データ活用・データ連携のお役立ちコラム

iPaaSとは? 機能やメリット、活用事例・おすすめのツールを紹介

最終更新日:2025/06/20 iPaaSとは? 機能やメリット、活用事例・おすすめのツールを紹介

iPaaSというクラウドサービスをご存じでしょうか。これは、異なるアプリケーションやシステム間のデータ統合や相互連携を簡単に行えるテクノロジーです。企業のデジタルシフト進展に伴い、近年大きな注目を浴びています。この記事では、iPaaSの概要とともに、似た用語との違い、導入メリット、選び方ポイントを紹介します。

INDEX

  1. iPaaS(アイパース)とは
  2. iPaaSの機能
  3. iPaaSとSaaS・PaaS・IaaSの違い
  4. iPaaSとRPAの違い
  5. iPaaSが求められる背景と市場規模
  6. iPaaSを導入するメリット
  7. iPaaSの種類
  8. iPaaSの活用例
  9. iPaaSの選び方ポイント
  10. iPaaSツールなら「ACMS Cloud」がおすすめ
  11. まとめ

iPaaS(アイパース)とは

iPaaS (Integration Platform as a Service) とは、異なるアプリケーションやシステム間のデータ統合や相互連携を簡単に行えるようにするための、クラウドベースのプラットフォームです。上に示したとおり、“アイパース”と読みます。これは、データの移動やプロセスの自動化を迅速かつ効率的に行えるように設計されています。iPaaSの必要性が認識され始めたのは2010年頃のことで、背景にはクラウドテクノロジーの台頭がありました。企業がオンプレミスからクラウドへの移行を進める過程で、多種多様なアプリケーションやシステム間のデータ連携に課題を抱えるようなっていきました。そうした中、ガートナーやIDCといった調査会社もその重要性を強調して積極的に発信、徐々に産業界での認知度が高まっています。

iPaaSの機能

iPaaSはさまざまな機能を有していますが、その中でも重要なのは「データの連携」「異なるシステム間の連携」「業務フローの連携」の3点です。

データの連携

さまざまなデータソースとの間で情報を収集・統合することができます。iPaaSを活用することによって、企業内に存在する複数システム間で円滑なデータ共有が可能になります。たとえば、マーケティングプラットフォームで獲得した顧客データを、営業部門が利用しているCRMシステムに送ることで、情報の整合性を保ちつつ効率的に業務を支援することができます。また、統合的な分析を行うために、データレイクやデータウェアハウスにデータを統合的に収集したいというときにも役に立ちます。こうしたデータ連携プロセスには、リアルタイムでのデータ同期や、データのクレンジング、また変換・加工といった機能も含まれます。その結果、データの鮮度を保ってスピーディーな業務の遂行が可能になります。確度高く、迅速な意思決定にも貢献します。

異なるサービス間の連携

データの連携は、データのみ連携させる機能ですが、iPaaSは異なるプラットフォームやアプリケーションを相互に接続し、連携させて動かすことも可能です。これこそ、iPaaSの核心となる機能といえます。異なるプロトコルやAPIを使用しているシステム間でも、共通のインターフェースを通じて変換を行うことで連携を実現します。これは、つなぎたいサービスが異なるクラウド上にあっても可能です。たとえば、在庫管理システムと発注管理システムをiPaaSで接続すれば、在庫レベルがしきい値に低下した際に、それを発注管理システム側に通知し、発注管理システム側で自動的に発注プロセスを開始する、といったしくみの構築も可能です。これにより、人に依存した業務を削減できるとともに、人為的ミスが減り、業務プロセス全体の効率化が図れます。

業務フローの連携

iPaaSは、単発の連携だけではなく、企業内の連続した業務フローを最適化する機能も備えています。異なるチームや部署が使用するツールをつなぐことで、横断的な業務プロセスの自動化と標準化を実現します。たとえば、次のような例が考えられます。顧客がオンラインストアで注文を確定すると、その情報を自動的にERPに送信します。ERPに登録された注文データは、iPaaSを通じて在庫管理システムと連携します。在庫が不足している場合、仕入れシステムに自動的に通知が送信されるため、追加の在庫発注が行えます。注文が処理されると、配送システムに情報が送信されます。配送ラベルの生成や発送スケジュールの調整がiPaaSによって自動化される、といった具合です。このような連携によって、業務のスピードを向上させるとともに、業務フローの可視化が可能となります。データ分析による業務改善を行いやすくなるのもメリットの一つです。

iPaaSとSaaS・PaaS・IaaSの違い

「〇aaS」という形で良く知られている用語に、SaaS、PaaS、IaaSといったものがあります。これらはクラウド上の環境という点では同じですが、それぞれ違いがあります。以下に、その概要と長所、短所を表形式でまとめました。

表1 iPaaS・SaaS・PaaS・IaaSの違い

名称 概要 長所 短所
iPaaS 正式名称はIntegration Platform as a Service)。異なるアプリケーションやシステム間のデータ統合や相互連携を簡単に行えるようにするための、クラウドベースのプラットフォームを指す。データの移動やプロセスの自動化を迅速かつ効率的に行えるように設計されている。 異なるシステム間のデータ共有がリアルタイムで可能になり、業務全体の効率化が実現できる。また、クラウドベースであるため、インフラ構築が不要でスピーディな導入が可能で、業務の成長や変化に合わせてリソースの調整も容易である。さらに、定型業務の自動化により、人的負担を軽減し、人為的ミスを削減できる。くわえて、統合されたデータを利用できることから、価値ある洞察を行える。 運用や設定に一定の技術が求められる場合がある。また、データがクラウド上に保存されるため、機密情報の保護には留意しなければならない。障害が発生すると、自社では解決できず、業務に影響を及ぼす可能性もある。
SaaS 正式名称はSoftware as a Service。インターネットを通じてソフトウェアを提供するサービスのことを意味する。 ユーザーは、自らソフトウェアのインストール作業を行うことなく利用に専念できる。また、ソフトウェアの管理が不要になり、常に最新のバージョンを利用可能というメリットもある。 標準化されたサービスであるため、カスタマイズ可能な範囲が限られていることがある。また、プロバイダー側のセキュリティが不十分な場合や、高度なサイバー攻撃が行われた場合は情報漏えいのリスクがある。さらに、障害発生時、復旧までの時間を自社でコントロールすることはできない。
PaaS 正式名称はPlatform as a Service。アプリケーション開発に必要なプラットフォームをクラウド上で提供するサービスを指す。 開発者が、サーバーやOSの管理をせずにプログラムの作成や実行が可能になる。また、開発のためのツールやフレームワークが提供されるため、カスタマイズされたアプリケーションを効率的に作成することができる。 アプリケーションやデータそのものは提供されない。また、最大限活用するには技術的な知識が必要であり、開発スキルのないユーザーにとっては使いづらい場合がある。
IaaS 正式名称はInfrastructure as a Service。クラウドサービスの一形態で、ユーザーが物理的なハードウェアを所有せずに、仮想化されたインフラを利用できるサービスを指す。 必要に応じてリソースをスケールアップまたはスケールダウンでき、急な需要の変化にも対応できる。また、新しいインフラが数分で設定・展開でき、運用を迅速化できる。さらに、ハードウェアのアップグレードやメンテナンスはプロバイダーが担当するため、IT管理の負荷が軽くなる。 基本的なインフラは提供されるものの、OSやアプリケーションのインストール、パッチ管理、セキュリティ設定などは利用者が行う必要がある。また、開発者が自分で環境を構築しなければならないため、時間と手間がかかる。
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iPaaSとRPAの違い

iPaaSと似た機能を有するテクノロジーにRPA (Robotic Process Automation)があります。iPaaSとRPAはどこが似ており、どこが違うのでしょうか。

RPA は、ソフトウェアロボットを使って、定型的な業務プロセスを自動化する技術です。特に手動の繰り返し作業を効率化することを得意としています。たとえば、データ入力、データ取得、請求書処理などが挙げられます。特定の業務を素早く自動化するのに適しています。ただし、複数のアプリケーションやサービス間の連携や統合は対象としていません。

これに対して、iPaaSは、異なるアプリケーションやシステムを連携という形でつなぎ、データの統合と共有を実現します。このとき、業務プロセスの一部を自動化することはできますが、操作の自動化そのものはスコープ外となります。

つまり、iPaaSはデータやサービスの連携による情報の統合・共有を主眼としており、RPAは自動化を強みとしているといえます。両者は競合しているのではなく、お互いを組み合わせることで、さらなる業務効率化が可能になります。

iPaaSが求められる背景と市場規模

現代にiPaaS が求められる理由は、デジタル化の急速な進展によって企業が課題に直面しており、これを解決したいからです。今日の企業は、さまざまなSaaSやクラウドサービスを利用するようになりました。ただ、これらを個別に利用すると、業務プロセスが断片化してしまい、同じデータを二重登録しなければならないなど生産性が低下する可能性があります。また、ビジネススピードが加速しており、迅速な意思決定と柔軟な業務運営が不可欠になっています。iPaaSによって、複数のシステムを簡単に接続させることで情報を効率的に流通させ、業務プロセスのスピードを上げたいという狙いもあります。さらに、これまで異なるシステム間の統合には多大なリソースとコストが必要で、IT部門の負担になっていました。専用テクノロジーを導入してこの業務から解放され、より本質的な業務に専念したいという目的もあります。
日本経済新聞が報じたデロイト トーマツ ミック経済研究所の2023年調査結果によると、業務iPaaS市場の2028年度までの年平均成長率は26.6%増で、2028年度売上高は256.1億円であると予測しています。ビジネス用途のiPaaSはエンドユーザ企業向けのみではなく、SaaSプロバイダーといった事業者向けiPaaSの需要拡大も見こまれています。

(出典:https://www.nikkei.com/article/DGXZRSP665940_V11C23A2000000/

iPaaSを導入するメリット

上記に挙げた企業課題を解決する上でも、iPaaSを導入するメリットは多数あります。以下に主要な項目を挙げてみました。

業務プロセスの自動化

iPaaS(Integration Platform as a Service)を導入することで、日常的に発生する定型業務やデータ転送、通知処理などのプロセスを自動化できます。これにより、従業員が手作業で行っていた煩雑な作業を削減し、業務効率が大幅に向上します。また、人為的なミスの発生リスクも低減され、品質の安定化にも寄与します。自動化によって生まれた時間を、より付加価値の高い業務に充てることが可能となり、組織全体の生産性向上が期待できます。

システム連携とリアルタイム同期

iPaaSは、異なるベンダーや技術基盤で構築されたアプリケーション同士をスムーズに連携させることができます。これにより、部門間で分断されていた情報をリアルタイムで統合・同期し、常に最新のデータに基づいた業務遂行が可能になります。情報の整合性が保たれることで、意思決定のスピードと正確性が向上し、ビジネスの俊敏性を高めることができます。特に複数のクラウドサービスを利用している企業にとっては、iPaaSの導入が大きな効果を発揮します。

クラウド基盤による迅速な導入とスケーラビリティ

iPaaSはクラウドベースで提供されるため、従来のオンプレミス型システムと比較して、導入までの期間が大幅に短縮されます。初期投資を抑えつつ、必要な機能をすぐに利用開始できる点が大きな魅力です。また、業務の成長や変化に応じて、柔軟にスケールアップ・スケールダウンが可能であり、ビジネスの変化に迅速に対応できます。これにより、企業は市場環境の変化に対しても柔軟かつ効率的に対応できる体制を構築できます。

コスト削減

iPaaSはクラウド上で稼働するため、物理的なサーバーやネットワーク機器の導入・保守が不要になります。これにより、インフラにかかる初期費用や運用コストを大幅に削減することが可能です。また、システム連携にかかる開発・保守工数も削減され、IT部門のリソースをより戦略的な業務に振り向けることができます。さらに、従量課金制の料金体系を採用しているサービスも多く、利用状況に応じた柔軟なコスト管理が可能です。

精度の高い分析能力の獲得

iPaaSを活用することで、複数の業務システムからリアルタイムでデータを収集・統合し、分析に活用することができます。これにより、常に最新かつ正確な情報に基づいた意思決定が可能となり、ビジネスの競争力を高めることができます。従来は手間と時間がかかっていたデータ収集・加工のプロセスを自動化することで、分析業務のスピードと精度が向上し、より深いインサイトを得ることが可能になります。

IT部門の負担軽減

iPaaSは、複雑なシステム連携やデータフローの設計・保守をノーコードまたはローコードで実現できるため、IT部門の作業負荷を大幅に軽減します。これにより、日常的なトラブル対応や保守作業に追われることなく、IT部門はより戦略的なプロジェクトやイノベーションの推進に集中できるようになります。また、業務部門でも簡単に連携フローを構築できるため、全社的なIT活用の促進にもつながります。

iPaaSの種類

iPaaSをタイプに着目して分類すると、以下のように分けることができます。

データ統合に強みを持つタイプ
データの変換や同期、分散データの統合をサポートする機能に強みを持ちます。たとえば、マーケティング、営業、在庫管理システムのデータを一元化するのに用いられます。

アプリケーション統合に強みを持つタイプ
異なるアプリケーション間でのプロセス連携を実現するための機能を中心に設計されたものです。特にCRMやERPなどの業務アプリ間でのシームレスなやり取りを実現します。

API管理機能を重視したタイプ
APIの作成、管理、分析機能が充実しているiPaaSもあります。これは、カスタムアプリケーションとの連携にも活躍します。

業務プロセス自動化に強みを持つタイプ
業務フローの自動化や、効率化を目的とした機能を提供します。手動作業を削減に寄与します。

リアルタイム処理を支援するタイプ
即時性が求められる業務のために、データフローや処理のリアルタイム対応を行います。金融や医療の現場で活躍しています。

iPaaSの活用例

すでにiPaaSは産業界のさまざまな場面で活用されています。たとえば製造業では、サプライチェーンを最適化するために、各工場や倉庫のデータが統合管理されています。目的は需給のバランスを調整することです。iPaaSを利用して、在庫不足時に自動で仕入れ先に発注通知を送信するしくみを構築しています。これにより無駄を削減し、コスト効率を高めることができます。
金融業界においても、顧客データを統合する目的で、CRMシステム、クレジットスコアリングサービス、営業支援ツールなどの連携をiPaaSで行っています。これにより、営業担当者が最新の顧客情報に基づいて時宜を得た提案を行い、顧客体験を向上させることができます。

iPaaSの選び方ポイント

業務効率向上に大きな成果をもたらしてくれるiPaaSですが、導入においては自社に適したサービスを選ぶことが重要です。以下に主要な見極めポイントを挙げました。

統合の対象システムとの互換性

既存のシステムやアプリケーションとの互換性を確認することが重要です。特定のツールやプラットフォームとのスムーズな接続を可能にする機能が備わっていることが必須です。例えば、CRMやERP、マーケティングツールなど多様なアプリケーション間でシームレスなデータ共有が求められます。互換性が高いiPaaSは、導入後の効率的な運用を助けるとともに、技術的な問題を回避することにも貢献します。

リアルタイム処理能力と可用性

業務に即応性が求められる場合は、リアルタイム処理能力がカギになります。データ同期やプロセス実行が即座に行えるかどうかを確認しておくとよいでしょう。また、iPaaSはプラットフォームやアプリケーション間でハブとして機能するため、ほぼダウンタイムなく、高い可用性を維持できるものを選ぶことが重要です。

使いやすさ

iPaaSは専門的な技術知識を必要とする場合もあります。しかし、より操作が分かりやすいものを選ぶことで、企業全体への浸透が加速します。視覚的なインターフェースやわかりやすい設定管理ツールがあれば、IT部門だけでなく幅広いチームでも活用しやすくなります。

コストと価格モデル

導入後のランニングコストが想定以上に高くなることを防ぐため、価格モデルをしっかり検討することが必要です。従量課金制、固定料金制、または組み合わせたモデルが利用されることが多いため、自社の利用状況に適したプランを選択しましょう。

プロバイダーのサポート体制

サポートが手厚いかどうかは、iPaaSの導入成否に直結します。技術的なトラブルへの迅速な対応、トレーニングプログラムの提供、そして導入後の継続的なフォローアップが充実しているかといった点を事前によく確認しておいてください。

iPaaSツールなら「ACMS Cloud」がおすすめ

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まとめ

今回は、iPaaSの概要と「〇aaS」ツールの中での位置づけを明らかにするとともに、導入メリットやその種類、選び方ポイントについて見てきました。企業のクラウドサービス利用が深化するにしたがって、今やビジネス環境に欠かせないテクノロジーと認識され始めています。ぜひ貴社においても前向きに検討いただき、iPaaSの徹底活用によって、いっそうの業務効率化や精度の高い意思決定を推進してください。

この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

データ活用・データ連携のお役立ちコラム

経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。


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