Case Study導入事例

小千谷市役所小千谷市役所(地方自治体)導入事例

地方自治体ACMS ApexRACCOONPDF PDF

基幹業務システムと窓口支援システムのデータ連携基盤に
ACMS Apexを採用し、「書かない窓口」を実現

  • 課題
    基幹業務システムと窓口支援システムの連携にデータ変換・加工が必要
    窓口支援システムのデータを最新の情報に保てる仕組みが必要
  • 評価
    Shift_JIS→Unicodeを一括変換
    約1,300ある外字も外字テーブルの作成で対応
    基幹業務システムと5分ごとにデータ連携
    窓口業務のスピード対応が可能に

市民のサービス向上を期して窓口業務改革を決断

小千谷市は、新潟県のほぼ中央に位置する人口約3万人の地方自治体だ。同市は鮮やかな色彩と優雅な姿から「泳ぐ宝石」と称される錦鯉で有名だ。

2021年、デジタル庁が設置され、地方自治体は全国レベルで情報交換できるようになり、小千谷市は「書かない窓口」と呼ばれる窓口業務改革の取り組みを知ることになった。「書かない窓口」とは、地方自治体を訪れた住民が申請書を手書きすることなく各種証明書の発行や手続きができる、システムを活用した窓口サービスだ(以下、窓口支援システム)。住民にとって利便性が高く、職員の負担も軽減できるため、小千谷市において導入を決定した。

これを実現するためには、基幹業務システムからデータを取得する必要があるが、提供ベンダーからは、基幹業務システムに新しく窓口支援システム向けのデータレイアウトの出力機能を実装することは難しいと回答があった。しかし、既存のデータレイアウトのデータをコピーして提供することは可能だという。それなら、そのデータを入手してデータ変換をかければ窓口支援システムに渡すことができる。そのとき小千谷市 デジタル戦略室 室長 大渕 和美氏の頭に浮かんだのが、自治体情報システムの標準化対応の一環で選定を進めていた ACMS Apexだった。

自治体向けデータテンプレートを持つACMS Apexの導入を決定

小千谷市では、20ある基幹業務システムのうち、就学援助システムだけは対象人数も少ないこともあってExcelで管理していた。標準化対応が生じた機に市役所主体でExcelとAccessを利用しシステム化することにしたのだが、そこでデータ連携ツールを探していた。そうしたとき、複数の候補の中でも小千谷市に最適だと紹介されたのがACMS Apexだったのだ。ACMS Apexは、データ ハンドリング プラットフォーム RACCOONを搭載しており、自治体情報システム標準化における基本データリストに準拠したテンプレートを提供し、導入コストも適正だった。そこで、小千谷市から業務委託を受けシステム開発を担う株式会社オーシーエス SI事業部 カスタマーシステムソリューション 青柳 諒氏が、評価版を利用してシンプルなデータ変換・加工を試したところ、問題なく対応できることを確認できたため、小千谷市は導入を決めた。

「自治体情報システム標準化に伴うデータ要件に準拠した変換テンプレートを持っていたのはACMS Apexだけでした。トライアルが順調に進んだこともあり、この製品しかないと思って決断しました」(大渕氏)

窓口対応が平均3分30秒に職員負担も15~20%軽減

窓口支援システムの導入プロセスでは、オーシーエスがACMS ApexおよびRACCOONの基本構築を進めるとともに、データ・アプリケーションのテクノロジーパートナーである株式会社メディアフォースがデータ連携を含む基本設計を行った。本稼働を果たすために必要なデータ連携部分は数多くあったが、事前にトライアルをしていたこともあり、オーシーエス 青柳氏は基本設計をもとにこれらをスムーズに“量産”していった。このように本稼働に向けた作業は順調に進んでいたが、ここで提供元のデータに足りない項目があるという事実が判明した。そこでデジタル戦略室では、すでに導入していたRPAを活用し、夜間に基幹業務システムから足りない項目をエクスポートし、それをACMS Apexに投入してデータ変換をかけるというプロセスを追加した。こうした分担と工夫が功を奏し、2024年8月後半から11月の約3カ月でデータ連携部分はほぼ完成。約1カ月の並行稼働でシステム検証を経て、2025年1月21日に窓口支援システムは本番移行を果たした。以来、安定的に稼働を続けている。

窓口支援システムの導入により、各種手続きは次のようになった。たとえば、「小千谷市に転入したので、新住所で住民票を発行したい」と市民が訪れたとする。本人書類を確認し、窓口支援システムで新住所を入力すると、それが住民基本台帳に反映されるとともに、窓口支援システム側で申請書が出力される。市民が間違いないと署名すれば、それをもとに証明書が発行される。基幹業務システムと窓口支援システムとのデータ連携はACMS Apexが担っており、住民基本台帳など重要な基幹業務システムとのデータ連携は5分ごとにデータ更新が行われている。ほかにも、国民健康保険、介護保険など日次で更新されているものもあり、現在で12本、最終的には27本のデータ連携を目指している。

これにより、市民にとって窓口で書く必要がなくなるだけでなく、申請書と証明書がほぼ同時に発行されるというスピード対応が実現。その対応の平均時間は3分30秒で、利用した市民から高く評価されている。また、職員にとっても窓口業務の負担が15~20%軽減したという。将来的には、一つの申請を契機にして他に必要な手続きがあればそれも一度に案内し、一度の来庁で完結するといった具合に、さらなる市民サービスの向上に向けて検討を進めている。
大渕氏は次のように振り返る。

「基幹業務システム側の文字コードはShift_JISで、窓口支援システム側はUnicodeでした。一抹の不安を抱いていましたが、ACMS Apexに搭載されているRACCOONによって、一括で変換することができました。また、小千谷市独自の外字が約1,300字ありましたが、外字テーブルを作成するだけで外字の変換にも問題なく対応でき、このとき『うまくいきそうだ』とプロジェクトに目途を立てることができました」

一方、青柳氏はデータ・アプリケーションのサポートについてこう語る。

「一般的な質問についてはその日のうちに、難易度の高い変換についても数日で回答いただき、質問以外の部分も先回りしてカバーしてもらえたので大変助かりました」

多くのデータ連携プロジェクトに携わる株式会社メディアフォース ソリューション事業部 部長 小山 浩人氏は、今回の案件を次のように評価する。

「こうしたプロジェクトではデータ連携基盤が重要になりますが、専門性も高く、自治体情報システムに対しても変換テンプレートを持つといったコンセプトの確かなACMS Apexを幹に据えられたことは大きかったと思います」

今後、小千谷市では、就学援助システムで必要になるデータ連携・データ変換や、標準化を果たした後の基幹業務システムから、市の発案で情報を抽出する場面にACMS Apexを活用したいと考えている。現在その多くがExcel管理されており、こうしたニーズは非常に多いという。さらに、自治体情報システム標準化においても、年度ごとに上がっていくシステム版数に対し、どのようなタイミングで受け入れるかはシステム提供ベンダーに任されている。マルチベンダー環境の場合、システム間で版数がずれる懸念が生じるものの、ACMS Apexが基盤としてあれば、その差を吸収するデータレイアウトを提供できるため、変換プログラムを一から開発しなくてすむ。

市民サービスの向上を考え続ける小千谷市が、スムーズなデータ連携のために選びとったプラットフォームはACMS Apexだった。

システム構成図

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