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電子帳簿保存法とは?2024年からの改正点や対象書類、保存要件をわかりやすく解説!

最終更新日:2024/05/17 電子帳簿保存法とは?2024年からの改正点や対象書類、保存要件をわかりやすく解説!

電子帳簿保存法は、国税を納めるすべての事業者に深く関りのある法律です。ここでは、この法律の概要から、対象となる事業者、対象となる書類について詳しく見ていきます。

INDEX

  1. 電子帳簿保存法(電帳法)とは
  2. 電子帳簿保存の対象となる事業者は?
  3. 電子帳簿保存法の対象となる書類は?
  4. 2024年1月1日から変わったことは大きく3つ
  5. 電子帳簿保存法における電子データの保存要件
  6. 帳簿や書類を電子保存するメリットは?
  7. 帳簿を電子保存するデメリットは?
  8. まとめ

電子帳簿保存法(電帳法)とは

電子帳簿保存法(電帳法)とは、国税関係(法人税法や所得税法など)の帳簿や書類を電磁的記録(電子データ)で保存することを認める法律です。1998年に施行され、時代の変化に合わせて繰り返し改正され、直近では2023年に大幅な改正が行われました。これによって「電子取引のデータ保存」が義務づけられ、2024年1月からは完全義務化となっています。電子保存の形式としては、「電子取引のデータ保存」「国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存(電子帳簿等保存)」「スキャナ保存」の3種類があります。

出典:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました~令和5年度税制改正による電子帳簿等保存制度の見直しの概要
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/pdf/0023003-082.pdf

電子帳簿等保存

最初から一貫してパソコンなどで作成している帳簿や国税関係書類を、プリントアウトすることなく、電子データのまま保存することを電子帳簿等保存といいます。会計ソフトで作成している仕訳帳やパソコンで作成した請求書の控えなどがこれに当てはまります。ハードディスクのような物理メディアでの保管のみならず、クラウドサービス上で作成し保管したデータも含まれます。あらかじめ届出書を提出している必要はありますが、一定の範囲の帳簿を「優良な電子帳簿」の要件を満たして電子データで保存している場合には、後からその電子帳簿に関連する過少申告が判明しても、過少申告加算税が5%軽減される措置があります。

スキャナ保存

決算関係書類を除く国税関係書類(取引先から受領した紙の領収書・請求書等)は、その書類自体を保存する代わりに、スマホやスキャナで読み取った電子データを保存することができます。これをスキャナ保存といいます。ただし、この保存方法においては、改ざんを防ぐ目的から、システム要件や電子データとして保存するまでの期間制限が設けられています。具体的には、訂正・削除履歴が残るシステムに保存するなどといった一定の要件を満たすことではじめて証憑として認められます。

電子取引データ保存

申告所得税・法人税に関して帳簿・書類の保存義務が課されている場合、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書・請求書などに相当する帳票を電子データ(電子取引データ)でやりとりしているなら、それをそのまま保存しなければなりません。このとき、データ改ざんができないサービス上で運用していれば、別途タイムスタンプを付与する必要はありません。2023年10月1日から導入されたインボイス制度でも、適格請求書と呼ばれる帳票を電子データで保存できます。これは電子インボイスともいい、電子帳簿保存法に準じて保存することが求められています。

電子帳簿保存の対象となる事業者は?

電子帳簿保存法は、すべての納税者に関係する法律です。法人税を納める法人はもちろん、所得税を納める個人事業主も対象外ではありません。なかでも留意すべきなのが、改正によって義務化されることになった電子取引データの電子データ保存です。これについては、納税義務を負うすべての事業者が宥恕措置適用期間の終了する2023(令和5)年12月31日までに、何らかの対応策を講じ、翌年からの取引に備えなければなりません。

電子帳簿保存法の対象となる書類は?

電子データで保存するという場合、対象となる文書は、大きく「帳簿」「書類」「電子取引に係るデータ」の3種類になります。また「書類」は、下位分類として「決算関係書類」「取引関係書類」があり、電子帳簿保存法での位置づけが若干異なります。具体的な方法は、電子帳簿で保存する、ファイルで保存する、スキャンデータで保存する、電子取引データで保存する、の4種類があります。それぞれ順に見ていきましょう。

電子帳簿で保存する

これは、国税の法律により備え付け及び保存が義務付けられている帳簿になります。仕訳帳、総勘定元帳、現金出納長、売掛金元帳などがこれに当たります。具体的には、一般電子帳簿、優良電子帳簿に相当する製品を導入し、データを保存することが想定されています。

ファイルで保存する

国税関係書類でも、棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの決算書類は、ExcelやPDFなどのファイル形式でも保存できます。契約書、見積書、請求書、注文書、領収証といった取引関係書類も同様です。電子的に作成したこれらの書類は、電子取引データという扱いになるため、電子保存が必要です。

スキャンデータで保存する

契約書、見積書、請求書、注文書、領収証といった取引関係書類は、取引先から紙で受け取ることもあります。その場合はスキャナでスキャンして電子保存が可能です。

電子取引データで保存する

電子データで送受信した取引関係書類がこれに該当します。代表的なのはEDIデータです。これらは送受信どちらのデータも電子的に保存しなければならないため、EDI製品がその機能を備えていると効率的です。このほか、電子メールやクラウドサービスを通じて受領した取引関係書類なども電子保存が求められます。

関連リンク:https://www.dal.co.jp/column/i-edi/

電子帳簿等保存する場合

電子帳簿等保存の対象となる帳簿・書類は、コンピュータシステムで作成しているものです。具体的には、大きく3種類あります。1つめは、仕訳帳、売上台帳、総勘定元帳、現金出納帳、固定資産台帳、仕入台帳などの国税関係帳簿です。2つめは、貸借対照表、損益計算書、棚卸表などの決算関係書類です。3つめは、3つめは、見積書、注文書、契約書、納品書、領収書など、コンピュータシステムで作成した取引関係書類の自社控えです。電子帳簿等保存は、希望者のみ対応すればよいことになっています。

スキャン保存する場合

スキャナ保存の対象となる書類は、大きく2種類あります。1つめは、手書きで作成して取引先に紙で渡した帳票の写しで、2つめは、取引先から紙で受領した帳票です。具体的には、以下のとおりです。まず資金や物の流れに直結・連動する重要な書類の例として、契約書、納品書、請求書、領収書、預金通帳、小切手、約束手形借用証書などがあります。また、資金や物の流れに直結・連動しない一般的な書類の例として、見積書、検収書、貨物受領証などがあります。スキャナ保存も、希望者のみ対応すればいいことになっています。

電子取引データで保存する場合

先に「電子取引」を明確にしておきましょう。電子取引という用語に当てはまる手法として、EDI、Web-EDI、クラウドサービス、電子メールなどでのデータ交換があります。こうした電子取引を利用して送受信されるデータで保存の対象となる帳票は、紙で受け渡ししていたときに、保存が必要だったものです。すなわち、これはスキャナ保存の対象書類と同じということになります。送った帳票のみならず、受領した帳票も含まれます。具体的には、契約書、納品書、請求書、領収書、見積書、検収書などが当てはまります。こちらについては、法人・個人事業者ともに対応が必要です。

図1:電子帳簿保存法の対象となる書類の例

図1:電子帳簿保存法の対象となる書類の例

2024年1月1日から変わったことは大きく3つ

電子帳簿保存法は、2023年の大幅改正により2024年1月1日より以下のような点が変更されています。

【電子帳簿等保存】=希望する事業者が対象

電子帳簿を利用することにより、これまで求められてきた紙帳簿の7年間保管が不要になりました。これにより、企業では帳簿保管スペースやコストを大きく削減することができます。

【スキャナ保存】=希望する事業者が対象

タイムスタンプと検索に関する要件が緩和されました。まず、帳票をスキャナで読みこんでタイムスタンプ付与期間が、最長2ヶ月+7営業日以内になりました。また、このときに実現しなければならなかったデータを検索するための要件も、「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目のみに緩和されました。

【電子取引データ保存】=所得税と法人税を申告する全事業者対象

紙の帳票を保存する要件が大きく変更しています。これまで、電子取引データに関しては紙に印刷した帳票を原本とすることができました。しかし、2024年1月1日からは、取引情報は原則データでなければならず、それも電子帳簿保存法の要件に則って保存しなければなりません。

電子帳簿保存法における電子データの保存要件

電子帳簿保存法では、電子帳簿等保存、スキャナ保存、電子取引データ保存、それぞれに明確な要件があります。運用に入るには、それらの要件を満たしているかどうかしっかり確認する必要があります。一部抜粋になりますが、以下に紹介します。

電子帳簿等保存の要件

記録事項の訂正・削除を行った場合には、これらの事実及び内容を確認できる電子計算処理システムを使用すること

通常の業務処理期間を経過した後に入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算処理システムを使用すること

電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認できること

システム関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付けること

保存場所に電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンタ及びこれらの操作マニュアルを備え付け、記録事項を画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと

以下の検索条件を備えること
①取引年月日、取引金額、取引先により検索できること
②日付又は金額の範囲指定により検索できること
③2以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できること

税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしておくこと

要件は多々ありますが、優良帳簿に認定された電子計算機処理システムはこれらをほぼ備えており、これを利用することにより不要になる要件もあります。そのため、企業においては優良帳簿を導入することが要件を満たす近道になります。

詳しくは国税庁「はじめませんか、帳簿書類の電子化!」PDFをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_01.pdf

スキャナ保存の要件

一定水準以上の解像度及びカラー画像による読み取り
⑴解像度が200dpi相当以上であること
⑵赤色、緑色及び青色の諧調がそれぞれ256諧調(24ビットカラー)であること
(注)⑵に関しては、白黒諧調(いわゆるグレースケール)での読み取りも認められる

帳簿との相互関連性の確保
国税関係書類に係る電磁的記録の記録事項と当該国税関係書類に関連する国税関係帳簿の記録事項との間において、相互にその関連性を確認することができるようにしておくこと

電子計算機処理システムの概要書等の備付け
電子計算機処理システムの概要を記載した書類、そのシステムの開発に際して作成した書類、操作説明書、電子計算機処理並びに電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類を備え付けること

詳しくは国税庁「はじめませんか、書類のスキャナ保存!」PDFをご覧ください。
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0018004-061_02.pdf

電子取引データ保存の要件

改ざん防止のための措置をとる
必ずしも「タイムスタンプ付与」や「履歴が残るシステムでの授受・保存」といった方法でなくてもよく、「改ざん防⽌のための事務処理規程を定めて守る」ことでも認められるようです。

「⽇付・⾦額・取引先」で検索できるようにする
必ずしも専⽤システムを導⼊していなくてもよく、①索引簿を作成する方法や、②規則的なファイル名を設定する方法でも対応することができます。

ディスプレイ・プリンタ等を備え付ける
詳しくは国税庁「電子取引データの保存方法をご確認ください」PDFをご覧ください。 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/sonota/0021011-068.pdf

帳簿や書類を電子保存するメリットは?

帳簿や書類を電子保存することのメリットとは何でしょうか。ここでは4つのポイントを挙げてみました。

ペーパーレス、省スペース

対象とされている国税関係の帳簿や書類は、長期間にわたっての保存が義務づけられています。紙での保存は大量の紙が必要となるとともに、その保管スペースを確保しなければなりません。オフィスに十分なスペースがあれば問題はありませんが、場合によってはオフィスを拡張したり、倉庫を借りたりしなければならないかもしれません。しかし、電子保存であれば、そうした物理的な資材や空間といった課題から解放されます。

システム活用による業務効率向上

電子保存では、何らかの形でシステムを活用することになります。これによって、計算処理の自動化や、書類整理・ファイリングが不要になるなど、大きな業務効率向上が期待できます。なかでも大きいのは文書検索が可能になることです。膨大な紙の書類の中から目当ての書類を探すのは、整理が行き届いていたとしてもひと仕事です。しかし、システムの検索機能を利用すれば一瞬のうちに探し当てることができ、仕事のスピードを上げられます。

物理保存から解放されることによるコスト削減

電子保存により保管スペースを確保しなくてよいということは、その分オフィスをスリム化できたり、倉庫コストが要らなくなるため、固定費の削減につながります。また、オフィスで利用する紙代も節約できます。くわえて、システム活用により、少ない人数でより多くの業務がこなせる可能性も広がります。このような部門体制の最適化という形でも、コスト削減を図っていくことができます。

セキュリティレベルの向上

紙での保存の場合、その帳簿や書類にアクセスすることさえできれば、誰でも中の情報に触れることが可能です。コピーや写真で盗み出すということも容易です。しかし、電子保存であれば、システムによりアクセス制御を講じることが可能です。本人を特定するというだけでなく、適切な権限がなければ情報にアクセス・閲覧できない仕組みが構築できるということです。情報保護を目的とした高いセキュリティレベルを付すことができます。

帳簿を電子保存するデメリットは?

それでは、帳簿や書類を電子保存するデメリットはどこにあるでしょうか。大きく3つあると考えられます。

システムを導入する必要がある

電子保存を実現するためには、何らかのシステムを導入する必要があります。オンプレミスシステムであれ、クラウドシステムであれ、一定の費用がかかることは覚悟しなければなりません。また、システムを使いこなすために、従業員に教育・研修を行わなければならない場合もあり、ここにも費用がかかります。紙で保存し続ける場合に比べれば費用対効果は高いといえますが、投資なくして電子帳簿保存法への対応は難しいと考えた方がいいでしょう。

システム責任者が必要になる

システムを活用するに当たって、帳簿や書類の数字に責任を持つ部門や人物が必要になります。電子帳簿保存法への対応においては、会計部門や経理部門がその任に当たることになるでしょう。システム責任者がその企業なりのルールをきちんと策定するとともに、それを社内に周知徹底していかなければなりません。それだけでなく、策定したルールが守られるよう、常に社内を牽引していく姿勢が求められます。

システム障害が起こる可能性がある

帳簿や書類を電子保存するということは、ひとたびシステムに障害が発生すると、求める文書が閲覧できなくなったり、業務が行えなくなるということを意味します。月次や年次処理の中には、時間の猶予が許されていないというものもあります。万一に備え、代替手段について事前によく検討しておく必要があります。システム構築の段階から、システム障害が発生しても代替システムに切り替えられる仕組みを考えておくことも一法です。

まとめ

ここまで、新しく改正された電子帳簿保存法へ対応するために必要となる基礎情報を見てきました。一見、要件が厳しく、業務負担が増えるように思われますが、ペーパーレスの促進、業務効率の向上、コスト削減など、対応することによって新たなメリットも享受できます。また、法律遵守は税務調査などでのトラブルを回避するといった意味でも重要です。ぜひ御社でも前向きにとらえ、取り組みを進めていただければ幸いです。

この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

データ活用・データ連携のお役立ちコラム

経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。


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