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ERPとは?導入のメリットや基幹システムとの違いを解説

最終更新日:2023/08/31 ERPとは?導入のメリットや基幹システムとの違いを解説

企業情報システムの中核にERPを採用する企業が増えています。その導入をDXプロジェクトの柱とすることもあるようです。ERPとは一体どのようなもので、どのような導入効果があるのでしょうか。ここでは、ERPの概要や歴史、利用のメリットをご紹介します。

INDEX

  1. ERPとは?
  2. ERPの特徴
  3. ERPの由来と登場の背景
  4. ERPと基幹システムの違い
  5. ERPを導入するメリットとは?
  6. ERPのデメリット
  7. ERPの導入形態
  8. ERPの導入方法
  9. クラウドERP導入のメリット・注目される背景

ERPとは?

ERPとは、そもそもは経営の効率化を図るために企業全体を統合的に管理しようという概念のことをいいます。正式名称はEnterprise Resources Planningといい、企業資源計画と訳されることもあります。しかし、現在は、この概念に基づいて開発されたソフトウェアのことを指して、そのままERPあるいはERPパッケージと呼ぶのが一般的です。

ERPの特徴

大きな特徴は、現金、原材料、生産能力といった、企業が所有する経営資源を有効活用すべくソフトウェアが設計されていることです。具体的には、1つの大きなアーキテクチャ体系の中に複数のシステムが統合されて存在します。たとえば、会計管理システム、販売管理システム、在庫管理システム、購買管理システム、生産管理システム、人事給与管理システムなどがその例です。このように、さまざまな基幹業務の管理機能を持つシステムをベンダー1社が包括的に提供しますから、システム間でのデータ連携もスムーズに行えます。ただし、その業務のカバー範囲はベンダーによって微妙に異なります。たいてい、導入の際に企業はERPパッケージベンダーを1社に絞りこみますが、よりフィットした製品・サービスを利用したいと、ときに業務ごとに違うベンダーを選択する場合もあります。

ERPの由来と登場の背景

ERPは、MRPという概念に由来しています。これは、Material Requirements Planningの略称で、日本語では資材所要量計画と訳されています。MRPとは、主に工場で利用される生産管理手法です。部品や材料を必要なときに必要な分だけ調達しながら、その製造を最適化する考え方ですが、広義には、そうした生産にかかわる設備や人員、資金を含めた計画を立案・実行することを意味しました。
1990年代に入って、システムで業務を管理しようという気運がさらに高まりました。MRPの考え方は、生産管理から会計や人事などといった別の基幹業務へも広がっていきます。さらに、企業全体の観点で情報の一元管理やリソースの状況管理を行おうということになり、それが現在のERPの出発点となっています。
ちなみに、日本のERP元年は1992年です。世界最大手のERPパッケージベンダーが日本に上陸。当時、欧米では、業務や組織のあり方を根本的に見直し、再構築するBPR(Business Process Re-engineering)が脚光を浴びており、日本でもBPRを実現するのに適したシステムとしてERPに注目が集まりました。

ERPと基幹システムの違い

基幹業務をシステムで管理するという意味では、基幹システムもその役割を果たします。ただ、基幹システムは単一の業務を対象としています。生産管理、販売管理など、それぞれの業務範囲に特化し、その業務への深い理解を通して可視化、標準化、効率化を進めます。そのため、システムを導入した業務状況は改善するのですが、それが企業全体に波及するかというと効果は限定的です。また、基幹システム間でデータやプログラムを共有したいと思えば、用途に合わせて連携する仕組みを別途構築する必要があります。そこに時間とコストがかかり、機敏には動けません。

これに対し、ERPは企業全体の観点で情報の一元化をめざす仕組みです。複数の基幹業務間で最初から一つのデータベースを共有、経営の戦略や戦術を立案するのに必要な情報を提供することを目的としています。たとえば、販売管理システムからリアルタイムに受注状況を取得することで、その良し悪しによって生産管理システムで生産量を柔軟に調整することができます。受注状況をうまく知ることができなければ、工場はよかれと思って最大限の生産能力を発揮してしまい、かえって不良在庫を増やしてしまうかもしれません。このように、業務部門間で連動できることは、企業のパフォーマンス最適化につながります。

基幹システムとは? ERPとの違いやメリットや導入方法、ポイントを解説

ERPを導入するメリットとは?

情報の一元化が可能になる

ERPでは、複数業務の間でデータベースを共有します。そのため、情報の一元化を図ることができます。別途システム間連携を考える必要はありません。そのデータベースの情報を源として、企業全体の観点で今の状況を正確かつ迅速に把握できることで、有効な経営戦略や戦術を立案することができます。

業務の標準化・効率化が図れる

ERPには、世界優良企業のベストプラクティスが、その業務処理設計に採用されています。長く企業活動を営めば、その企業ならではの商習慣や社風が生じます。それが業務上、他社にない強みとなることもありますが、どこかにムダ・ムリ・ムラが生じて、知らぬ間にビジネスの足枷となることもあります。その点、ERPには多くの企業から学んだすぐれた管理手法が用いられているため、その製品・サービスに業務を合わせることで、自ずと標準化・効率化が図れます。

法律や制度変更への迅速な対応が可能になる

基幹システムを自社で構築する場合、それぞれの業務に関係した制度や法律が変更になるたびに、自ら改修しなければなりません。これは時間もコストがかかる作業で、企業にとって負担の大きいものです。しかし、パッケージを導入すれば、こうした変更対応はベンダーが担ってくれるため、企業は利用に専念することができます。

経営情報の可視化や意思決定の迅速化が実現する

ERPのデータベース内に格納されている数々のデータは、統計やレポートという形で可視化され、経営層にも提供されます。その時点での最新の業務データにアクセス可能になることで、経営層には自社のビジネスが今どういう状況にあるかが容易に把握でき、次に取るべきアクションを迅速に判断することができます。進めているプロジェクトを加速させる、あるいは方向転換を図るなどといった重大な意思決定が、データという裏付けを持ってスピーディーに行えるようになります。

ERPのデメリット

一方、デメリットもあります。基本的には多くの基幹業務をベンダー一社の製品・サービスに任せるということになりますから、その選定にはどうしても慎重にならざるを得ません。自社で求める必要要件を掲げて、いくつかの候補製品をじっくり比較検討することになるでしょう。
また、採用を決めた後の導入プロセスも一仕事です。現状の業務分析や製品・サービスとのギャップ調査、またそのギャップを埋めるための方策検討など本稼働まで多段階にわたり、時間もコストもかかりがちです。
完成後には手厚いユーザー研修も必要です。ユーザーにとって仕事の進め方が大きく変わるため、ERP導入の意義がきちんと共有されなければ定着を図るのが難しくなります。
そして、これは業務とのギャップを埋めるためにカスタマイズを施した場合のデメリットになりますが、カスタマイズを施したがためにバージョンアップに多大なコストと労力がかかります。

ERPの導入形態

統合型ERP

企業のデータを複数システムの中核に置き、互いに連携させて使用することを前提として作られたERPです。たいていの場合連携は自動化されており、業務の効率化を図れます。また中核にあるデータを利用して経営層向けのダッシュボードを作ることも容易で、データに基づいた意思決定を支援します。

コンポーネント型ERP

会計業務なら会計業務、その中で特定の必要な業務のみを選び出し、組み合わせて使えるのがコンポーネント型ERPです。そのため、単一システムからスタートし、しだいに必要な機能を追加していくといった、“小さく生んで大きく育てる”運用が可能です。他のタイプに比べると、価格体系が安価なものもあり、短期導入にも向いていることから、中堅中小企業でも導入しやすいでしょう。

業務ソフト型ERP

このタイプのERPは、人事給与や生産管理など、ある特定の業務にフォーカスを絞り、その最適化をめざすものです。事業部門単体、あるいは特定業務単位で「現場課題を解決したい」と要望が上がった際によく候補に上ります。特殊な要件がなければ現場主導で導入を進めることが可能で、当該業務の標準化や効率改善に役立ちます。

クラウド型ERP

クラウド型ERPとは、インフラ形態に着目した分類で、その名のとおりクラウドで提供されるものを指します。ハードウェアやソフトウェアの調達が不要であるため導入期間が短縮でき、自社でのサーバ管理から解放されます。より詳細には、IaaS型、PaaS型、SaaS型という分類もあり、オンプレミスシステムをクラウドへ移植したものもあれば、最初からクラウドで開発されたサービスもあります。どれが自社での運用に最もふさわしいか、よく検討して選びましょう。

ERPの導入方法

システムの導入目的を明らかにする

まずは、何のためにERPを導入するのか、組織レベルでベクトルを合わせます。ここが明確かつ幅広く共有されていないと、プロジェクトが迷走するもとになります。

プロジェクト体制を整える

情報システム部員に加えて、ユーザー部門を幅広く巻きこみ、組織横断的なプロジェクトチームづくりが理想です。また経営の観点から意思決定できる企業幹部の関与も重要です。

要件定義を行う

現状業務のヒヤリングを行い、どういう点が現状の課題なのかを洗い出します。その上で、どのようにERPによって業務改革を行えるか方向性を探っていきます。

導入する製品/サービスを選定する

幅広く情報収集を行い、自らの組織で求める機能要件、非機能条件を挙げて比較検討します。選定のめどが立ったら、より詳細なレベルでフィット&ギャップ分析を進めます。

導入計画を立てる

プロジェクトのQ(Quality,品質)、C(Costコスト)、D(Delivery納期)に関して見積りを立てます。自社で持てるリソースを考えながら、無理のない計画を立てるのが重要です。

必要であれば設計・開発を行う

重要なビジネス習慣がERPの標準機能では間に合わない、というときにはカスタマイズ開発を行うことになります。

テストを行う

事前に作成したテストシナリオを利用したり、旧システムとの結果比較などによって、システムが正しく動作するかどうかを確認します。往々にしてプロジェクトが計画より遅れ、このプロセスに無理がかかりがちですが、本番システムの安全を考え、端折らないようにしましょう。

ユーザートレーニングを行う

新システムが完成したら、研修機会を設けたり、わかりやすいマニュアルを準備するなどして、エンドユーザーがスムーズに移行できるよう施策を講じます。

運用保守を行う

本番稼働後は、運用保守フェーズに入ります。このプロセスでは、微細なシステム修正やユーザーフォロー、新たな要望に対応した機能追加などを行っていきます。

クラウドERP導入のメリット・注目される背景

クラウドERPとは、クラウド上でサービスとして提供されているERPパッケージのことを意味します。ハードウェアを企業で調達する必要がありませんから、それにかかる時間やコストを大きく削減することができます。また、ハードウェアを導入すれば、その上に搭載するソフトウェアを含め、それ以降ずっと運用管理し続けなければなりません。しかし、クラウド上のサービスであれば、その作業から解放されて利用に専念することができます。ただ、カスタマイズという面では制約があり、自社の商習慣をそのまま持ちこむというわけにはいかなくなります。これも既存のやり方を抜本的に見直す業務改革の機会と捉えれば、メリットの一つといえるかもしれません。

もう一つ、購買や販売、会計などの業務でERPを導入する際には、同時にデータ連携基盤についても検討することをお勧めします。ERPはデータベースが一元化されており、そこでのデータ再利用・有効活用は容易です。ただ、ERPに蓄積されたデータは外部システム、例えば、SFA、調達、経費精算などのクラウドサービスや生産管理システムにとっても重要な意味を持つことが多く、頻繁にシステム連携、データ連携の必要が生じます。そのつどシステム開発していては時間もコストもかかり、スピード経営の時代に合いません。最初からデータ連携基盤をハブとして用意しておけば、取引先や金融機関との連携も含んだ企業情報システム全体で迅速かつ柔軟なデータ流通が実現。AI活用なども深化させやすくなり、企業でのデータ活用が新たな顧客価値の創造や確度の高い意思決定につなげていくことが可能です。
さらにデータ連携基盤について詳しく知りたい方は、以下よりご参照ください。

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この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

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経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。


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