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自治体情報システム標準化の対象となる20業務とは?背景やメリット、課題を解説

最終更新日:2023/08/31 自治体情報システム標準化の対象となる20業務とは?背景やメリット、課題を解説

「誰一人取り残されないデジタル社会」を実現するために、今、自治体情報システムの統一・標準化という取り組みが進行しています。対象となっているのは基幹業務 20業務(当初は17業務であったが後に「戸籍」「戸籍附票」「印鑑登録」が追加され、20業務となる)。「デジタル・ガバメント実行計画」では、2025年度中に約1,700の地方公共団体すべてがシステム移行を完了することを義務づけています。一体、ここに到る背景にはどのようなものがあり、実現によって誰がどのようなメリットを得るのでしょうか。本稿では、カウントダウンが始まりつつある自治体情報システム統一・標準化の内実に迫ります。

INDEX

  1. 自治体情報システム標準化とは
  2. システム標準化で対象となる20業務とは?
  3. システム標準化はなぜ必要?
  4. システム標準化によるメリット
  5. システム移行における課題
  6. RACCOONによりシステム標準化をサポート
  7. まとめ

自治体情報システム標準化とは

現在、総務省・デジタル庁などが中心となって「デジタル社会に必要な共通機能の整備・普及」という政策を進めています。これは、「誰一人取り残されないデジタル社会」の実現のために推進されている取り組みです。その主な分野として「マイナンバー(個人番号)制度」「公金受取口座登録制度」「GビズID」「電子署名」「電子委任状」「ガバメントクラウド」「ガバメントソリューションサービス(ガバメントネットワークの整備)」「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」「サイバーセキュリティ」「データ戦略」「DFFT(Data Free Flow with Trust:信頼性のある自由なデータ流通)」があります。自治体情報システム標準化とは、正式にはこの中の「地方公共団体の基幹業務システムの統一・標準化」に当たります。
実際、統一・標準化が進んでいなかったために、新型コロナウイルス感染症への対応ではさまざまな課題が明らかになりました。具体的には、国や地方公共団体の基幹業務システムがバラバラで十分に連携体制が取れていない、マイナンバーなどのデジタル基盤に関する制度や手続きの管掌が複数の省庁に分散している、各省庁単位では監督している業界を対象にデータ利活用を進めていたが省庁横断的な発想に基づいていない、などといったことがあります。そのため、非効率な手続きが余儀なくされるとともに、システムトラブルなども発生。代表的な例として、特別定額給付金の支給が後手後手になったことは、皆さんもよくご記憶のことだと思います。
こうした事態を受けて、総務省・デジタル庁では現在、自治体情報システム標準化実現の時間的なゴールを設定した上で、その要件や法律の整備を行っています。また、ガバメントクラウド構築も推進しています。これは、政府共通で利用するクラウドサービスです。クラウドを基盤とすることで、迅速で柔軟、さらにセキュアでコスト効率も高いシステムを構築することが可能になります。ここで目指されているのは、利用者にとって利便性の高いサービスをいち早く提供すること、そして、そのために改善を続けていくこと。地方公共団体においてもこれらの利点が同様に享受できるよう検討されています。
「デジタル・ガバメント実行計画」(図1)の下で発表された「自治体DX推進計画」においても、6つの重点取り組み事項の1番目に「自治体の情報システムの標準化・共通化」が挙げられており、地方公共団体や自治体システムベンダーにとって、もはや対応は待ったなしの状況になっています。


図1 自治体の情報システムの標準化・共通化のスケジュール

図1 自治体の情報システムの標準化・共通化のスケジュール
(総務省. 自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画. 令和2年12月25日,
https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/2020_dg_all.pdf, 参照p17)

システム標準化で対象となる20業務とは?

しかし、一口に自治体情報システムといっても、地方公共団体ではさまざまな業務を行っています。今回の統一・標準化で対象になる業務にはどのようなものがあるのでしょうか。 2021年2月に閣議決定された、「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律案」に挙げられているのは以下の17業務です。

住民基本台帳関連業務

1. 住民基本台帳:氏名、生年月日、住所などが記載された住民票を編成したシステム 2. 国民年金:日本在住の20歳以上60歳未満の住民が加入する公的年金に関するシステム 3. 選挙人名簿管理:選挙資格を持つ住民を選挙人として名簿管理するシステム

税関連業務

4. 固定資産税:土地、家屋および償却資産にかかる税金に関わる業務管理システム 5. 個人住民税:住民に対する行政サービスにかかる税金に関わる業務管理システム 6. 法人住民税:法人に対する行政サービスにかかる税金に関わる業務管理システム 7. 軽自動車税:軽自動車などの所有者に課せられる税金に関わる業務管理システム

国民健康保険関連業務

8. 国民健康保険:他の医療保険に加入していない住民を対象とした医療保険システム

障害者福祉関連業務

9. 障害者福祉:障害者総合支援法に基づく業務管理システム

介護福祉関連業務

10. 後期高齢者医療:後期高齢者医療制度に基づく業務管理システム 11. 介護保険:介護保険制度に基づく業務管理システム

児童/子育て支援関連業務

12. 児童手当:児童手当制度に基づく業務管理システム 13. 児童扶養手当:児童扶養手当の支給事務に関する業務管理システム 14. 子ども・子育て支援:子ども子育て支援制度に基づく業務管理システム

その他業務

15. 生活保護:生活保護行政のための業務管理システム 16. 健康管理:住民の健康管理に関わる保健事業のための業務管理システム 17. 就学:児童・生徒の学齢簿や就学援助の申請・給付に関する業務管理システム

上記に加えて、2022年1月には以下の3業務も加わりました。

戸籍関連業務

18. 戸籍:戸籍の管理を行うシステム 19. 戸籍附票:戸籍作成以後の住民票変遷情報を管理するシステム

その他業務

20. 印鑑登録:印鑑による本人証明制度に基づく情報管理システム

以上20業務に関して、特例を除き、図1にもあるとおり、原則として2025年度末までに地方公共団体には標準化されたシステムの導入を完了することが義務づけられています。

システム標準化はなぜ必要?

なぜ自治体システムの統一・標準化が求められているのでしょうか。それは、既存のシステムが地方公共団体で個別にカスタマイズされて活用されている実状があるからです。その理由はさまざまです。住民サービスの維持・向上などの観点でパッケージシステムにもともと用意されている機能では不十分だと判断して行うこともあれば、地域の風土や組織の規模・権限に特殊性があって変えざるを得ない場合もあります。
しかし、その結果、制度改正などで改修が必要になったとき、そのつど地方公共団体が個別対応を行っており、ここに大きな負担がかかっています。
また現在、政府はクラウドファーストを掲げていますが、地方公共団体ごとのこうした差異がネックになって、クラウドによる共同利用も円滑に進みません。
何より、システムがバラバラだと、住民サービスを向上させるための施策を迅速に全国へ普及させることが難しくなります。このままでは、その恩恵を早く享受できる地域もあれば、しばらく待たなければならない地域もあるということになり、まだらな状況になってしまいます。そもそもデジタル社会でめざすビジョンが、「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」であることを考えると、もはや後回しにすることはできない重点課題なのです。

システム標準化によるメリット

システムを統一・標準化することによって得られるメリットは明らかです。ここでは4つのポイントを挙げたいと思います。

1. 行政運営の効率化

統一・標準化の過程では、必然的に業務の見直しが行われます。これまで習慣的に行ってきた手続きがほんとうに不可欠なものなのかどうか、大きく判断のメスが入ることになります。基本的には簡略化の方向に向かうものと思われ、そこではベストプラクティスの適用も行われるでしょう。場合によっては自動化などテクノロジーを活用できる領域もあるかもしれません。これらによって、行政運営は飛躍的な効率向上が図れます。ただし、地方公共団体は一様ではないため、規模やその特性によって統一・標準化のパターンが複数生じる可能性はあります。
また、カスタマイズを施していないシステムならば、制度改正時の改修も容易であり、その結果をすぐに業務に反映させることができます。新型コロナウイルス感染症の発生以降、政府の新しい指針が公表されるたびに地方公共団体は迅速な対応が求められましたが、統一・標準化されたシステムの下であれば、このような変化の連続に追随しやすくなります。

2. 住民サービス・住民の利便性の向上

行政運営が効率化するということは、すなわち住民サービスや住民の利便性が向上することにつながります。提出しなければならない書類の枚数や、役所に出向かなければ受理されない書類が減ったり、申請が受理された後の交付や通知、決定までの日数が短縮されたりするということになれば、住民の日常生活が大きく前進します。

3. システム間の互換性確保

統一・標準化された情報システム間では、データ連携、システム連携も容易になります。たとえば関連業務間でうまくデータ連携が行えれば、それぞれでデータをメンテナンスするような二重管理を行うことなく、システムをよりシンプルに保つことができます。システム連携という観点では、関連業務をまたがる事務処理を1つのトランザクションで完了するといったことも可能になります。これはまた、地方公共団体をまたいだ連携を実現したり、全国ベースのデータ比較やデータ分析を行ったりする上でも有益です。

4. コスト削減・ベンダーロックインの解消

システムの統一・標準化が実現できれば、制度改正のたびに生じていたカスタマイズ費用が不要になり、地方公共団体のICT予算をもっと有意義に活用することができます。さらに、固有のカスタマイズノウハウを有しているため頼らざるを得ない、といったベンダーロックインも解消でき、パッケージを検討する際の選択肢が広がります。

システム移行における課題

多方面でメリットが得られる自治体情報システム統一・標準化ですが、実現に当たっては乗り越えるべき課題も存在します。
1つは、時間が限られていることです。「デジタル・ガバメント実行計画」でもわかるとおり、システム移行の目標時期は2025年度末とされており、それまでに既存のシステムを標準化システムに移行しなければなりません。すでに現時点で2022年は過ぎようとしており、実質3年で20業務を移しきるというのはなかなか難しいプロジェクトです。しかも、データ/システム連携、データ活用を考えれば、全国約1,700の地方公共団体が揃って目標時期までにゴールを迎える必要があり、その点でもさらに難易度が上がります。
もう1つは、デジタル庁から発表された標準仕様書では、地方公共団体の規模や特性は特に考慮されていないことです。そのため、実際に適用するためにはどうしても調整が必要になります。また、システム移行の過程で業務の見直しができると前述しましたが、逆に言えば業務の見直しをしなければならないということでもあります。これを負担にとらえる向きもあります。
地方公共団体の中には、人材的に、また財政的に、このプロジェクトにリソースを割きづらいというところもあり、果たして2025年度末までのシステム移行がほんとうに実現可能なのかと危ぶむ声も聞こえています。

RACCOONによりシステム標準化をサポート

こうした中、データ・アプリケーションでは、自治体情報システムの統一・標準化を強力にサポートできるソリューションを提供しています。データ ハンドリング プラットフォーム「RACCOON(ラクーン)」がそれで、システム移行時に必ず発生するデータ移行をノンプログラミングで実現します。その際、複数の入出力データをM対Nで扱えるだけでなく、文字コードやフォーマットの変換、ソート、マージ、ファイル統合や分割といったデータ加工も同時に行えます。データ移行に関わるシステム開発が不要になり、システム移行プロセスを大幅に短縮可能です。

図2 データ ハンドリング プラットフォーム「RACCOON」

図2 データ ハンドリング プラットフォーム「RACCOON」

「RACCOON」の有用性は、すでにさまざまな導入事例で実証済みです。たとえば、地方公共団体である明石市役所では、メインフレームで稼働していた国民健康保健システムをオープンシステム上の標準システムに移行する際、このソリューションを採用しました。2つのシステムは文字コード体系がまったく異なるにも関わらず、数千万件ものデータボリュームを13時間ほどで、しかも一般的なWindows PC環境で変換を実現してしまいました。
明石市役所 導入事例 https://www.dal.co.jp/casestudies/39akashicity/

一方、金融機関である楽天カードは、メインフレームで稼働していた基幹業務システムをオープン系テクノロジーで再構築する際に、データ移行の壁に直面しました。文字コード変換を含め、移すデータは合計でTB級。データ移行はシステム移行の一部であり、そこに多大な時間や工数はかけられません。そこで着目したのが「RACCOON」で、24時間という限られた時間の中、クラウド環境も活用して200セッション同時実行という高多重度でデータ移行を敢行。その結果、最大サイズ約2TBのデータを含む数TBのメインフレームデータの移行を16時間で完了することができたのです。
楽天カード株式会社 導入事例 https://www.dal.co.jp/casestudies/37rakuten/

地方公共団体関連では、公共・自治体向けパッケージ製品を提供するシナジーが、既存システムから同社パッケージへデータを移行するツールとして「RACCOON」を採用。このプロセスでのエンジニアの属人化を解消するとともに、生産性と利益率の向上を実現しました。
株式会社シナジー 導入事例 https://www.dal.co.jp/casestudies/45synergy/

まとめ

見てきたように、自治体情報システムの統一・標準化は、今後日本人が「誰一人取り残されないデジタル社会」で生きていくために、必要不可欠な取り組みといえます。その行く手には、迫るタイムリミット、プロジェクトとしての難易度の高さといった課題が横たわっていますが、実現のあかつきには、地方公共団体、そして住民の得られるメリットも多大です。データ・アプリケーションには、ここで力になれるソリューションがあります。何か検討事項が生じた際には、ぜひお気軽にお声がけください。

データ ハンドリング プラットフォーム「RACCOON」の詳しい機能はこちら >>>

この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

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経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。

  • 明石市役所

    メインフレームからオープン環境への国民健康保険システム移行
    PC1台で数千万件のデータ変換を13時間で可能としたRACCOON

  • 楽天カード株式会社

    数TBに上るメインフレームデータのオープン移行
    16時間でデータ変換を完了したRACCOON

  • 株式会社シナジー

    公共・自治体向けパッケージで生じるデータ移行プロセス
    RACCOON採用で属人化を解消、生産性と利益率が向上

  • 小泉産業株式会社

    EDIシステムの刷新をきっかけに
    ACMS Apex + RACCOONで、グループ全体のデータ連携基盤を実現

  • 株式会社カナデンブレイン

    基幹システム製品のクラウド化で求められたデータ移行工程の見直し
    RACCOONで精査が必要なデータを簡単かつ高品質に移す体制を確立

  • スズデン株式会社

    めざしたのは4通販サイトへのデータ提供の自動化
    RACCOON導入で情報の精度・スピードが一気に向上

  • ネスレ日本株式会社

    基幹EDIインフラをAS/400からAWSへ
    ACMS Apex、RACCOONが短期開発に貢献


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