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電子帳簿保存法とは? 対象者、対象書類などをわかりやすく解説!

最終更新日:2023/08/31 電子帳簿保存法とは? 対象者、対象書類などをわかりやすく解説!

すべての事業者にとって無視できない重要な法律に、電子帳簿保存法があります。これは一体どのようなもので、どのようなことが求められているのでしょうか。ここでは、法律の概要や変遷を解説するとともに、帳簿や書類を電子保存するメリット、デメリットを見ていきます。

INDEX

  1. 電子帳簿保存法とは?
  2. 電子帳簿保存の対象となる事業者は?
  3. 電子帳簿保存の対象となる書類は?
  4. 2023(令和5)年度税制改正大綱のポイントは?
  5. 帳簿や書類を電子保存するメリットは?
  6. 帳簿や書類を電子保存するデメリットは?
  7. まとめ

電子帳簿保存法とは?

電子帳簿保存法と呼ばれる法律が、令和に入って繰り返し見直されています。
2021(令和3)年度に行われた税制改正では、「2022(令和3)4年1月1日以降に授受した電子取引データの保存については、紙出力保存が認められない」ことになりました。
2022(令和4)年度の税制改正では、2点大きなポイントがありました。「電子取引データの保存について、やむを得ない事情が存在するなどの一定の要件を満たす場合には、2022(令和4)年1月1日から2023(令和5)年12月31日まで宥恕(ゆうじょ)措置の適用期間を設け、紙出力保存を容認する」というものと「スキャナ保存制度及び電子取引の取引情報の保存に関するタイムスタンプ要件について、総務大臣が認定する業務に係るタイムスタンプの付与が必要」(従来は、一般財団法人 日本データ通信協会が認定する業務に係るタイムスタンプの付与が必要)というものです。
2022年12月に発表された2023(令和5)年度税制改正大綱に基づく、2023(令和5)年度税制改正が2023年3月28日に成立し、関係省庁から発行されましたが、ここでの変更ポイントは後で詳しく触れることにします。
このように、これまでにも様々な見直しが続けられている電子帳簿保存法ですが、そもそもこの法律は、経済社会のデジタル化を踏まえ、経理の電子化による生産性の向上、記帳水準の向上等に資するために制定されたもの。正式には「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、1998(平成 10 )年7月に施行され、上記のようにアップデートされながら今日に至っています。

電子帳簿保存の対象となる事業者は?

電子帳簿保存法は、すべての納税者に関係する法律です。法人税を納める法人はもちろん、所得税を納める個人事業主も対象外ではありません。なかでも留意すべきなのが、改正によって義務化されることになった電子取引データの電子データ保存です。これについては、納税義務を負うすべての事業者が宥恕措置適用期間の終了する2023(令和5)年12月31日までに、何らかの対応策を講じ、翌年からの取引に備えなければなりません。

電子帳簿保存の対象となる文書は?

電子データで保存するという場合、対象となる文書は、大きく「帳簿」「書類」「電子取引に係るデータ」の3種類になります。また「書類」は、下位分類として「決算関係書類」「取引関係書類」があり、電子帳簿保存法での位置づけが若干異なります。具体的な方法は、電子帳簿で保存する、ファイルで保存する、スキャンデータで保存する、電子取引データで保存する、の4種類があります。それぞれ順に見ていきましょう。

電子帳簿で保存する

これは、国税の法律により備え付け及び保存が義務付けられている帳簿になります。仕訳帳、総勘定元帳、現金出納長、売掛金元帳などがこれに当たります。具体的には、一般電子帳簿、優良電子帳簿に相当する製品を導入し、データを保存することが想定されています。

ファイルで保存する

国税関係書類でも、棚卸表、貸借対照表、損益計算書などの決算書類は、ExcelやPDFなどのファイル形式でも保存できます。契約書、見積書、請求書、注文書、領収証といった取引関係書類も同様です。電子的に作成したこれらの書類は、電子取引データという扱いになるため、電子保存が必要です。

スキャンデータで保存する

契約書、見積書、請求書、注文書、領収証といった取引関係書類は、取引先から紙で受け取ることもあります。その場合はスキャナでスキャンして電子保存が可能です。

電子取引データで保存する

電子データで送受信した取引関係書類がこれに該当します。代表的なのはEDIデータです。これらは送受信どちらのデータも電子的に保存しなければならないため、EDI製品がその機能を備えていると効率的です。このほか、電子メールやクラウドサービスを通じて受領した取引関係書類なども電子保存が求められます。

関連リンク:https://www.dal.co.jp/column/i-edi/

2023(令和5)年度税制改正大綱のポイントは?

2023年3月28日、「令和5年度税制改正」が成立し、関係省庁から発行されました。この中で、電子帳簿保存制度については、3つの見直しポイントがあります。それぞれ見ていきますが、今後変更される可能性もあるため、引き続き動向を見守っていく必要があります。

電子取引における電子取引データ保存制度の見直し

これまでは、原則「改ざん防止の要件(タイムスタンプ等)」、「検索機能の確保の要件」、「見読可能装置の備付けの要件」等の保存要件に従って、電子取引データを保存しなければならないとされてきました。しかし、保存要件に従って保存をすることができなかったことにつき相当の理由がある事業者等に対し、新たな猶予措置が講じられます。具体的には、相当の理由があると認められる場合、その電子取引データの出力書面の提示・提出の求め、及びその電子取引データのダウンロードの求めに応じることができるようにしておけば、保存要件を不要として、電子取引データの保存が可能になります。これに関して、事前の手続きは必要ありません。

国税関係書類におけるスキャナ保存制度の見直し

制度の利用促進を図る観点から、要件の緩和措置が講じられました。まず、記録事項の入力を行う者等の情報を確認できるようにしておく必要がなくなります。また、スキャナで読み取った際の情報(解像度・階調・大きさ)の保存が不要になります。さらに、帳簿との相互関連性を求める書類が、契約書、領収書、請求書等、資金や物の移動に直結・連動する重要書類に限定されます。

優良電子帳簿に係る過少申告加算税軽減措置の対象帳簿範囲の見直し

過少申告加算税の軽減措置とは、対象帳簿について、優良な電子帳簿の要件を満たして保存等を行った場合に、帳簿に記録された事項に関し申告漏れがあった際、課される過少申告加算税が5%軽減される制度です。今回の見直しで、対象帳簿範囲が合理化・明確化されました。具体的には、売上帳、仕入帳、経費帳(賃金台帳を除く)、売掛帳、買掛帳、受取手形記入帳、支払手形記入帳、貸付帳、借入帳、有価証券受払い簿、固定資産台帳、繰延資産台帳等が対象になります。

帳簿や書類を電子保存するメリットは?

帳簿や書類を電子保存することのメリットとは何でしょうか。ここでは4つのポイントを挙げてみました。

ペーパーレス、省スペース

対象とされている国税関係の帳簿や書類は、長期間にわたっての保存が義務づけられています。紙での保存は大量の紙が必要となるとともに、その保管スペースを確保しなければなりません。オフィスに十分なスペースがあれば問題はありませんが、場合によってはオフィスを拡張したり、倉庫を借りたりしなければならないかもしれません。しかし、電子保存であれば、そうした物理的な資材や空間といった課題から解放されます。

システム活用による業務効率向上

電子保存では、何らかの形でシステムを活用することになります。これによって、計算処理の自動化や、書類整理・ファイリングが不要になるなど、大きな業務効率向上が期待できます。なかでも大きいのは文書検索が可能になることです。膨大な紙の書類の中から目当ての書類を探すのは、整理が行き届いていたとしてもひと仕事です。しかし、システムの検索機能を利用すれば一瞬のうちに探し当てることができ、仕事のスピードを上げられます。

物理保存から解放されることによるコスト削減

電子保存により保管スペースを確保しなくてよいということは、その分オフィスをスリム化できたり、倉庫コストが要らなくなるため、固定費の削減につながります。また、オフィスで利用する紙代も節約できます。くわえて、システム活用により、少ない人数でより多くの業務がこなせる可能性も広がります。このような部門体制の最適化という形でも、コスト削減を図っていくことができます。

セキュリティレベルの向上

紙での保存の場合、その帳簿や書類にアクセスすることさえできれば、誰でも中の情報に触れることが可能です。コピーや写真で盗み出すということも容易です。しかし、電子保存であれば、システムによりアクセス制御を講じることが可能です。本人を特定するというだけでなく、適切な権限がなければ情報にアクセス・閲覧できない仕組みが構築できるということです。情報保護を目的とした高いセキュリティレベルを付すことができます。

帳簿を電子保存するデメリットは?

それでは、帳簿や書類を電子保存するデメリットはどこにあるでしょうか。大きく3つあると考えられます。

システムを導入する必要がある

電子保存を実現するためには、何らかのシステムを導入する必要があります。オンプレミスシステムであれ、クラウドシステムであれ、一定の費用がかかることは覚悟しなければなりません。また、システムを使いこなすために、従業員に教育・研修を行わなければならない場合もあり、ここにも費用がかかります。紙で保存し続ける場合に比べれば費用対効果は高いといえますが、投資なくして電子帳簿保存法への対応は難しいと考えた方がいいでしょう。

システム責任者が必要になる

システムを活用するに当たって、帳簿や書類の数字に責任を持つ部門や人物が必要になります。電子帳簿保存法への対応においては、会計部門や経理部門がその任に当たることになるでしょう。システム責任者がその企業なりのルールをきちんと策定するとともに、それを社内に周知徹底していかなければなりません。それだけでなく、策定したルールが守られるよう、常に社内を牽引していく姿勢が求められます。

システム障害が起こる可能性がある

帳簿や書類を電子保存するということは、ひとたびシステムに障害が発生すると、求める文書が閲覧できなくなったり、業務が行えなくなるということを意味します。月次や年次処理の中には、時間の猶予が許されていないというものもあります。万一に備え、代替手段について事前によく検討しておく必要があります。システム構築の段階から、システム障害が発生しても代替システムに切り替えられる仕組みを考えておくことも一法です。

まとめ

いかがでしたか。求められる要件の難易度が一見高そうに思われる法律ですが、事業者の実情を鑑みながらアップデートが行われ続けています。基本的には、帳簿や書類の電子保存がより行いやすくなる方向に進んでいます。最新の電子帳簿保存法の内容を正確に把握し、うまくシステムも活用しながら、すべての事業者の義務である納税にスマートに対応していきましょう。

この記事の執筆者

データ連携EDIETL

データ・アプリケーション
データ活用研究チーム

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経歴・実績
株式会社データ・アプリケーションは、日本を代表するEDIソフトウェアメーカーです。設立は1982年、以来EDIのリーディングカンパニーとして、企業間の取引を円滑に効率化するソリューションを提供しています。1991年からは日本の標準EDIの開発やSCM普及にも携わっており、日本のEDI/SCM発展に寄与してきました。
現在は、EDI/SCM分野のみならず、企業が所有しているデータの活用についてもビジネススコープを広げています。ハブとなるデータ基盤提供を始めとして、さまざまな角度から幅広く研究・分析を行っており、その提言を通じて日本企業のDX推進を後押ししています。


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