株式会社オージス総研は、大阪ガスの情報システム部門をオリジンとするシステムインテグレータである。特定のベンダーや製品に偏らないオープンスタンスで、顧客サイドに立ったビジネスを展開しているのが大きな特長だ。システム開発のみならず、コンサルティングから運用、SaaS、PaaSまで、多様なITソリューションをビジネス領域としている。
その中でもeCubenetサービスは、すでに30年以上、2,500社以上の採用実績を誇る主要サービスの一つだ。導入から運用までのワンストップサービスを、さまざまな業界仕様のEDIに対して24時間365日安全に提供している。企業にとって、このサービスを利用することでEDI業務から解放され、本業に専念できるメリットがある。
2017年4月、NTT東西が2024年1月にINSネット ディジタル通信モードの提供を終了することを発表した。これはネットワークインフラとして電話回線を利用できなくなることを意味し、企業はインターネットEDIに切り替える必要がある。決済インフラを提供する一般社団法人 全国銀行協会も、これをにらんで対応する通信プロトコル全銀協標準通信プロトコル(TCP/IP手順・広域IP網)(以下、TLS対応版)の提供を発表していた。オージス総研はただちに動き始めた。株式会社オージス総研 プラットフォームサービス本部 EDIサービス部 部長 奥野公彦氏は次のように語る。
「スピード勝負でした。切り替えという変化を確実にビジネスチャンスにするためには、迅速なキャッチアップが不可欠だったのです」
また、これを機に従来のサービスに内在する課題も解決したいと考えた。株式会社オージス総研 プラットフォームサービス本部 EDIサービス部 EDIサービス第一チーム 松井宏樹氏はこう語る。「サービス運用を当社側で担っており、状況照会やデータ伝送リトライなどお客様から依頼があると、その都度対応していました。また、そのほとんどが手作業であるため運用負荷が高く、結果としてそれがコストにはねかえっていました。お客様からは『自分たちで操作したい』という要望も寄せられていたため、当社としては運用負荷の軽減、お客様に対してはセルフサービスを実現したいと考えました」
同社ではEDIシステムとして以前からACMS E2Xを利用しており、 当初はこれにTLS対応版を追加することで機能を実現しようと考えていた。そうした中、ACMS E2Xの後継製品ACMS Apexが登場、ACMS Apex技術者認定制度がスタートした。2018年6月、社内技術者を育成する目的でトレーニングを受講してみたところ、ACMS Apexに移行した方がよいという意見が出てきた。奥野氏は次のように語る。「ACMS Apexはクラスタ機能を持ち、障害が起きた場合にも代替サーバに自動で切り替わります。これまでシステムの可用性はわれわれで担保してきましたが、それが製品レベルで実現されているのは大きいと思いました。
また、データ伝送遅延を検知する機能もこれまでは自社開発していましたが、ACMS Apexでは標準搭載でインフラをシンプルに保てます。さらに管理に関しても、細かく権限設定が行えるため、社内のIT統制やユーザーセルフサービスが実現しやすいと思いました」
松井氏は奥野氏を補足して次のように語る。「GUI画面がわかりやすく、専任でない担当者でも直感的に操作できると思いました。その一方でコマンドインターフェースが用意されていて、プログラムで操作することも可能です。運用負荷削減のための自動化は、当社にとって重要なテーマで、これは他社製品にはない機能でもありました。
もう一つ付け加えるとしたら、石油化学工業協会(以下、石化協)標準ビジネスプロトコル Chem eStandardsが、この業界のお客様の多い当社にとって必須のプロトコルで、ACMS Apexでの同プロトコルのリリースが前倒しになったことも移行を後押ししました」
大きな軌道修正ではあったが、同社は新サービスの本番リリースをほぼ変更しなかった。それが可能だった背景には、同社内でACMS Apex認定技術者を増やして体制を構築できたこと、またDALがビジネスプラン策定や技術サポートでバックアップしたことがあった。
2019年1月16日、新サービスは本番リリースを果たした。現在、既存顧客1社が同年3月をめどにこちらへ移行する予定だ。石化協も2022年末にはインターネットEDIへの移行完了することを発表、すでに現状調査などの活動に動き出している。EDIは多くの取引先との相互接続で成り立つ業務であり、専門性の高い分野でもあるため、デッドラインが迫ってからの対応では間に合わないリスクがあるからだ。
松井氏はACMS Apexで変化した運用業務を次のように語る。
「クライアント証明書管理が楽になりました。従来は1社につき1枚だったため、証明書の有効期限更新時はデータ伝送のない時間帯にお客様にも立ち会っていただき一瞬で切り替える必要がありました。現在は1社につき2枚持てるので事前に登録でき、お客様のタイミングで自由に切り替え可能になりました。
運用業務の自動化も進んでいます。たとえば、顧客から新たな取引先やデータの種類などを追加したいという要望が寄せられたとき、内容を記述した設定シートを提出してもらえば、その後のACMS Apexへの登録までのプロセスはACMS Apexのコマンドインターフェースが充実しているため、自動的に展開ができます。
今後もこのような自動化を積極的に進めて負荷軽減に努め、サービスコスト低減につなげていきたいです」と松井氏は語る。
新しい構想を語るのは奥野氏だ。「当社では、たとえば製造業で重要な品質情報や図面情報などを企業間で共有するようなサービスも従来から手がけており、これを機にそのサービスをACMS Apex上に統合し、今後ますます多様化するであろうデータ連携サービスを幅広く展開していきたいと考えています」
オージス総研は、まさにエンタープライズ・データ連携基盤としてACMS Apexを高く評価し、ビジネス拡大の礎とするべく構想を広げていた。
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