データ活用・データ連携のお役立ちコラム
データ活用・データ連携のお役立ちコラム
サイロ化という言葉をご存じでしょうか。これは、組織やシステム、データが縦割りに分断され、連携できなくなる状態をさします。気づかないうちに非効率が蓄積し、意思決定の遅れや顧客体験の低下を招く深刻な課題です。本記事では、サイロ化の原因、企業にもたらす影響、解消によって得られるメリットを体系的に解説します。さらに、サイロ化の種類別解消法やサイロ化解消を実践する際のポイントもわかりやすくまとめています。組織の生産性向上に役立つ改善策を知る一助としてお役立てください。
サイロ化とは、組織内の諸資源が連携せず、独立して動いてしまう状態をさします。これにより全体最適が妨げられ、非効率や業務の重複が生まれます。サイロ化の語源は穀物を貯蔵するサイロで、周囲から切り離された縦に細長い容器になぞらえ、それらが林立することで、組織が孤立して縦割り化する様子を表したものです。似た言葉に「タコつぼ現象」がありますが、こちらが個人や集団の心理や行動に焦点を当て、狭い価値観や領域に閉じこもってしまう状態であるのに対して、サイロ化は分断されるがために、連携したくてもできない状態を表現しています。
具体的に、サイロ化には3つの種類があります。
1.組織のサイロ化
2.システムのサイロ化
3.データのサイロ化
それぞれ以下で詳しく解説します。
これは、部署やチームが互いに情報を共有せず、目的がバラバラのまま独立的に動いてしまう状態をさします。たとえば、営業部門が顧客情報を独自に管理し、マーケティング部門も別のツールでキャンペーン情報を管理しているとなると、顧客の行動データが統合されず、施策が噛み合いません。このようなケースがサイロ化に当たります。総務、経理、人事などバックオフィス部門でも、それぞれが自分たちの基準で業務を最適化すると、組織全体で見ると非効率が生じることがあります。具体的に、重複作業や意思決定の遅れなどが発生し、企業として望ましくない状況に陥ってしまいます。
企業内で導入されている複数のITシステムが互いに連携しておらず、業務フローが断絶している状態、それがシステムのサイロ化です。たとえば、販売管理システムと在庫管理システムが連携していないと、注文が入っても自動で在庫が反映されず、担当者が二重入力せざるを得なくなります。また、部署ごとに異なるクラウドサービスを個別最適で導入した結果、ログイン方法や画面仕様が異なるために、ユーザーの負担や運用負荷が増すケースもあります。このようなシステムのサイロ化によって、情報の正確性を損なうなど、企業全体のIT運用が非効率化します。
データのサイロ化というのは、企業内のデータが部署やシステムごとに分断され、統合的に活用できない状態です。たとえば、顧客データはCRMに、購買履歴はECシステムに、サポート履歴はコールセンターの管理ツールに分かれてしまっていると、顧客を360度で把握できなくなります。データがつながらないことで、分析の精度が低下したり、AI活用の効果が限定的になったりもします。また、同じデータが複数の場所で別々に更新されると、どれが最新かわからなくなり、意思決定の質にも影響します。データのサイロ化が解消されないと、企業はデータドリブン経営や高度な分析施策を実践することができません。
サイロ化はさまざまな原因で発生しますが、主なものとして次のようなポイントが挙げられます。
1.縦割りの組織文化
2.個別システムの設計・導入
3.部署の業務プロセスに最適化
4.多様化しすぎたコミュニケーション・文化
5.いきすぎたマネジメント
6.制度・評価が個別最適
7.人材・スキルの固定化
8.M&Aなどの外部要因
なかでも重要な1~3について、以下でもう少し詳しく解説します。
縦割りの組織文化は、サイロ化が生まれる典型的な要因です。営業、マーケティング、開発、サポートといった部署が、それぞれ独自の目標や評価基準で業務を進めると、部門間の情報共有は「自分の成果に直接関係しないもの」と捉えられがちです。たとえば、営業部門が顧客の不満情報を自部門内で管理し、サポート部門へ共有しない状況では、顧客対応の質が下がってしまいます。また、部門ごとの慣習や価値観が強すぎると、他部門の意見を取り入れられないため、協働による全体最適化が進みません。こうした縦割り文化が定着してしまうと、組織は自然とサイロ化し、意思決定スピードや競争力が低下します。
部門単位で個別にシステムを導入することも、サイロ化の大きな要因です。たとえば、営業部とマーケティング部がそれぞれ異なるCRMを導入してしまうと、同じ顧客に関する情報が複数のシステムに分散してしまい、統合的に分析できません。また、経費精算システムと会計システムが連携していない企業では、ユーザーが同じ入力作業を繰り返すことになります。部門ごとの個別最適を目的に導入されたシステムが、結果として組織全体の非効率を招くケースは少なくありません。さらに、システム同士の連携が考慮されていないと、データ形式や管理方法が統一されず、後に統合基盤を構築する際に大きな手間やコストが発生します。
部署ごとに業務プロセスが独自進化してしまうこともサイロ化の原因です。たとえば、経理部門は厳密な承認フローを重視する一方、営業部門はスピード優先で非公式な手順で案件管理を進めてしまうとなると、両者のプロセスは噛み合いません。結果として、見積書や契約書の確認に時間がかかり、案件進行が遅れることがあります。また、長年の慣習で使われてきたExcel台帳が部門内で暗黙の標準として使われると、他部署からは内容が理解しにくく、データの再加工が必要になります。このように、部署に合わせた業務プロセスは短期的によいように見えますが、全社的な標準化や効率化を阻む壁となり、部門間連携を難しくしてしまいます。
サイロ化は、組織の随所に深刻な問題をもたらします。その主なものとして次のようなポイントが挙げられます。
1.業務効率が低下する
2.情報・データがつながらず全体像が見えなくなる
3.意思決定が遅れる
4.部門間の壁が強まり協働が難しくなる
5.顧客対応の一貫性が失われ、サービス品質が低下する
6.組織学習が進まず成長力が落ちる
7.市場変化に対応できず、競争力が低下する
なかでも重要な1~3について、以下でもう少し詳しく解説します。
サイロ化が進むと部門ごとに業務フローやルールが独自進化し、連携時に齟齬が生まれて業務効率が大きく低下します。たとえば、営業部門は案件をExcelで管理しているのに、バックオフィス部門は別の管理ツールを使っているという場合、毎回相互の情報の突合が必要で、データの再入力が求められるケースも発生するでしょう。また、トラブル対応でも部門間の情報共有が不十分なため、顧客対応が二度手間になったり、確認作業が増えたりします。結果として無駄な業務が蓄積し、本来注力すべき価値創造活動の時間が削られます。サイロ化は気づかないうちに企業内に非効率さを生み出し、全体の生産性を押し下げる要因となります。
サイロ化によりデータが部門単位で分断されると、企業は全体像を正確に把握できなくなります。たとえば、顧客データがCRM、購買履歴がECシステム、問い合わせ履歴がコールセンターのツールに分かれて保存されている場合、顧客を包括的に理解することができず、適切なマーケティング施策が立てられません。結果的に、施策は的の外れたものになってしまい、成果を挙げることが難しくなります。また、データがつながらない状態ではAI活用も限定的かつ不正確なものとなり、企業全体でデータドリブン経営を進めていくのに大きな壁となって立ちはだかります。
サイロ化が進むと必要な情報がタイムリーに集まらず、意思決定のスピードが低下します。たとえば、新規商品の需要予測を行う際、営業部とマーケティング部が異なる調査データをそれぞれ保持しているとなれば、その後の判断に迷いや遅れが生じます。また、トラブル発生時にも関連情報が部署ごとに散在していると、原因特定に時間がかかり、対応が後手に回ってしまいます。経営層が必要な情報を横断的に取得できない状況では、戦略判断の精度も低下します。結果として、変化の激しい市場で競争力を維持することが難しくなります。
サイロ化が発生しているのなら、それは解消するべき経営課題といえます。サイロ化を解消することでのメリットには、以下のようなポイントがあります。
1.業務効率化が実現できる
2.データの価値が高められる
3.組織の意思決定スピードが向上する
4,顧客体験(CX)が向上する
5.イノベーションが生まれやすくなる
6.組織文化がオープンになり、協働が進む
7.システムの運用管理がスマート化する
8.企業経営が進めやすくなる
なかでも重要な1~3について、以下でもう少し詳しく解説します。
サイロ化を解消すると、部門間で情報や業務フローが共有され、全社レベルでの効率化が進みます。たとえば、営業部が案件をExcelで管理し、経理部が別のシステムで請求情報を管理している場合、両者が連携していないために毎月の請求処理で二重確認や再入力が必要でした。しかし、データ連携基盤を整えて情報を一元化すると、受注から請求までの処理が自動化され、人的ミスも削減できます。また、トラブル発生時にも関係部署が組織横断的に即座に状況を把握できるため、対応時間が大幅に短縮されます。全体最適の観点を持った効率化は、作業負荷の軽減だけでなく、企業全体の生産性向上につながります。
サイロ化を解消することで、分断されていたデータが一つにつながり、その価値を最大限に引き出せるようになります。CRMに保存された顧客の属性データ、ECシステムにある購買履歴、サポート部門が持つ問い合わせ履歴が統合されると、顧客の全体像が正しく描き出せ、最適な商品提案やサービス改善が可能になります。また、データの不整合が解消されることで分析の精度が高まり、AIを使った需要予測や離反検知など高度な活用も進みます。複数システムに散在したデータを統合することは、データドリブン経営を実現する上で不可欠の条件といえます。
サイロ化が解消されると、必要な情報を各部門がリアルタイムで共有できるため、意思決定のスピードが大きく向上します。新商品の需要予測で、営業部が持つ現場の声、マーケティング部門が保有するキャンペーン効果データ、生産部門の在庫状況が統合されれば、判断に迷いがなくなり、迅速に販売計画を立てられます。また、トラブル対応でも情報が分散していないため、原因特定が早まり、経営層への報告や対策の決定もスムーズです。市場変化が激しい現在、スピーディーな意思決定は競争優位を確保するための非常に重要な要素となります。
サイロ化はその種類ごとに適切な解消法が存在します。以下でその代表的な例をご紹介します。
組織のサイロ化を解消するには、部門間のコミュニケーションと協働のしくみを意図的に設計することが重要です。たとえば、営業・マーケティング・開発の担当者を交えた「部門横断チーム」を設置し、製品改善や顧客対応を共同で進めると、情報や価値観が自然に共有されやすくなります。さらに、部門ごとの独立したKPIではなく、全社最適を重視した共通KPIを設定することで、成果を部門間でつなげて評価できます。定例の情報共有会議や、他部署への短期ローテーションも有効です。組織文化として「自部門だけで完結させない」姿勢を育てることが重要です。
システムのサイロ化の場合、まず既存システムの構造とデータ連携状況を整理し、全体アーキテクチャを可視化することが出発点になります。そのうえで、API連携やiPaaS(Integration Platform as a Service)を用いて、部門別に運用されているシステム同士をつなげることが効果的です。たとえば、営業部のCRMと在庫管理システムが連携すれば、受注時に在庫数が自動反映され、欠品リスクを低減できます。また、部署ごとにバラバラにクラウドサービスを導入していた場合でも、シングルサインオンやログ管理の統合を実現することで、運用負荷を減らし、安全性を高められます。
データのサイロ化を解消するには、まずデータの所在と形式を棚卸しし、どの部門がどの情報を持っているのかを明確にする必要があります。そのうえで、DWH(データウェアハウス)やデータレイクなどの統合基盤を構築し、そこへ分散しているデータを一元的に集約します。たとえば、製造現場の設備稼働データ、品質検査の結果データ、保全部門が持つ点検履歴が統合されると、不良発生の兆候を早期に把握でき、生産計画や保全計画の最適化が進みます。また、データ定義の標準化やガバナンスルールを整備することで、部門ごとに異なる更新ルールやフォーマットの乱立を防げます。統合後はBIツールやAI分析と組み合わせ、データ価値を最大化します。
サイロ化を解消するときには、いくつか留意すべきポイントがあります。主なものは以下のとおりです。
1.部門間の人材交流を促進する
2.データ統合の仕組みを構築する
3.業務プロセスを根本から見直す
4.システム全体のあり方を考える
5.文化・コミュニケーションを活性化させる
6.評価制度・運用ルールを見直す
7.経営・推進体制をあらためる
なかでも重要な1と2について、以下でもう少し詳しく解説します。
サイロ化を解消するうえで、部門間の人材交流は極めて効果的です。部署ごとに業務や価値観が固まってしまうと、他部門の状況を理解しようという姿勢がなくなり、協働が進まないからです。たとえば、営業担当者がその後マーケティングを担当すれば、営業現場の生の意見がマーケティング施策に反映され、顧客へのアプローチ方法が変わるかもしれません。また、開発部のメンバーがサポート業務を体験すれば、さらにユーザー理解が深まり、製品・サービスの改善につながるケースもあります。さらに、部門横断プロジェクトも重要です。人が交わることで情報と知識が自然に交流し、部署間の壁が低くなり、組織全体での課題解決が進みやすくなります。
データ統合の仕組みを構築することは、サイロ化解消において必須の取り組みです。部門ごとにデータが散在している状態では、全社的な判断ができず、業務の連携も進みません。まず、どの部門がどのデータを保有し、どの形式で管理しているかを棚卸しすることが重要です。その上で、データウェアハウス(DWH)やデータレイクなどの統合基盤を構築し、データを一ヵ所に集約します。たとえば、人事部が管理する人事情報と、事業部門が管理する人材のスキル情報などが統合されれば、業務に最適な人材を割り当てられるタレント管理が実現します。ここでは、データの形式や更新ルールを標準化するデータガバナンスを整備することも不可欠です。
今回はサイロ化について解説しました。これは、組織・システム・データが部門ごとに分断され、連携できなくなる状態であり、サイロ化によって業務効率の低下、データの断絶による全体把握の困難化、意思決定の遅れなど、企業の競争力を損なう問題が生じます。主な原因は縦割りの組織文化、個別最適で導入されたシステム、部署ごとに独自進化した業務プロセスです。サイロ化を解消するには、部門間の協働促進、データ統合基盤の整備、全社最適を前提としたしくみづくりが非常に重要です。
サイロ化の反対語としてよく用いられるのは、「連携」「統合」「横断化」などといった表現です。これらの用語は、業務プロセスやシステム、データの統合と一元管理を意味しています。
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