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企業の経営においてSaaSの活用が当たり前になりつつあるいま、そうしたサービスの価値を最大化させるために、データ・インテグレーションはどうあるべきなのか。過去、データ連携基盤ACMS Apexの開発に長らく携わった桐山が語る。

Profile

桐山 健

株式会社データ・アプリケーション
NP開発室

2002年、データ・アプリケーションに新卒入社。EDIサーバであるACMS B2Bの開発およびサポート業務に携わった後、データ連携基盤であるACMS Apexの新規開発プロジェクトに参加。2022年4月より、新規事業開発を担うNP開発室に所属し、新サービス立ち上げのための調査や検討、開発作業に従事している。

※所属、掲載内容は取材当時のものです

Theme 01

データ・インテグレーションツールによる自動化がますます活発に

いまや企業がビジネスを営む上で“データ・インテグレーション”は必然になりつつあります。その理由としては、日本でもSaaSが急速に普及しており、スイート型(オールインワン)のサービスよりも、必要なものを組み合わせるベストオブブリード型への志向が強まっていることが挙げられます。海外のエンタープライズ企業では、200を超えるSaaSを利用している例もあります。日本においても、私が知る企業では、100名に満たない組織で150ものSaaSを導入してビジネスを回しています。今後、この流れはいっそう加速していくと思われます。

ベストオブブリード型は、自社に適したサービスを選択しやすく、かつ企業環境の変化に合わせて別のサービスへ切り替えられるメリットがある一方、他のサービスとのデータ統合は自社で行う必要があります。各サービスにあるデータは、そこにあるだけでは宝の持ち腐れです。データを集めて整理・分析し、活用することで初めて有意な価値を生み出す情報になります。しかし、企業が利用する多数のSaaSから、膨大なデータの統合を人手で実施するのは現実的ではありません。そこで、データ・インテグレーションツールを用いて自動化を図る動きが活発化しているのです。そのツールとしては、グローバルなSaaSを利用している企業はAWS GlueやTalendなどのメジャーなETLツールを主軸にして、データ統合を実現できるかもしれません。しかし日本では、日本の商習慣に適した日本製SaaSを選んでいる企業も多く、特に今後Vertical SaaSが台頭してくることを考えると、海外製のデータ・インテグレーションツールでは対応できず、より汎用性をもって柔軟にデータ連携できるツールが求められていくでしょう。

Theme 02

求められているのは、汎用性の高いデータ・インテグレーションツール

どのようにSaaSを活用し、どのように統合してデータを活きたものにしていくか、その思想や手法は企業によって異なります。時間の経過とともに、企業が必要とする情報も変化します。必要なデータ統合を素早く行うためには、ローコード・ノーコードでユーザー自身がデータ統合を管理していくことが望ましく、どのSaaSにも接続できるような汎用性の高いものが求められます。当社が提供しているACMS ApexやRACCOONはまさにそうしたツールです。一般的に、汎用性の高いものはランニングコストがかかるため敬遠されがちですが、データ統合は常に必要であり、かつ長期的に運用することを考えると、多少ランニングコストを要してもこうしたツールが選ばれるものと考えています。

私はデータ・インテグレーションツールが5年10年で不要になるとは思いません。汎用性の高いツールであれば、より最適なSaaSが出てきた際のデータ統合も、ツール側の対応を待たずに進められます。自社に合わせた細かい調整や最適化もできるでしょう。そのため、息の長い、安定した品質のデータ・インテグレーションツールを、ユーザー自身が取り扱えるようにすべきだと考えています。

Theme 03

理想はデータ・インテグレーションが不要な世界。しかし、それは絶対に実現しない

データ・インテグレーションに関わる私が言うのも何ですが、データ・インテグレーションは重要であるものの、本質的に必要なものではありません。理想は、各サービスで連携先や統合先を選ぶだけで、自動で連携や統合が実行される世界。つまりデータ・インテグレーションツールが不要な世界です。そのためには、各サービスがすべての連携先に対する実装を作り込むか、業務ごとに標準化されたデータをやりとりすることが必要です。

前者に関しては、各サービス提供企業がそれを実装するなどということは、もちろん現実的ではありません。しかし、SaaS for SaaSが拡充することで、ある程度は狭間を埋めることができると考えています。後者については、身も蓋もありませんが、標準化されることはないと思います。標準化のためには年単位の期間が必要であり、その間にも業務に必要なデータは変わっています。これは現代のビジネスのスピード感とマッチしません。さらに、同じ業務を行う企業でも、企業独自のデータや処理方法があり、これらをすべて調整した上で標準化に至ることはまずないでしょう。

現実に目を向けると、各サービスは、自社の核心的利益に直結するSaaSとの連携・統合には積極的に動きます。しかし、そうでない領域については残り続けます。その間を埋めるのはやはりデータ・インテグレーションツールです。可能性のひとつとして、各サービスが淘汰された結果、市場が寡占状態になった場合にはデータ・インテグレーションツールが不要になるかもしれません。しかし、変化し続けるこの時代に、常に寡占状態を維持できる状態になるとは思えません。必ず新たな領域の課題に対する解答を持ったSaaSが出てくることでしょう。つまり、各サービスをつなぐ基盤となるデータ・インテグレーションツールは、これからいつの時代も必要とされ続けると考えています。

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