全銀EDIシステム(ZEDI)とは?
会計・経理業務の効率化システム

そのメリットとは?金融EDI活用のために企業が行うべきことは何?

最終更新日:2021/10/21

総合振込などの電文にXML電文を採用する「全銀EDIシステム(以下、ZEDI)」が、2018年12月から稼動を開始しました。ZEDIを活用することにより、支払企業側は、受取企業側からの入金照会に関する問い合わせ対応の工数削減、そして、受取企業側での売掛金の消込作業を効率化するなど、企業のバックオフィス業務の効率化と生産性の向上を目指しています。では、ZEDIというのはどのようなシステムで、これに対応するために支払・受取企業は何をすべきなのでしょうか。今回は、この新システムが登場する背景や、ZEDIが企業にもたらすメリットやインパクトを含め包括的にご紹介します。

●銀行振込は迅速・安全ながら、売掛金の消込業務が課題

日本の企業間決済では、銀行振込が幅広く利用されています。それは、銀行間資金決済ネットワークである全銀システムが存在し、これが全国各地の金融機関で受け付けた振込依頼を、全国各地の振込先金融機関へ極めて短時間かつ安全に送信できるからです。この企業間決済は、一般的に月次処理で行われます。支払企業は1カ月分の注文金額を蓄積し、締め日にそれらを合計して、仕向銀行へは総合振込の依頼を実施。受取企業は振込入金通知が届くと、その内容を確認します。そこには、「いつ」「どの企業から」「いくら振り込まれたか」しか記載されておらず、その入金額にどの注文分が含まれているのかは、別途の確認をする必要があります。これがいわゆる売掛金の消込業務で(図1)、伝統的に受取企業はこの業務に多くの手間とコストをかけてきました。

図1:総合振込の売掛金消込業務

図1:総合振込の売掛金消込業務

金融業界では、こうした非効率な業務を解消し、金融EDIの中で、銀行振込を通じた企業間決済を高度化しようと取組みを進めてきました。その活動は主に振込データに商流情報(取引明細情報)を付加できる仕組みを検討するものです。これまで全く別ものとして扱われてきた“商流”=商品の動きと“金流”=お金の動きを一体化しようという取組みです。
1996年の全銀システムへの全銀協金融EDI標準マッチングキー方式の導入は、この金融EDIの一環でした。決済を行う際、その決済の元となった取引を特定できる情報として、20桁・固定長電文の番号(マッチングキー)を振込データに付加できるようにしたのです。受取企業はマッチングキーで取引明細情報を把握でき、これで売掛金の消込作業負荷が軽減されると見込まれていました。しかし、実際の取引明細情報は想定以上に複雑かつ多様で、20桁の番号では取引特定に必要な情報を盛り込むことができず、事実上、マッチングキー方式は機能していませんでした。


(参考)EDIって何?なぜ取引する会社はEDIするの? 金融EDIと商流EDIの違いを解説

●マッチングキー方式の代替技術として着目されたデータ記述言語XML

マッチングキー方式の問題を解決すべく、産業界が着目したのがXML(Extensible Markup Language)です。これは、データ項目の内容・長さやデータ間の関係を英語や日本語といった自然言語で自由に設定でき、データ項目の追加や削除も容易に行えます。さらに、情報システム間やアプリケーション間の相互運用性にも優れているため、XML電文はISO20022準拠のデータ交換形式となりました。このXMLを企業間決済にも適用すれば、支払企業は豊富な情報を思い通りに盛り込め、受取企業も取引明細情報の把握が容易になります(図2)。

図2:固定長文とXML電文の情報量比較イメージ

図2:固定長文とXML電文の情報量比較イメージ

●XML電文採用による業務改善を共同実証で確認

XML電文で売掛金の消込業務はどれだけ改善できるのか。その観点で、2014年11月および2015年2月、政府、各業界団体によって、決済情報と商流情報の連携を目的として共同実証実験が実施されました。
2014年11月の共同実証の際は、小売業の販売条件・リベート処理業務をテーマに実施。XML電文により、大手卸での入金消込業務と入金処理業務を合わせて年間1万5250時間もかかっていたものが年間6000時間となり、年間9250時間(削減率61%)の業務効率向上が見込めると試算されました。
2015年2月の共同実証では、大手物流事業者も加え、XML電文による物流会社の売掛金入金管理業務改善を試みました。物流事業者では、確認が必要な入金が約4000件(全体の約8%)発生しており、入金金額の内訳情報を取引企業ごとに別途入手した上で、手作業で照合作業を実施していました。1対1で突合できない、つまり計算が合わない場合は、電話など別の方法で支払企業に内容確認作業を行う必要がありました。それが、この実証実験で定義したEDI情報を付加することで、90%以上のデータが自動処理できることが確認されたのです。

●金融庁・金融審議会、政府がXML電文の採用を提言

こうした一連の動きを受け、2015年12月、金融庁・金融審議会が1つの提言を発表しました。それは「企業間の国内送金指図で使用する電文方式について、2020年までに現在の固定長電文を廃止し、情報量や情報の互換性などに優れたXML電文に移行する」というものです。日本政府も、決済高度化(※1)をベースとした金融高度化(※2)は重要な取組みテーマとして認識し、2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017-Society 5.0の実現に向けた改革-」においても、「金融EDIの活用を起点とした企業の成長力強化のためのFinTechアクションプランにより、財務・決済プロセス全体の一括した高度化を図る」と明記されています。以下が、その主な取組みの1つです。

●XML新システムを2018年中に稼動し、2020年までにXML電文に全面的に移行。2020年までに商流情報の標準化項目の普及、業種を超えた企業間のEDI連携をさらに推進する。

ここに登場するXML新システムというのが、全銀協開発によるXML電文対応新決済プラットフォーム金融・ITネットワークシステム「全銀EDIシステム(愛称:ZEDI)」です。今、この新システムを中核に、日本は政府を挙げて金融EDIのネクストステージ実現に向かおうとしています。

※1:決済高度化平成27年12月金融審議会「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告」の提言を踏まえた13項目への対応です。詳しくは、http://www.fsa.go.jp/singi/kessai_kanmin/siryou/20170621/04.pdfを参照ください。
※2:金融高度化機関のリスク管理手法、経営管理手法の改善や、金融慣行や規制の見直しなどの取り組みを通じて、金融機関による「お金」の仲介機能を向上させることを指します。

●全銀EDIシステムとはどういうものか

ZEDIは、日本企業の企業間決済における総合振込などの電文をXML電文で送れるようにするためのプラットフォームです。主な仕組みは図3のとおりで、支払企業、振込送信を担当する仕向銀行、被仕向銀行、受取企業の間でハブのような役割を務めます。

図3:金融・ITネットワークシステム(全銀EDIシステム)の概要

図3:金融・ITネットワークシステム(全銀EDIシステム)の概要

支払企業が総合振込情報をXML電文で記述されたEDI情報を付記した形でZEDIに送信すると、ZEDIがそれを銀行の勘定系システムが処理できるようにXMLから固定長に変換したり、付記された情報を格納したりするとともに、マッチングキー情報を生成します。支払企業は、総合振込情報をいったん仕向銀行に送ってもよく、その場合は仕向銀行とZEDIの間で電文変換を行います。
仕向銀行から被仕向銀行までの送信は、従来どおり全銀システムを通じて行われ、受取企業へ送られる前に、再びZEDIで固定長電文からXML電文へ電文変換が行われます。これにより、支払企業と受取企業との間ではXML電文で総合振込情報を送受信可能になります。ZEDIが存在することで、仕向銀行と被仕向銀行では勘定系システムを大きく改修することなく、XML電文に対応できます。
この新システムは、2018年12月の本番稼動と2019年1月に企業、銀行向けにサービスを開始しました。

●XML電文を採用した金融EDIが企業にもたらすさまざまなメリット

企業にとって、ZEDIを活用する最大のメリットは、受取企業における業務効率向上です。共同実証実験のとおり、売掛金の消込業務に年間1万5250時間もかかっていたのが、消込自動化により年間6000時間まで削減できるというのは非常に大きな業務改革です。現状、会計部門、経理部門で所属する社員は、月次業務が集中する月末、月初には、残業してでも処理を終えなければならない状況にあるからです。
売掛金の消込業務というのは、売上計上に関わるという点では非常に重要ですが、それ自体はシンプルな作業です。日本を挙げて働き方改革が叫ばれる現在、自動化などで効率化できるところはとことん効率化し、有限の時間を財務分析や投資計画など、より付加価値の高い業務に割くとともに、部門のワークライフバランス向上をめざすべきではないでしょうか。また、これから企業の中核を担うことになるデジタルネイティブ世代は、不要なハードワークを敬遠する傾向があり、彼らの業務定着を図るためにも業務効率向上は必須の課題です。業務統括の観点からも、限りある予算やリソースの有効活用という利点があります。消込業務を効率化することで、労働集約的なルーティンワークに毎月多大な人件費を割く体制を抜本的に変革することができ、XML電文活用には支払企業への電子領収書の発行など、さらなる決済高度化の未来も描けます。
メリットは受取企業だけにとどまらず、支払企業も享受できます。経理部門では、ある支払を確定させるためには、それが「確実に注文され、その結果、成果物が完成した」という証拠を事業部門から受け取り、突合する必要があります。それを、XML電文によるEDI情報で入手すれば、突合業務を大きく効率化することができます。加えて、XML電文で総合振込情報を送信することにより、受取企業での内訳把握が容易になり、個別の問い合わせ対応も削減できます。

全銀EDIシステムに対応したお客様システムの実現を支援
統合EDI基盤「ACMSシリーズ」

ZEDIに対応するため、企業が行うべきことは何か?

ZEDIに対応するために、支払・受取企業はそれぞれ具体的に何をする必要があるのでしょうか。それは、総合振込情報をXML電文で作成すること、あるいは既存の総合振込情報をXML電文に変換することです。ただし、単純にXML電文に変換すればよいわけではなく、金融機関との接続情報を最初に明記するなど、ZEDIが処理できる仕様に対応する必要があります。
EDI分野における圧倒的なマーケットリーダーであるデータ・アプリケーションは、EDIに関わる業務をトータルにカバーするパッケージ・ソフトウェア「ACMSシリーズ」を展開しています。今回の金融EDIのネクストステージであるZEDI活用においても、支払・受取企業が迅速に対応可能な“かゆいところに手が届く”ソリューションを提供します(図4)。

図4:ZEDI利用における「ACMSシリーズ」活用イメージ

図4:ZEDI利用における「ACMSシリーズ」活用イメージ

具体的には、ZEDI接続用の通信パッケージで次の3機能を実装しています。
【1】XML電文伝送仕様である JX手順の提供
支払企業や受取企業でのZEDIとのXML電文伝送仕様であるインターネットEDI用通信プロトコルJX手順を提供します。
【2】XML電文を作成・変換機能を提供
「ACMSシリーズ」は、支払企業や受取企業でのXML電文の作成・変換機能を提供します。固定長やCSVなど、さまざまな形式からXML電文を作成・変換でき、その逆にも対応可能です。また、スキーマによる妥当性検証も可能でXML電文の正確性を保証し、更にはZEDI対応で必要となる金融機関との接続情報なども容易に付記でき、XML電文の作成・変換を容易に実現できます。
【3】クライアント証明書の取得・更新機能の提供
ZEDIではセキュアなシステム運用のため接続時にはクライアント証明書の交換が必要です。これはZEDI利用企業を認証するためのもので、ZEDI仕様に従って初期取得と定期的(約2年毎)更新が必要になります。「ACMSシリーズ」はその取得や更新管理を一手に引き受けるため、取得のための仕様を意識することなく業務に専念できます(図5)。

図5:「ACMSシリーズ」とZEDI間のクライアント証明書送受信

図5:「ACMSシリーズ」とZEDI間のクライアント証明書送受信

このように一定の対応は必要ですが、XML電文を採用したZEDI活用により、支払・受取企業ともに、企業働き方改革に直結する大きな業務効率化が実現可能です。また、これを機会に「ACMSシリーズ」で商流EDIと金融EDIの統合までをめざすならば、すでにXML電文が主流である海外企業などとの取引も視野に入ってきます(図6)。日本政府も注力するZEDI、そのサービスも開始されました。ぜひ、早めの対応をご検討ください。

図6:商流EDIと金融EDIを統合管理可能な「ACMSシリーズ」

図6:商流EDIと金融EDIを統合管理可能な「ACMSシリーズ」

(参考文献)
・日銀レビュー 企業間決済の高度化に向けた銀行界の取組み ―「企業決済高度化研究会」の設立を受けて― 日本銀行決済機構局 2011年08月
・流通BMS®による決済情報と商流情報の連携の検討について
・【2014 共同実証】実証内容、結果、今後の課題 一般財団法人流通システム開発センター2014年12月
・流通BMS®による決済情報と商流情報の連携の検討について
・【2014 共同実証Ⅱ】実証内容 一般財団法人流通システム開発センター 2015年3月
・未来投資戦略2017 ―Society 5.0の実現に向けた改革―