~概要や必要な対応を解説~
グローバルにビジネスを展開する企業にとって、外国送⾦は⽇常活動の⼀つといえる重要な業務です。現在、外国送⾦プロセスの中間で電⽂送受信インフラを提供しているSWIFTが、データフォーマットをISO20022へ移⾏しつつあり、2025年11⽉以降、ISO20022でなければデータ送受信を⾏えなくなります。これは、外国送⾦業務を⾏うすべての企業が、この移⾏に対応する必要があることを意味しています。今回は、ISO20022の概要や、この移⾏に伴い、企業が取るべき対応についてご紹介します。
ISO20022とは、金融通信メッセージフォーマットの国際標準規格です。このデータフォーマットはXMLをベースにしており、従来の金融メッセージングシステムよりも多くの情報を包含できます。また、銀行間や企業間の取引において、より透明性が高く、追跡しやすい取引を可能にします。具体的には、マネーロンダリング対策が講じやすくなります。
さらに、金融業界はデータフォーマットをISO20022に統一することで、送金を依頼する顧客企業からそれを受け取る企業までの送金処理の迅速化を図ろうとしています。これによって、今まで1カ月を要したような処理が1週間に、1週間を要したような処理が1日に短縮されると期待されています。
それというのも、これまでの外国送金プロセスは途中で何度もデータ変換処理が必要でした。送金企業からその企業が取引する銀行への依頼はAフォーマットで、その取引銀行から、受け取り企業が取引する銀行へはSWIFTによってMTと呼ばれるフォーマットで、受け取り企業の取引する銀行から受け取り企業まではBフォーマットといった具合だったからです。「それならいっそのこと、全部ISO20022にしてしまえば話が早いではないか」というわけです。
ここで何度も出てくるSWIFTというのは、正式名称をSociety for Worldwide Interbank Financial Telecommunication(国際銀行間通信協会)といい、銀行や金融機関が安全かつ迅速に情報を交換するためのネットワークシステムを提供しています。SWIFTのネットワークシステムは、国際金融の基盤として主要な役割を果たしており、世界中で数多くの銀行が利用しています。そのSWIFTが、2023年3月よりISO20022対応をスタートさせ、2025年11月にはこのデータフォーマットのみに完全移行することを発表しています。このSWIFTの移行表明により、日本の銀行もISO20022対応を明らかにし始めています。つまり、SWIFT経由で外国送金業務を行っている企業は、自社においてもISO20022対応が必要になります。放置すれば、最悪、エレクトロニックバンキングやファームバンキングを利用した外国送金が行えなくなる可能性があります。インターネットバンキングやFAXに戻って1件1件手入力して送金依頼したり、直接銀行へ出向くといった事態も覚悟しなければならないかもしれません。
それでは、国内企業のISO20022対応はどこまで進んでいるのでしょうか。大きく2つの傾向が見られます。
1つめは、着実に対応準備を進めている企業群です。日本では現在、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行が2024年下期に、りそな銀行が2025年上期に、AnserDATAPORT®を利用したISO20022対応開始を発表※しています。AnserDATAPORT®は、NTTデータが金融機関向けに提供しているファイル伝送サービスです。高速回線を使用し、閉域ネットワークによる安全性を確保しながら、データ授受におけるリスクを軽減しているのが大きな特長です。総合振込、給与振込、賞与振込、口座振替など、数多くの金融取引に対応しており、ここに外国送金依頼も加わることになります。これらの銀行を取引銀行とする企業においては、具体的な開始日時が銀行との間で話し合われ、それに向けた調整が行われつつあるようです。また実は、SWIFTネットワークシステムは銀行を経由しない直接接続という方法も可能で、一部の企業がSWIFT直接接続によるISO20022対応を果たしています。
2つめは、ISO20022対応に目途が立っていない企業群です。前述の銀行以外はAnserDATAPORT®を利用したISO20022対応予定を公表していないため、こうした銀行と取引している企業では、先が見通せない状況になっています。
※詳細はNTTデータサイトをご覧ください。
外国送金の必要な企業が、ISO20022対応に向けて今から準備できることがあります。
まずは、外国送金業務の現状を確認することです。たとえば、どのような仕組みで実現しているのか。重要なのは、ERPやSaaSを利用しているのか、自社開発システムなのかです。また、外国送金を依頼している取引銀行はどこで、その銀行のISO20022対応予定がどうなっているかも確認しましょう。
ERPやSaaSを利用している企業は、ベンダーやサービサーの彼らのISO20022対応予定を確認します。2025年11月までに対応を図るという回答が得られたら、自社で作業を行う必要はほぼない可能性が高いでしょう。しかし、予定がまったく決まっていない、対応できない、という答えが返ってきた場合は、自社主導で対応方法を考える必要があります。
自社開発システムで外国送金業務を行っている企業は、取引銀行に対応予定を問い合わせるとともに、ISO20022対応で要求される接続仕様を把握します。AnserDATAPORT®では、以下の11項目を満たすことが求められます。
項目 | 対応内容 | |
---|---|---|
1 | 項目追加 | MTフォーマットでは一括で取り扱っていたデータを、ISO20022では分割しなければならない場合があります。その際には、データベースに項目(カラム)の追加が必要になります。 |
2 | DB拡張 | 項目の追加に伴い、DB(データベース)拡張の必要が生じる場合があります。 |
3 | 照合データの作成 | 外国送金依頼では、必ず送金するという意思表示のためのデータとして照合データが求められる場合があります。 |
4 | XML形式対応 | ISO20022ではデータをXML形式で作成する必要があります。 |
5 | JX手順対応 | 取引銀行へのデータ送信を、全銀手順からJX手順に変更する必要があります。 |
6 | 結果ファイル取得時間の設定 | データ送信後、その送信結果を知らせる結果ファイルが返ってくるため、その結果ファイルを取得する時間を設定する必要があります。 |
7 | Connecure回線の申し込み | AnserDATAPORT®では、データの送受信にConnecureと呼ばれる回線を利用しており、この回線利用を申し込む必要があります。 |
8 | ファイル伝送基盤構築・環境整備 | データ送受信を行うシステムを構築し、これがスムーズに行えるよう環境を整備する必要があります。 |
9 | 接続情報の変更 | AnserDATAPORT®を外国送金依頼のために利用できるよう、接続情報を設定する必要があります。 |
10 | 金融機関への サービス利用申し込み |
取引銀行に、AnserDATAPORT®を外国送金依頼で利用すると申し込む必要があります。 |
11 | 運用検討 | データ送受信業務が整理できるよう、運用フローを検討する必要があります。 |
このような中、データ・アプリケーションのエンタープライズ・データ連携プラットフォーム ACMS Apexを利用すれば、SWIFT経由の外国送金でISO20022対応が容易に行えるようになります。
ACMS Apexは、EDIから企業内外のデータ連携まで、複数のシステムにまたがるデータ連携をシームレスかつ一元管理できるのが最大の特長です。ACMS Apexの利用により、データ連携業務の運用の効率化が実現、運用コストの削減にも寄与します。このACMS Apexの最新版 V1.9に、オプション「ISO20022対応外国送金」が2024年9月30日に登場、NTTデータの提供するAnserDATAPORT® 外国送金のISO20022に対応します。
ACMS Apexのオプション「ISO20022対応外国送金」を用いることで、AnserDATAPORT® 外国送金のISO20022対応で求められる接続仕様のうち、電文データの変換、作成ならびにデータ授受に関わる業務を担い、外国送金業務を容易に実現します。
具体的には、電文データとなるISO20022準拠フォーマットの作成・解析・分割を ACMS Apex上で行え、JX手順を用いての依頼/照合/結果データ授受はもちろん、各データの処理状況・結果の管理や⼀括確認も可能です。
加えて、AnserDATAPORT®を国内送金用途で利用していたり、ZEDI接続を行っている企業は、これら3業務をACMS Apex1台で担うことができ、受発注などのEDI業務、他社内連携業務、SaaS連携業務との統合運用/管理も可能です。
ここまで、SWIFTネットワークシステムがデータフォーマット移行するのに伴って、企業で求められるISO20022対応を見てきました。タイムリミットは2025年11月、時間はあるようでないと考えた方がよさそうです。万が一、自社開発を余儀なくされるとしたら、限られた開発協力会社を企業間で取り合うことにもなりかねません。早いうちにしっかり現状分析を行い、先手先手で移行までのロードマップを描いていきましょう。何か困ったことが生じたときは、データ・アプリケーションにご相談ください。