Case Study導入事例

株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ(情報・通信)導入事例

情報・通信ACMS B2BPDF PDF

百貨店業界に広く知られた流通EDI
「IQRS.net」を支えているのはACMS

  • 課題
    流通BMS採用企業の加入時に求められた取引先との間の仲介機能
    業界貢献を尊重した利用料ビジネスの中で自社開発回避と費用対効果を模索
  • 評価
    流通BMS及び昔からのEDI標準規格を長年にわたってサポート
    Excelファイルの変換・加工など新しい技術の取り組みにも意欲的

“特別な”百貨店を中核に連邦戦略で外販拡大へ

三越伊勢丹は、社会や環境の変化に合わせてビジネスモデルを変革させながら発展を遂げてきた百貨店だ。直近の中期経営計画では、「お客さまの暮らしを豊かにする、“特別な”百貨店を中核とした百貨店」をビジョンと定め、重点戦略の一つに連邦戦略を掲げた。これは、グループを垂直関係ではなく並列関係に配列し、お互いがお互いを尊重しつつさらにビジネスを成長させるために手を取り合おうという戦略だ。

こうした中で注目を集めているのが、グループの戦略IT企業 三越伊勢丹システム・ソリューションズ(以下、IMS)だ。同社は、1968年に設立された株式会社イセタン・データー・センターにルーツを持つ。現在は、百貨店事業、エムアイカードのシステム構築・保守運用を支える金融事業やグループ事業のみならず、外部に向けたプラットフォーム事業、ソリューション事業を展開。こうした活動による外部収益の拡大が大きく期待されている。

百貨店業界で高いシェア IMS発の流通EDI「IQRS.net」

なかでも、同社プラットフォーム事業を支えるIQRS.net(イクルスドットネット)は、百貨店とその取引先を結ぶWeb-EDIサービスとして、業界で高いシェアを誇る。始まりは、1990年代半ば、衣料品・雑貨を取り扱う米国の小売業・製造業で広く採用された「クイックレスポンス」(QR)の導入にある。目的は、在庫切れの削減、値下げの回避、発注から納品までのレスポンスの短縮の達成だった。そして開発したのが、繊維産業EDI標準メッセージをベースとしたQRシステムだ。いわゆるVAN的な仕組みだったのだが、企業規模問わず導入できるものにしようと、通信にインターネットを利用したバージョンを2001年にリリースした。これは百貨店業界全体から好評を博した。何よりの特長は、百貨店業界に通じているからこそのかゆいところに手が届く仕様、利用料が低額で、百貨店と取引先の取引内容によりサービスを選択利用できること、EDI専任者のいない取引先企業に配慮した手厚いサポートだ。そのため現在では、全国20の百貨店グループ、900の取引先、無料の買掛金支払明細サービスのみ利用するケースでは20,000以上の企業に利用されている。

10年来、IQRS.netを支え続けるACMS B2B

このIQRS.netに、ACMS B2Bが利用されている。きっかけは、大手商業施設(以下A社)がこのプラットフォームに加わったときだった。A社ではメッセージ標準を流通BMSに一本化することを決めていた。しかし、取引先の中にはこれに対応できない企業もある。そこでIQRS.net側で両者の間の変換機能を取り持つべく、流通BMSに対応していたACMS B2Bを、データ変換機能としてAnyTranを採用した。

なぜACMSだったのか。株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ ICTサービス事業部 シニアマネージャー 兼 アカウントエンジニア担当長 藤本 忍 氏は次のように語る。

「百貨店には、クレジットカード会社との接続などデータ連携の機会がさまざまあり、そこですでにACMS B2Bを利用していました。IQRS.netで流通BMS対応のEDIサーバが必要になり調査を始めた際、『ACMSがよい』との社内の実績評価を得て採用しました。」

このとき以来、IMSでは10年以上にわたり一貫してACMS B2Bを使い続けてきた。2020年にIQRS.netをAWSへ移行した後も、それは変わらなかった。立ち上げ当時から携わってきた、株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ ICTサービス事業部 営業担当 スペシャリスト 高橋 毅 氏 はこう語る。

「EDIメッセージフォーマットいうのは、一度採用されるとその後ずっと使われる傾向にあります。日常のビジネスに不可欠で、相手もいるため、切り替えるのが非常に困難だからです。そうしたメッセージにはJEDICOSやユーザー固有フォーマット、その他EDIサービスのフォーマットもあり、ACMSを利用することでこれらに対応することが可能です。JEDICOSのような従来から存在する標準フォーマットを大事にしつつ、かつ、さまざまなフォーマットや通信プロトコルに対応可能な点を気に入って使い続けています。」

IQRS Gatewayサービスなど新機能を続々リリース

2024年2月、同社はIQRS.netの新サービスとしてIQRS Gatewayサービスをリリースした。これは、A社加入のときのような流通BMS対応をさらに発展させ標準化サービスとして切り出したものである。ここでは他のWeb-EDIサービスを利用している百貨店や取引先企業との接続も予定している。そもそもこの新サービスの背景には、三越伊勢丹経営で蓄積した業務ノウハウを基盤とした商品情報管理システムを、「百貨店向け共通プラットフォーム」としてグループ外百貨店へ提供すべく開発したことにある。非競争領域システムを共通化・共有化することで、業界全体でシステムコスト削減を目指すのが目的だ。具体的には、POSシステム、基本マスタ管理、単品マスタ管理、受発注管理などの基幹システムがここに包含される。将来的には、ポイントシステムや友の会システムなども対象にしていく。いわば“百貨店版ERP”だ。提供に際しては、共通システムのみならず導入百貨店に合わせたカスタマイズも行う。このプラットフォームと取引先をつなぐ手段としてIQRS Gatewayサービスが活躍するというわけだ。

株式会社三越伊勢丹システム・ソリューションズ ICTサービス事業部 エグゼクティブアドバイザー 山口 敏明 氏は、次のように語る。

「まだ紙で取引先とのやりとりを行っているという百貨店にWeb-EDIサービスとGatewayサービスを、また必要な百貨店には弊社の商品情報管理システムを採用いただき、そこで必要なシステム開発をIMSがお手伝いしたいと考えています。ACMSをベースとしているため、私たちとしても手間をかけずに構築できます。また、ACMS Apexは多様な外部インタフェースを搭載しているということで、これまでの外部インタフェース固定化を脱却し、お客様に選択肢が提示できそうだと期待をかけています。」

2024年9月には、さまざまなEDIファイルが真正性を保証された形で参照可能となるポータル機能も加わる。

「こうした機能拡張でIQRS.netの魅力をさらに高め、小売業界の流通EDIにおける事実上の標準として業界70社の百貨店にアピールしていきたいと考えています。」(藤本氏)

一方、高橋氏は次のように語る。

「最新版ACMS Apexでは、データ ハンドリング プラットフォーム RACCOONでExcelファイルをそのまま取りこめると聞いています。現在、取引先から提供されるExcelファイルはRPAと補完的な手作業を駆使してデータ変換・加工を行っておりますが、その作業を自動化できます。こうした業務効率化技術には大きな期待をかけています。」

自社ビジネスシステムの仕組み化による外販で、着々と外部収益の拡大を図るIMS。その未来図の中に描かれているのは、IQRS.netを支えてきたACMSシリーズの最新版ACMS Apexの姿だった。

IMSの百貨店向け共通プラットフォーム システム構成イメージ

ACMS B2Bの事例

導入事例 一覧に戻る