データ活用・データ連携のお役立ちコラム
データ活用・データ連携のお役立ちコラム
デジタル化の波が加速する中、「自分たちの業務に合うシステムがすぐに欲しい」という声が高まっています。そんな課題を解決する手法として注目されているのがノーコード開発です。本記事では、ノーコードの概要、ノーコードとローコードの違い、注目される背景、導入メリットとリスク、ツール選定の重要ポイント、活用事例、そして今後の展望までを幅広く解説。現場主導でDXを加速させるヒントをお届けします。
ノーコードとは、次のような基本概念を持った用語です。
1.プログラミング不要でアプリケーションや業務システムを開発できるしくみ
2.ドラッグ&ドロップなどのGUI操作による直感的な開発
3.テンプレートやパーツを組み合わせて機能を構築
4.ビジネス部門主体の“市民開発”を促進
5.開発スピードが速く、改善・反映が容易
なかでも中心となるポイントは1と2で、以下でもう少し詳しく解説します。
ノーコードとは、プログラミングの専門知識がなくても、アプリケーションや業務ツールが作れる手法のことをさしています。従来、アプリケーション開発といえば、プログラミングの知識を備えたエンジニアが担っていました。しかし、エンジニアのすべてが業務に精通しているわけではありません。そのため、現場担当者からの丹念なヒヤリングが必要でした。しかし、ノーコードならプログラミングを知らなくても、営業や総務などの現場担当者が、自分たちの仕事に合わせて必要な機能をすばやく作れます。アイデアをそのまま形にできることが大きな魅力で、IT人材不足が顕著になりつつある現在、会社全体のDXを後押しする開発スタイルとして注目されています。
ノーコード開発を実現するツールは、基本的にドラッグ&ドロップの操作を中心に画面や処理を組み立てることができます。ボタンや入力欄などの部品を、用意された場所に置いていくような感覚で作り上げることができ、開発言語の作法に基づいた難しいコードを書く必要がありません。また、業務フローも積み木を並べるようなイメージで作れるため、プログラミング経験のない人にも直感的に理解できます。さらに、予約の受付や顧客情報の整理など、よく使われる業務については、最初から大まかな形ができあがっていることが多く、必要なところだけ変更すれば自社に合ったアプリケーションに仕上げることができ、改善も容易に行えます。
似たような用語にローコードというものがあります。こちらは、基本的な開発作業は画面操作で行いながら、必要に応じて少量のコードを追加して高度な機能や外部連携を実現する開発の考え方です。以下に、ノーコードとローコードの違いを比較表の形でまとめました。
図1 ノーコードとローコードの比較
市場でノーコードが注目される背景には、大きく3つのポイントがあります。
ノーコード手法を導入して開発を行う主なメリットは以下のとおりです。
1.開発期間を大幅に短縮できる
2.開発コストを削減できる
3.非IT人材でも開発に参加できる
4.業務変化に柔軟に対応でき、改善サイクルを回しやすい
5.現場主体の内製化が進み、DX推進が加速する
6.操作が直感的で、導入ハードルが低い
7.小規模でも始められ、スモールスタートが可能
なかでも重要な1~3について、以下でもう少し詳しく解説します。
ノーコードを導入すると、画面設計やデータ連携など多くの作業がドラッグ&ドロップの操作で実現でき、構築からテストまでのリードタイムを大幅に短縮できます。
たとえば、従来型のプログラミングを要する開発では半年から1年かかっていた業務アプリケーションが、ノーコード/ローコードツールを利用することで2〜4週間で完成したという事例があります※1。要件変更に対しても迅速に対応できるため、常に改善を続けながら開発を進められます。現場担当者が自ら試作しながら調整できることで、従来型開発では起こりがちであった仕様確認の手戻りも減り、全体の納期遅延リスクも小さくなります。スピードが重視されるDX推進において、“とにかく作って試せる”ことは非常に大きなメリットといえます。
※1 出所 参考例)経済産業省 「gBizFORM」開発 https://gdx-times.com/knowledge-no-code-low-code/
ノーコードは外注に頼らず内製化できるため、開発コストの大部分を占める人件費や外注費を大幅に削減できます。小規模な業務アプリケーションでも、従来は数百万円規模の外注費が発生していましたが※2、ノーコードで内製すれば費用がかかっても、数十万円以下ですむ可能性があります。また、導入後の改修も自社担当者で対応できます。投資対効果の観点でも、短期間で成果が出やすく、改善の積み上げにより効果を拡大しやすい点が強みです。限られた予算の中で多くの業務改善を実現したい企業にとって、持続的なコスト最適化につながる選択肢といえます。
※2 出所:https://pentagon.tokyo/app/1997/
ノーコードは、プログラミング知識がなくてもアプリケーション開発に参加できるため、事業部門が自ら業務改善を進められます。実際に業務を理解している担当者が開発に関わることで、現場ニーズを的確に反映したシステムが短時間で整備され、利用者との認識齟齬も起きにくくなります。また、これまで開発を担ったり、開発会社との窓口役となっていたIT部門が全体のガバナンスに注力できるため、組織全体の生産性が高まります。従来はIT担当者不足でシステム化が進まないといった課題もありましたが、ノーコードなら誰もが開発に参加できる状態を作り出し、企業内のDXを大きく推進します。
しかし、ノーコードにもデメリットがあります。主なデメリットは次のとおりです。
1.開発の自由度に制限がある
2.大規模開発には不向き
3.プラットフォーム依存リスクがあり、利用できる機能がツールの仕様に依る
4.複雑な業務ロジックの実装は難しい
5.ノーコードといえど開発者に一定の設計・運用知識が必要
6.開発参加の敷居が下がるため、権限管理や情報ガバナンスが甘くなる可能性がある
なかでも重要な1と2について、以下でもう少し詳しく解説します。
ノーコードは、あらかじめ用意された部品や設定項目を組み合わせてアプリケーションを作る手法であるため、どうしても開発の自由度には制限があります。画面レイアウトや処理ロジックは多くの場合ツール側の想定の範囲内でしか組み立てられず、「ここだけ独自のアルゴリズムを組み入れたい」「既存システムと連携したい」といったニーズには対応しにくくなります。その結果、要件をツールに合わせて妥協せざるを得ない場面も出てきます。また、ツールのアップデート方針や機能追加のタイミングもベンダー側に依存するため、自社の思いどおりに機能拡張できないこともあります。
ノーコードが大規模開発に不向きとされる理由は、アーキテクチャ上の制約に起因しています。まず、処理性能やデータ容量、同時接続数などの拡張性はツール側の仕様に大きく依存するため、負荷増大に応じたチューニングを自社で行うことが困難です。また、ノーコードは画面操作を中心とした設計手法であるため、業務ルールが複雑になるほど実装が視覚的に把握しにくくなり、保守性が急速に低下します。さらに、外部システムとの連携方式は標準提供される機能に制限されるため、基幹系や複数のシステムを統合するような構成は実現が難しくなります。品質管理の面でも、コードレビューやバージョン管理、テスト自動化といった開発工程を十分に組みこみにくく、大規模プロジェクトに不可欠なガバナンスを保つのが困難です。
それでは、ノーコードツール導入で成功するためには、どのような観点で選ぶのがよいでしょうか。主なポイントは次のとおりです。
1.利用目的に合わせて選ぶ
2.料金体系で選ぶ
3.サポート体制で選ぶ
4.連携機能で選ぶ
5.UI/UXのわかりやすさで選ぶ
6.拡張性・パフォーマンスで選ぶ
7.セキュリティ機能の充実度で選ぶ
8.ガバナンス機能の充実度で選ぶ
9.利用実績やコミュニティの充実度で選ぶ
なかでも重要な1と2について、以下でもう少し詳しく解説します。
ノーコードツールは「何を実現したいか」によって選ぶべきツールが変わります。たとえば、Webサイト制作に適したツールは、デザインの自由度が高く、画像やアニメーション表現を柔軟に扱える一方、業務の自動化やデータ管理の機能は限定的なことがあります。逆に業務アプリケーション開発に強いツールは、データベース連携やワークフロー機能が充実しており、日報管理や申請業務などの業務効率化に向いています。また、CRMや会計システムなど既存サービスとの連携が鍵となる場合は、API対応や外部サービス接続のしくみの充実したツールを選定した方がよいでしょう。つまり、Web制作、業務アプリケーション、データ連携など、自社の具体的な用途を最初に明確にした上で、それに最適な特性を持つツールを選ぶことです。
ノーコードツールは料金体系が多様です。無料プランは試用や小規模利用に便利ですが、機能制限やブランドロゴ表示が残る場合があります。一方、従量課金モデルは、利用者数やアプリケーション数、実行処理量に応じて費用が変動するため、スモールスタートではコストを抑えやすいですが、活用が広がるほど費用がかさんでいきます。固定料金モデルのツールもあります。こちらは予算が立てやすいという側面はありますが、契約金額が高めに設定される傾向があります。さらに保守費用や追加機能の課金など、ランニングコストに関わる部分もあるため、自社の利用スタイルに合ったものを総合的に判断することが重要です。
すでにノーコードツールを使ったアプリケーション開発実績は多数存在します。
A社は、自社サイトの制作・運用をノーコードツールに切り替え、外注中心だったWeb制作を内製化しました。その結果、サイトのコンバージョン率が向上し、制作コストも大幅に削減できました。さらに、社内のWebデザインスキルが底上げされ、マーケティング施策をスピーディに試せる体制づくりにもつながっています。
出所:https://studio.design/ja/customer-story/benesse
B市役所では、パッケージシステム導入を検討していましたが、最終的に職員がノーコードツールで独自に業務アプリケーションを開発することを選びました。資料作成や問い合わせ対応など、紙と電話中心だったプロセスをアプリケーション化し、結果として大きな導入コスト削減と作業時間削減に成功しています。
出所:https://ascii.jp/elem/000/004/161/4161956/
C社では、通販サイト4社へ商品情報を毎日更新して提供するため、基幹システムからのデータ抽出とExcel加工に多大な負荷を抱えていました。そこでデータ連携のためのノーコードツールを導入し、20 万件のデータをわずか2分で処理できる高速処理を実現しました。更新回数も1日1回から4回に増やし、商品情報の精度を向上。担当業務はシステム化され、営業所担当者はコンテンツ充実など本来業務に専念できるようになっています。
ノーコード開発は今後、プログラミング不要でアプリケーションが作れる便利な道具という段階を超え、長期的には企業のデジタル基盤の一部として存在感を高めていくと考えられます。まず、DX推進の潮流の中で、現場が自ら業務改善を行える内製化のしくみは今後さらに重要性が増します。変化の激しい市場において、要件を即時に反映し改善サイクルを高速で回すために、ノーコードは欠かせない開発アプローチとなるでしょう。また、AI技術の進展により、画面設計やワークフロー生成をAIが支援し、自然言語による開発が一般化することで、非エンジニアでもより高度なアプリケーションを構築できる未来が来ると考えられます。さらに、企業のデータ活用が深化する中で、ノーコードがデータ連携や自動化の入口として機能する機会も増えていきます。ただし、大規模システムやミッションクリティカル領域との適切な役割分担は、いぜん存在することでしょう。結果として、ノーコードは補助的な便利ツールから、企業変革を支える戦略的な開発基盤の一つへと、歩を進めていくと推測できます。
ここまでノーコードという開発手法についてみてきました。ノーコードは、プログラミング不要でアプリケーションを開発できる手法で、ドラッグ&ドロップ操作により現場主体で迅速な業務改善を可能にします。DX推進やIT人材不足を背景に注目が高まっており、開発期間短縮やコスト削減、非IT人材の活用の施策として期待されています。その一方で、自由度の制限や大規模開発への不向きといった課題もあります。導入成功のカギを握るのは用途や料金体系の見極めで、今後はAI支援の高度化などを追い風に、企業の開発基盤の一手法として役割が拡大していくものと思われます。
ノーコード開発者の平均年収は、スキルレベルや経験、雇用形態によって異なります。正社員の場合、初級で年収300万~400万円程度とされています。フリーランスの場合は、スキルと経験次第ですが、年収1,000万円を超える可能性もあるとされています。
無料のノーコードツールはたくさんあります。ただし、無料プランでは作成できるアプリケーション数や使える機能、利用できるユーザー数などに制限があるケースが大半です。トライアルならそれで十分なこともありますが、本格的に利用する段になると、機能やサポートが備わった有料プランへの移行が必要になるでしょう。
EDI × iPaaS クラウド型データ連携プラットフォーム「ACMS Cloud」
エンタープライズ・データ連携プラットフォーム「ACMS Apex」
データ ハンドリング プラットフォーム「RACCOON」