Case Study導入事例

株式会社カンセキ株式会社カンセキ(小売業)導入事例

流通BMSを補完する Web-EDIシステム構築
ACMS WebFramer採用により発注・仕入業務の大幅なコスト削減を実現

  • 課題
    仕入先での流通BMS採用を容易にするためWeb-EDIシステム構築を決断
    タイムリミットが迫る中開発スピードとシステム柔軟性を探索
  • 評価
    ACMS WebFramer 活用によるWeb-EDI構築で要件・期日を厳守し切り替えを完遂
    発注・仕入業務のコストが大幅ダウン週60時間の労務時間削減も実現

日常の暮らしから人生を豊かにするライフスタイルまで快適な生活を幅広く提案

株式会社カンセキは、栃木県を中心にビジネスを展開する創業50年の小売企業だ。1975年の創業より主力であるホームセンター事業を核に、アウトドア専門店事業、飲食店事業、フランチャイズ事業を営み、2024年1月現在、計81の店舗を運営している。カンセキという社名は、創業者である服部吉雄氏が茨城県勝田市(現・ひたちなか市)で起業していた石油製品販売会社「関東石油販売」の“関”“石”から取ったものだ。同社がめざしているのは、独自のネットワーク型業態融合。複数の業態を組み合わせることにより、日常の快適な暮らしの創造から、人生を豊かにするライフスタイルの提案までさまざまな顧客ニーズに対応している。地域のスポーツ振興にも貢献しており、栃木県総合運動公園陸上競技場の命名権を取得、これは「カンセキスタジアムとちぎ」という名で知られている。

流通BMS対応を決断 Web-EDIシステム構築による対象仕入先増加を企図

同社が運営する「ホームセンター カンセキ」は、仕入先の登録口座数が1,200社ある。そのうち活発に取り引きしている口座数は約600社になる。発注に関してはここ15年ほどEOS(Electronic Ordering System)を利用した自動発注を行ってきたが、EOSを利用する口座数としては約130だった。というのも、仕入先は、大手企業から規模の小さな個人商店まで多岐にわたる。また、夏のすだれなど特定の季節品を扱う仕入先もあるため、通年取り引きがあり、組織としてEOS対応が可能な仕入先となるとこの数になった。

2023年2月、EOSでの仕入先を対象に流通BMSをベースにしたEDIへの移行を決断した。仕入先の中には流通BMSを利用している企業も多く、機会は十分に熟していた。また、EOSで利用していたINS回線のIP網切り替えが、2024年1月と目前に迫ってきているタイミングでもあった。そして、このプロジェクトに合わせて、発注業務のペーパーレスやコスト削減もめざすことになった。

流通BMS対応と並行して、発注を自動化できる仕入先を増やすことも考えた。Web-EDIという手法が使えたからだ。 Web-EDIではWebブラウザを利用し、インターネットを介した電子商取引が実施可能なため、規模の小さな個人商店でも対応しやすい。 そのような仕入先とは従来、電話とFAXが発注の手段だった。電話では「言った言わない」のトラブルが生じやすく、FAXでは紙を紛失するというリスクがあった。さらに、人手に頼る発注業務は誰にでも担えるわけではなく、今日入った新人に任せるわけにはいかない。恒常的な人手不足の中、このような属人化も解消したかった。そのため、流通BMSの補完策であるWeb-EDIを導入することで、より多くの仕入先との間で、よりスムーズで正確な、また幅広いスタッフが担当できる発注のしくみを取り入れたいと考えたのである。

パッケージでありながら求める要件を実現できるACMS WebFramerを選択

それでは、どのようなテクニカルパートナーとタッグを組んで、どのようなWeb-EDIを導入するか。最初、同社は7社を候補に挙げ、見積額と流通BMS対応の可能性で3社に絞った。3社に入った提案先の中には、流通BMSに対する知見が深いエンジニアがいて、彼らについていけば間違いないと思う場面もあった。しかし、よく話を聞いてみると、流通BMSに精通したエンジニアの数が限られているのか、「今、決断しないとエンジニアを確保できない。納品期日に間に合わない」と早期の契約締結を迫られた。ここで改めて考えたのがEDIのしくみと基幹システムとの関係である。EDIに入るデータは自ずと基幹システムへ投入することになる。構築にあたっては、基幹システムの構成に精通している方が望ましい。その点では、30年にわたって「ホームセンター カンセキ」の基幹システムを構築・運用してきたシステムインテグレータ 株式会社フリーポートが一番の適任といえた。彼らはすでに流通BMSに関する知見があり、構築するのはそう難しくないであろうと判断し、パートナーとしてフリーポートを選んだ。

話を受けたフリーポートでは、Web-EDIシステムの構築に向けて調査を開始した。株式会社フリーポート 代表取締役 青木 幹雄氏は、その時点でEDI専業企業としてのデータ・アプリケーションについての認識があり、エンタープライズWeb-EDIシステム基盤のACMS WebFramerを開発・販売していることも知った。
「2023年3月の時点で、カンセキさま向け開発としてプロジェクトがもう一つ同時並行で走っており、少数精鋭主義の当社としてはWeb-EDIシステム開発の負荷をどう軽減できるかが大きな課題でした。ACMS WebFramerには小売業界向け流通BMS対応Web-EDIテンプレートが存在し、容易に構築イメージを描くことができました。何より、EDI専業企業のデータ・アプリケーションが提供している製品で信頼感があり、技術力の高いサポートにも期待しました」

フリーポートがWeb-EDIシステムのベースにACMS WebFramerを選択したことについて、株式会社カンセキ 経営企画部 情報システムグループ 津久井 信夫氏は次のように語る。
「ACMS WebFramer 小売業界向け流通BMS対応Web-EDIテンプレートは仕様がしっかりしており、しかも、カスタマイズではなく変更可能なところがいいと思いました。システム開発の常で、当初はパッケージに合わせるという前提で進めるものの、現場と会話を進めるとどうしてもそうはいかない部分が出てきます。特に、EOSでできていたことが流通BMSではできないとなると、『情報システム部門が仕入れをしているのか。これができないと仕入れのときに困る』と、Web-EDIシステム利用者から不満の声が上がってしまいます。しかしカスタマイズできるからといって、これをしすぎることにも落とし穴があって、バージョンアップするときに大きな負荷がかかります。柔軟性があり、求める要件を標準機能の設定変更だけで実現できるACMS WebFramerは、いい選択でした」

環境構築段階からデータ・アプリケーションが手厚いサポートを提供

ただ、パッケージ製品を使用したWeb-EDIシステムの開発は、フリーポートとしても初めてのことで、一朝一夕には進まなかった。株式会社フリーポート システム開発部リーダー 武内 政樹氏は、次のように振り返る。
「立ち上がりはいろいろ戸惑いました。早くも環境構築のところで動けなくなってしまい、テクニカルサポートに何度も問い合わせをしました。データ・アプリケーションは親身に手助けしてくれ、手厚いサポートを受けることができたのは非常に助かりました。また驚いたことに、発注など基本的なところはACMS WebFramer小売業界向け流通BMS対応Web-EDIテンプレートの設定を変更することなく実現できました」

一方、Web-EDIシステムの開発が始まったことを知った仕入先は、最終的な仕様がどうなるのか、どう準備すればよいのかとフリーポートに問い合わせを寄せた。まだ開発途上であり、本来であれば開発が完了しないとマニュアルを作成できないが、データ・アプリケーションが提供しているACMS WebFramerの標準マニュアルを「Web-EDIマニュアル」として公開し、これをベースとして対象仕入先との会話を進めていった。

今回、Web-EDI周辺でカンセキが特に要望した機能があった。たとえば、支払明細書をACMS WebFramer内で仕入先へ公開することだ。これは、インボイス制度対応の一翼を担った。こうした要望についても、一から開発することなくACMS WebFramerの標準機能の範囲内で難なく実現することができた。

Web-EDIシステムの構築により発注・仕入業務で大幅なコストダウン 週60時間の現場作業時間削減も

結果的に、当初の予定どおりに稼働することができ、2023年11月から対象仕入先の移行プロセスに入ることができた。毎週約20社ずつ行った移行プロセスはほぼ混乱なく進み、2024年1月には対象仕入先すべての移行を完了することができた。

Web-EDIを採用する仕入先は想定数以上であった。当初は多く見積もって50社程度ではないか考えていたが、ふたを開けてみると100社がWeb-EDIを希望した。もともとEOSを行っていた企業が、Web-EDIへの移行を希望するケースもあったという。こうした仕入先の意向について、株式会社カンセキ 経営企画部 情報システムグループ 大貫 裕美氏は次のように語る。
「システム利用促進のため、取引規模の小さな取引先でも Web-EDIを利用しやすいよう、 利用料を安価に設定しました。また、この手法での受注なら、仕入先でのシステム改修を最小限に抑えて容易に対応いただけます。これらが歓迎され、予想以上にWeb-EDIを希望する仕入先が多かったのではないかと思います」

構築されたWeb-EDIシステムでの発注は、次のような流れになっている。在庫する商品が発注点に達したら電子伝票で発注書を仕入先へ送信する。仕入先はこれを受けて商品を準備、出荷したらまた電子伝票で納品書を送信し、カンセキ側では受領とともに検収し、基幹システムへデータを格納する。Web-EDIシステムの導入および流通BMSへの対応は、同社の発注および仕入業務のDX化に貢献し、大幅なコスト削減や伝票入力の省力化など業務改善につながっている。
「劇的なペーパーレスが実現し、当初の目標であった、流通BMS対応、ペーパーレス、発注・仕入業務のコスト削減がすべて達成できました」(津久井氏)

大貫氏は津久井氏を補足してこう語る。
「現場の作業が効率化されました。伝票入力がかなり楽になり、これを機に現場検収も廃止したため、現場で週に60時間もの労務時間が削減されました。こうして生まれた時間で、事務担当者がより長い時間売場に出られるようになりました」

フリーポートでは、実質的に開発者1名でWeb-EDIシステム開発を完遂した。青木氏は次のように語る。
「ACMS WebFramerを選択しなければ、2024年1月までに要件をすべて満たしたシステムを開発するのは難しく、基本機能だけに絞り込むといったフェーズを切ったリリースになったかもしれません。カンセキ様のご協力もあり、構築工数をスクラッチ開発の4分の1ほどに抑えることができました。一度にすべてやり遂げられたのはこのACMS WebFramerのおかげです。また、このプロジェクトをとおしてデータ・アプリケーションとの接点が持てたこと、ACMS WebFramerを活用したWeb-EDIシステム開発のナレッジとノウハウを習得でき、ビジネス領域を広げられたことに満足しています」

今後、カンセキでは、さらに発注業務のシステム化を進めたいと考えている。同社の商圏では、庭のある一戸建てで暮らす顧客が多く、ガーデニングやペットのいる日常が生活に深く溶けこんでいる。そのため、同社でも花や野菜の種、観葉植物、多様なペット用品の取り扱いに力を入れている。しかし、品目の特性上コード化が難しく、また消化仕入など通常とは異なる仕入れ形態があるのが難点なのだが、この先の業務効率化を実現する上で重要なテーマだ。

また将来的には、卸・メーカーからの出荷から始まる出荷開始型モデルの導入や、蓄積したデータを使った発注分析なども検討中だ。これが実現すれば、発注業務のさらなるコスト削減とともにより精度の高い発注業務が実現する。

これからもカンセキは、ACMS WebFramerをベースにWeb-EDIシステムの深化を追求し続けていく。

株式会社カンセキ 流通BMS システム構成図

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