれない文字(推定20,000字)を除いた形で基本フォントファイルとし、デジタル庁で整備することを発表しています。一方、除かれた文字は予備文字ファイルになります。あらためて整理すると、基本フォントファイルは、文字情報基盤文字のうち基礎となる文字と、標準準拠システムにおいて使用が見込まれる文字、行政事務標準文字追加文字を足したものです。予備文字ファイルは、文字情報基盤文字のうち標準化対象事務システムにおいて使用が見込まれない文字ということになります。このうち、基本フォントファイルについては令和6年度上半期を目途に提供される予定です。
現在進行中の取り組みであるために、行政事務標準文字を導入しようとすると、そこにはまだまだ課題があります。ここでは、主な課題をピックアップしてみました。
多くの既存システムは、新しい標準文字に対応していないため、これらを更新または置き換える必要があります。しかし、これには膨大な時間とコストがかかり、特に大規模なシステムでは、移行プロセスが複雑になる可能性があります。また、システム間でのデータ交換を行う際にも、互換性の問題が発生することが予想されます。
行政事務標準文字への移行は、多大なコストが発生する重要な課題です。このプロセスには、既存のシステムのアップグレードや置換、新しいフォントファイルの開発と導入、従業員の研修といった直接的な費用が含まれます。さらに、移行期間中の二重管理や、互換性の問題に対処するための技術的なサポートにも費用がかかります。これらのコストは、特に大規模な組織や、長年にわたって蓄積されたデータが多い場合には、さらに増大する可能性があります。
行政事務標準文字の導入に際しては、経過措置が設けられています。これは、一時的に既存の文字情報基盤と新しい標準文字、経過措置の仕組みが混在することになり、業務の現場で混乱を招く可能性があります。
行政事務標準文字の導入による文書フォーマットの変更は、外部との文書交換において複数の課題を引き起こす可能性があります。これにより、文書の読み取りや編集が困難になり、情報の正確な伝達が妨げられる恐れがあります。また、新しいフォーマットへの適応には時間がかかり、その間に文書の交換が滞ることも予想されます。
現行のシステムでは、一つのファイル内で完結することが一般的ですが、新しい標準を採用すると、アプリケーションは基本フォントファイルと予備文字ファイルの二つを管理しなければならなくなります。また、開発者は新たなフォント管理機能の実装に追加の労力を要することになり、これがシステム更新の障壁となることも考えられます。
基本フォントファイルと予備文字ファイルは、文書作成やデータ処理において重要な役割を果たしますが、提供時期の全容やその管理、更新、利用方法についてのガイドラインがまだ不足しています。そのため、企業側では今後の開発見通しを立てにくくなっています。特に、新しいフォントファイルへの移行期間中は、旧来のフォントと新しいフォントの両方を扱う必要があり、その過程での整合性の保持が課題となります。
新しい行政事務標準文字の導入は、エンドユーザーにとっても大きな変化を意味します。慣れ親しんだ文字セットからの移行は、初期段階では混乱を招く可能性があります。そのため、ユーザーが新しいシステムに適応するためには、十分な時間とサポートが不可欠になります。適応期間中は、教育プログラムやヘルプデスクの設置など、ユーザーが新しい文字セットを効率的かつ正確に使用できるように支援する体制を整えることが求められます。
行政事務標準文字は地方公共団体の基幹業務システムに関わる文字ということもあり、法的な規制や制限の遵守が発生することがあります。新しいシステムが既存の法律や規則に適合していることを保証するためには、適切な法的審査が必要となります。これには、関連する法令の精査、必要に応じた法改正の提案、そして新システムへの移行を支援するためのガイドラインの策定が含まれます。また、すべての関係者が新しい規制を理解し、適切に対応できるように、教育プログラムや研修の実施も考慮する必要があります。
高品質なフォントファイルの確保も重要な課題な一つです。正確な表示は、情報の明瞭性とアクセシビリティを保証し、ユーザーが情報を適切に理解し利用するために不可欠です。フォントの品質の確保は、行政事務の効率化と市民サービスの質の向上に直結するため、十分な投資とリソースの配分が求められます。また、将来的な技術の進展に対応できるよう、拡張性と互換性を考慮したフォント開発が必要となります。
行政事務標準文字の導入に伴い、特定の業務プロセスの変更が必要となる場合があります。そうした業務プロセスとして、文書管理、データ入力、外部との連携などさまざまなケースが考えられます。スムーズに移行するには、効率的かつ正確な業務遂行を保証するための業務手順の再設計を必要とします。この過程では、従業員の理解と協力も不可欠です。
データ・アプリケーションでは、データ連携や移行時のデータ加工・変換をノーコードで実現するデータ ハンドリング プラットフォーム RACCOONを提供しています。その最新版バージョン2.6.1では、文字コード変換において、デジタル庁が指定した文字セット 行政事務標準文字の使用領域(Unicodeの私用面 15/16面)をサポートしました。これにより、標準準拠システムと外部システムのデータ連携、移行を強力に後押しします。具体的に、行政事務標準文字を使用する場合、外部システムの基幹業務システムなど行政事務標準文字に対応していないシステムと標準準拠システムのデータ連携で文字コード変換が必要になります。ここにRACCOONを適用することで、システム開発を行うことなくSJIS漢字、メーカ漢字など従来の文字と、行政事務標準文字との双方向のスムーズな文字コード変換が可能になります。
RACCOONは、バージョン2.4.0以降、既存システムと標準準拠システム間のデータ連携/データ移行を支援してきましたが、今回の行政事務標準文字の使用領域サポートにより、地方公共団体のデジタル化施策である自治体システム標準化をより一層応援していきます。
ここまで、行政事務標準文字の概要とこれがMJ+と呼ばれる理由、現状考えられる課題と導入をサポートするツールについて見てきました。行政事務標準文字の導入は大きなデジタル変革といえ、対応する側としてはどうしても構える気持ちになります。しかし、最終的なゴールであるシステム統一・標準化の先には、地方公共団体においても、地方公共団体とビジネスを行う企業にとっても多大な業務効率向上が期待できます。最適なツールの選択で、この変化の局面を軽やかに乗り越えましょう。
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