データ活用・データ連携のお役立ちコラム

【事例付き】データ活用って?手順や活用メリット、ポイントは?

最終更新日:2024/09/12 【事例付き】データ活用って?手順や活用メリット、ポイントは?

今や企業で必須であるDX(デジタルトランスフォーメーション)において、重要な役割を果たすのがデータ活用です。これは、データを収集し、整理し、分析することで、こうした手順を踏むことで、データから有益な洞察を得ることができるとともに、戦略的意思決定に不可欠な情報を提供します。具体的に、顧客の行動パターンを理解したり、市場動向を予測したり、製品開発プロセスを改善したり、効率的な組織運営などに役立ちます。本記事では、データ活用の概要とこれに取り組む上で重要なポイントに加えて、具体的な事例もご紹介します。

INDEX

  1. データ活用とは?
  2. ビジネスでのデータ活用4つのメリット
  3. 活用データの種類
  4. データ活用4つのポイント
  5. データ活用を行う5ステップ
  6. データ活用の課題
  7. 【業界別で紹介】データ活用事例
  8. まとめ

データ活用とは?

データ活用とは、データを収集し、そのデータを分析することで、有益な情報を引き出し、意思決定や業務改善に役立てることを指します。ここに含まれるプロセスとしては、データの収集、保存、処理、分析、解釈、そしてアクションへの変換があります。顧客データ、市場動向データ、売り上げデータなど、さまざまなデータを活用することで、製品開発、マーケティング戦略、顧客サービスの向上など、さまざまなビジネスプロセスを最適化することができます。

データ活用とデータ分析は何が違うの?

データ活用と似た用語にデータ分析というものがあります。どちらもビジネスインテリジェンスの世界でしばしば使われますが、両者には違いがあります。データ活用は、分析した結果を実際のビジネス戦略や意思決定に応用する行為を指します。これに対してデータ分析は、データセットを検討し、統計的手法や機械学習アルゴリズムを用いてパターンやインサイトを抽出するプロセスです。たとえば、特定の商品が特定の時間帯によく売れることを発見するのはデータ分析で、この情報を使ってさらなるプロモーションをしかけるのがデータ活用になります。

データ活用の今

すでにデータ活用は、さまざまな業界で展開されています。たとえば、医療業界では、患者の健康記録から得られるビッグデータを分析することで、病気の早期発見や予防、治療法の改善に役立てています。金融業界では、取引データや顧客行動の分析を通じて、リスク管理を強化し、よりパーソナライズされた金融商品を提供しています。小売業界では、購買データを分析することで、在庫管理の最適化、顧客の購買傾向の予測、マーケティング戦略の策定に活用されています。

関連リンク:「総務省 デジタルデータの経済的価値の計測と活用の現状に関する調査研究の請負報告書」

ビッグデータ活用も進んでいる

ビッグデータとは、従来のデータベース管理ツールでは処理が困難なほど巨大かつ複雑で、高速な処理能力を要求されるデータの集合を指します。こうしたデータを活用することで、企業は顧客の行動パターンを把握したり、市場のトレンドを予測したり、製品の改善点を見つけたりすることができます。具体的な活用例としては、センサー情報、オンライントランザクション、ソーシャルメディアの投稿などから、データマイニングや機械学習などの技術を用いて有益な情報を引き出すといったことが考えられます。

ビジネスでのデータ活用4つのメリット

ビジネスにおいてデータ活用を行うことで、さまざまなメリットを享受することができます。ここではその主なものとして4つの項目を挙げました。

① 売上向上を期待できる

顧客データや売り上げデータの分析を通じて、顧客の購買行動や嗜好を理解するとともに売れ筋商品を把握、それに基づいてマーケティングを最適化することで、より効果的な販売戦略を立てることができます。また、市場のトレンドを迅速につかむことで、新たなビジネスチャンスを見つけ出すことも可能です。これにより、売上の増加や事業拡大、新規事業への参入といった企業の成長へとつなげていくことができます。

② コストを削減できる

データを活用することで、無駄なコストを削減し、効率的な運営が可能になります。たとえば在庫管理においては、過剰在庫や在庫不足を発見できます。特に過剰在庫が解消できると、倉庫スペースの削減といったコスト削減が実現できます。また、製造プロセスを最適化することで製造コストを下げたり、ロジスティクスを見直すことで輸送コストをテコ入れするなど、さまざまな分野でコスト削減が実現できます。

③ 戦略策定や検証精度の向上

データ活用は、戦略策定や検証精度の向上にも役立ちます。データ分析を通じて、より科学的で客観的な意思決定が行えるようになるからです。市場調査や競合分析に基づいた戦略立案は、仮説に基づいた推測ではなく、実際のデータに裏打ちされたリアリティの高いものになります。これにより、データ活用以前には行えなかったリスクコントロールを行いながら、実効性のある戦略を展開していくことができます。

④ 迅速な意思決定が可能

リアルタイムでのデータ分析により、状況の変化に即座に対応することができます。たとえば、市場の変動や顧客のフィードバックをすばやく捉え、それに基づいた迅速な意思決定を行えるようになります。これは企業の競争力を高める大きなカギとなります。データドリブンな意思決定を進めることで、企業は、ビジネスの俊敏性を高め、変化に強い組織を作り上げることが可能になります。

活用データの種類

活用に利用するデータには、さまざまな種類があります。総務省は「情報通信白書 平成29年版」で、データ活用で利用するデータの種類を以下のように定義しています。

オープンデータ
企業データ M2Mデータ
暗黙知データ
(知のデジタル化)
パーソナルデータ

参考・関連リンク:「総務省 ビッグデータの定義及び範囲」

① オープンデータ

オープンデータとは、誰もが自由にアクセスし、利用し、共有することができるデータのことを指します。オープンデータは、政府や公共機関によって提供されることが多く、たとえば、統計データ、地理情報、交通運行データはその一種です。活用例としては、公共交通機関の時刻表・路線情報を用いた公共交通機関のルート検索サービスなどが考えられます。オープンデータは、市場調査や競合分析を行ったり、新たなビジネスチャンスを見出す上で企業にとって重要なデータソースといえます。

関連リンク:「総務省 オープンデータとは?」

② 企業データ

一方、企業が所有するデータが企業データです。この中には大きく、M2Mデータと暗黙知データという2つの種類があり、それぞれ以下のような特徴があります。

M2Mデータ

M2Mデータとは、機器同士が直接通信を行い、情報の送受信や自動制御を可能にする技術です。IoTと異なり、インターネットを介さずに閉じたネットワーク内で機能し、特定の業務やプロセスの効率化を図るために利用されます。この技術は、自動運転やスマートファームなどで活かされています。

暗黙知データ

暗黙知データとは、言語化や文書化が困難な知識や経験のことを指します。これは従業員が持つ技術やノウハウ、企業文化や作業プロセスに関する理解など、形式知と対照的をなす情報源です。暗黙知は企業の競争力の源泉となり得るため、企業はその管理と活用を重要視する必要があります。

③ パーソナルデータ

パーソナルデータとは、個人を識別できる情報および個人との関係性が見出されうるデータのことを指します。具体的に、名前、住所、電話番号、メールアドレスなどの直接的な識別情報のほか、趣味、購買履歴、ウェブ上の行動パターンなどの間接的な情報も含まれます。個人のプライバシーに関わるため、取り扱いには細心の注意が必要です。

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データ活用4つのポイント

データ活用を成功させるためには、いくつかポイントがあります。これらをしっかり理解しておかないと、取り組みが成功しないどころか、大きなトラブルに巻きこまれるリスクもあります。以下に事前に留意しておきたい点を挙げました。

① 活用可能なデータの把握

データを活用する第一歩は、使えるデータの把握です。企業が保有するデータの種類、量、質を正確に理解することで、どのデータがビジネス価値を高めるのに役立つかを判断できます。そうしたデータの代表例として、販売データ、顧客データ、経理データなどがあります。また、オープンデータや外販されているデータを活用することも重要で、交通量・交通情報データ、気象データ、SNSデータなどは汎用的に役立てることができます。

② データを活用できる業種や領域を調べる

データを活用できる業種や領域の調査をすることも重要です。使えるデータの目途が立ったら、それらがどのような業種や領域で活かせるか、どのような価値を生み出せるかを探っていきます。企業内においてデータ活用しやすいのは、経営企画や製品/サービス開発、マーケティング分野です。また、異なる業界でのデータ活用成功事例を研究することも、新たなビジネスチャンスを発見することにつながります。

③ 分析のためのリソース確保

分析のためのリソースを確保することも、データ活用の大きな鍵となります。このプロセスには、適切な分析ツールの選定、専門スキルを持つ人材の確保、そして十分な計算能力を備えたインフラストラクチャの整備などが含まれます。なかでも重要なのは、人材の確保です。専門知識を持ったデータサイエンティストを獲得するか、業務ノウハウを持った社内人材をデータサイエンティストに育てるのか。自社にはどちらが適しているかをよく検討しましょう。

データの分析体制

データの分析体制

参考・関連リンク:「総務省 日本企業におけるデータ活用の現状」

④ 個人情報には注意する

パーソナルデータを活用するときには、個人情報の取り扱いには注意する必要があります。プライバシー保護の法規制は厳しく、違反すると重大な罰則が科せられる可能性があります。活用が必須であるならば、適切なセキュリティ対策を講じ、データ保護のベストプラクティスを遵守するようにしましょう。個人情報の匿名化や暗号化など、データの安全性を確保するための技術的手段を講じることも求められます。

データ活用を行う5ステップ

データ活用にはステップがあります。それは「目的と課題を設定する」「データを集める」「データの加工・可視化を行う」「データを分析する」「データ活用プランを策定・実施し、効果を検証する」というフローをたどります。

データ活用フロー

① 目的と課題を設定する

最初は、目的と課題を設定することから始まります。データ活用によって、何を達成したいのか、どのような問題を解決しようとしているのかを明確にします。目的が明確であればあるほど、収集するデータの種類や分析方法も絞り込むことができ、効率的なデータ活用が可能になります。

② データを集める

続いて、データを集めます。ここでは、目的達成のために必要なデータを、企業内データソースや外部ソースから収集します。データの質と量がプロジェクトの成功を左右するため、確かな基準を設定すると同時に、できるだけ視野を広げて幅広く集めてくることが重要です。

③ データの加工・可視化を行う

データを収集したからといってすぐには分析を始められません。集めてきたデータは加工を行い、可視化する必要があります。加工とは、収集したデータを分析しやすい形に整えることです。不要な情報の削除や欠損値の処理を行い、データをクレンジングします。その後はグラフやチャートとして可視化し、パターンやトレンドを把握しやすくします。

④ データを分析する

この段階で、いよいよデータを分析することができます。ここでは、可視化されたデータをもとに、統計的手法や機械学習アルゴリズムを用いて、さまざまな角度から深い洞察を得るための分析を行います。こうした分析を通じて、確度の高い意思決定に役立てることのできる有益な情報をデータから引き出すことができます。

⑤ データ活用プランを策定・実施し、効果を検証する

ステップの最終段階は、データ分析を通じて得た発見から、データ活用プランを立案し、それを実際のビジネスプロセスに適用して実施するとともに、得られた効果を検証することです。一回では難しいかもしれません。そのときは、次のデータ活用に向けて改善点を見つけ出し、継続的な改善サイクルを回していきます。

データ活用の課題

多くのメリットを有するデータ活用ですが、そこには課題もあります。特に注意したいのはデータの質と整合性です。不完全または不正確なデータは、誤った分析結果を導き、企業の意思決定に悪影響を及ぼすため、収集段階から目を光らせなければなりません。また、セキュリティも大きな問題となるため、データを取り扱うシステムのセキュリティ強化に力を入れる必要があります。さらに、データの収集と利用に関する法規制の遵守も重要で、当局の情報発信を注視しておきましょう。

【業界別で紹介】データ活用事例

すでにさまざまな業界でデータ活用が行われています。課題に直面した企業が試行錯誤しながら解決策を見出し、確かな効果を享受している姿からは多くのことを学べます。また、自社に適用するためのヒントを得られることもあります。

サービス業界

サービス業界におけるデータ活用の事例として、グルメ情報提供サイトのビッグデータサービスがあります。ここでは、サイトにメニュー情報を掲載している店舗のメニュー情報を集計・分析することが可能で、たとえば「飲食店で唐揚げがどのような扱いになっているか気になる」「特定の惣菜メニューが今も人気があるのか知りたい」といったサービス利用ユーザーの要望に応えています。グルメ情報提供サイトは、自社の持っているデータを有効利用することで、新しいビジネスを立ち上げることができたといえます。

(参照URL:https://solution.gnavi.co.jp/service/bigdata/?sc_lid=pr-ms_ad_bigdata&gad_source=1&gclid=Cj0KCQjwzva1BhD3ARIsADQuPnWUHxRSxOgDHuG1MS0p6xkXdW8N-5j7Ty8a4quJZkX1M02V9bf0O3caAs1dEALw_wcB

物流業界

ある物流事業者では、トラックターミナルで事務作業に当たっている人員の生産性を上げるのにデータ活用を採り入れました。具体的には、出退勤管理システムのデータを自動収集したり、EDIデータの活用によって作業を効率化するなどといったことが実施されました。その結果、年間数万時間単位の作業時間が削減され、数百名単位の従業員を営業など他の部門にシフトすることができました。これは、同社が自己資本利益率の向上をめざす上でも重要な取り組みと位置づけられています。

(参照URL:https://www.seino.co.jp/seino/news/stc/2024/0430-01.htm

製造業界

ある米国半導体事業者では、半導体チップの品質テスト工程において、従来は2万に近い種類のテストを実施していました。これではテストに時間がかかりすぎるため、同社はリリース前のチップの製造プロセスから得られる情報の一部をビッグデータとして抽出し、これを詳細に分析することで、特定のチップに集中してテストを行うことが可能になりました。そして、この予測プロセスを実施した生産ラインでは、年間数億円単位のコスト削減を実現することができました。

(参照URL:https://japan.zdnet.com/article/35062222/

金融業界

ある銀行では、取引モニタリングにAIを活用しています。これは金融犯罪対策として実施しているものです。注意すべき取引に関してあらかじめルールを設定し、モニタリングを行い、ルールに該当したものを検知するとアラートを出します。担当者はアラートが出た取引に関して調査を実施、報告が必要かどうかを判断します。従来は全件を人が調査をしていましたが、AIを用いることで発見の確度を高度化でき、疑わしい取り引きに人的リソースを集中して割けるようになりました。

(参照URL:https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/09384/

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まとめ

ここまで、データ活用の概要とそのメリット、導入ステップや業界事例について紹介してきました。データは現代ビジネスにおいて第二の“燃料”といえます。企業が市場の動向を理解し、顧客のニーズに迅速に対応し、競争上の優位性を確立するための鍵となる情報源です。データ活用のメリットを最大限に引き出すには企業文化の変革も重要であるため、取り組みは企業全体で行うことをお勧めします。結局、データ活用は一過性のトレンドではなく、今や企業にとって持続可能な成長と競争力を確保するために必須の戦略といえるでしょう。

この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

データ活用・データ連携のお役立ちコラム

経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。


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