2018年12月全銀EDIシステム(ZEDI)稼動、2024年1月固定電話のIP網化
企業間の取引データのやり取りに広く利用されているEDI(電子データ交換)。このEDIが、大きな変革期を迎えています。その中心となる1つ目は、2018年12月より稼働している「全銀EDIシステム(ZEDI)」。ZEDIを利用すれば、企業は決済業務の大幅な効率化が図れます。2つ目は、2024年1月より実施予定の「固定電話のIP網への移行」です。これら2つに共通するのは、現在のEDIを継続して利用することが難しいことです。ZEDIへの対応も固定電話のIP網化への対応も現行EDIの根本的な見直しが必須で、それには多くの時間・コストを伴う膨大な作業が必要となります。今回は、喫緊の対応が求められる「ZEDI対応」と「固定電話のIP網化」について、最善の対応策とEDI大変革をビジネスチャンスに変えるヒントをご紹介します。
2018年12月に稼働を開始したZEDIとは、支払企業が送金指示に使用している現行の固定長電文をXML電文に移行し、より多くの情報を受取企業に送信できるプラットフォームです。固定長電文では、EDI情報が半角20桁の英数字、カタカナしか扱えないのに対し、XML電文は明細内訳といった様々な情報を思い通りに盛り込め、「商流(商品の動き)」と「金流(お金の動き)」を一体にすることができます。このプラットフォームを利用すれば、「その入金額」に「どの注文分が含まれているか」などの明細までわかり、振込企業と受取企業の双方に、経理業務の大幅な効率化をもたらします。
日本の企業間決済では振込業務が多く利用されており、そこには、銀行間資金決済ネットワークである全銀システムが存在しています。これが全国各地の金融機関で受け付けた振込依頼を、全国各地の振込先金融機関へ短時間かつ安全に送信するしくみです。
企業間決済は、一般的に月次処理で行われます。支払企業は1カ月分の注文金額を蓄積し、締め日にそれらを合計して、取引のある金融機関へ総合振込の依頼を実施。受取企業は振込入金通知が届くと、その内容を確認します。ただ、そこには、「いつ」「どの企業から」「いくら振り込まれたか」しか記載されておらず、その入金額にどの注文分が含まれているのかを別途確認する必要があります。これがいわゆる売掛金の消込業務で、受取企業の経理はこの業務に多くの手間とコストをかけてきました。
一方、ZEDIを使えば入金額にどの注文分が含まれているかなど明細までわかるようになるため、経理部門とって大きな負担だった消込業務や入金照会に関する対応も低減され、業務の効率化が図ることができます。
XML電文を使用するZEDIの活用によって、売掛金の消込業務はどれだけ改善できるのか?の実証実験が、各業界団体によって実施されました。その結果、流通業界および自動車部品業界では、受取企業側において年間約400時間(中堅製造業)から約9,000時間(大手小売業)の決済関連事務の合理化効果が確認されました。
※XML電文への移行に関する検討会資料(一般社団法人全国銀行協会)2016年12月より
支払企業は総合振込をXML電文で作成できることが必要となり、受取企業はXML電文の振込入金通知や入出金取引明細を既存のシステムに取り込みやすい形式に変換できることが求められます。しかも、単純にXML電文に変換すればよいわけではなく、金融機関との接続を前提としたメッセージ処理に対応しなければなりません。
具体的には、ZEDIに接続するために、次の3機能が必要です。
【Point.1】XML電文伝送仕様である JX手順の準備
支払企業や受取企業とZEDIとのXML電文伝送仕様である、インターネットEDI用通信プロトコルのJX手順に対応したEDIソフトウェアが必要です。
【Point.2】XML電文を作成・変換機能を提供
支払企業や受取企業でのXML電文の作成・変換機能をもったツールが必要です。支払企業側としては、主に固定長やCSVなどの形式からXML電文への変換を行うこととなります。受取企業側としては、主にXML電文から固定長やCSVなどの形式への変換を行うこととなります。
【Point.3】クライアント証明書の取得・更新機能の提供
ZEDIでは、セキュアなシステム運用のためインターネット接続時にクライアント認証が必須となります。また、クライアント認証を実現するためには、電子証明書の1つであるクライアント証明書が必要です。これはZEDI利用企業を認証するために用いられ、ZEDI仕様に従って初期取得と定期的(約2年毎)更新が必要になります。
XML電文伝送仕様JX手順
ZEDI対応のXML電文を
作成するデータ変換機能の
実装やツールの用意
システム運用のための
クライアント証明書の
取得・更新
固定電話のIP網移行とは、NTT東日本/西日本のPSTN(Public Switched Telephone Network)のテクノロジーが、インターネットテクノロジーベースのIP網へ移行することを意味します。PSTNはアクセス回線とコアネットワーク網で構成されており、前者は発信者宅の電話機からNTT東日本/西日本が所有する加入者交換機までを、後者は加入者交換機、信号交換機、中継交換機などを指します。これらが動的に交換を行うことにより発信者と着信者を接続します。この網には主としてメタル回線によるアナログテクノロジーが利用されているため、アナログ回線とも称されています。
PSTNは、固定電話利用の減少に伴い回線数が激減。交換機の老朽化により部品の補充が難しく、メンテナンスできる人材も減少しています。このような状況から固定電話網に対してNTT東日本/西日本は投資の継続が困難になり、IP網への切り替えを決断しました。IP網への切り替え開始は2024年1月で、2025年1月までには切り替えを完了すると発表されています。
2017年にNTT東西が発表した固定電話網のIP網移行計画では、2024年1月からIP網への契約切り替えが開始され、2025年1月までに完了が予定されています。この大変革は、固定電話をEDIに使用している多くの企業にとって、事業の根幹を揺るがす大問題。また、NTT東西は、固定電話のIP網化によるISDN終了の影響を最小化するため、代替案と補完策を提示していますが、企業間で受発注データなどを連携しているEDIとって、現実的な解決策といえません。
この「固定電話のIP網化」に、企業はどう対応すべきなのでしょう。結論から言えば、JISA(一般社団法人情報サービス産業協会)も提言しているインターネットEDIへの移行を急ぐべきです。ここでまた「2024年1月までには時間がある」とお感じの皆様、余裕などまったくないとお考えください。EDIは自社だけでなく、複数の取引先企業との調整が必要なため、かなりの時間と手間が必要です。スムーズな移行のためにも、今すぐ、現行EDIを3つのポイントでご確認ください。
番号単位にINS回線か?
加入電話か?それ以外か?
を分類
EDI回線に利用している機器を
確認し、回線にタグを付け、
機器に番号・名称を記載
取引先ごとの接続形態を
洗い出し、先方担当の
連絡先も明確に
これまでの解説のとおり、「ZEDI対応」にもインターネットEDIのプロトコルの1つであるJX手順が必要です。また、「固定電話からIP網化」への対応も、現行のEDIからインターネットEDIに移行することが最適解とされ、各業界も推進しています。今こそ企業は、インターネットEDIへの移行に取り組み、「ZEDI対応」と「固定電話からIP網化対応」を実施するのが効率的といえます。
インターネットEDIは、インターネットを通信手段とするEDIです。そのため、送受信データのセキュリティ対策や現行の運用の見直しなどが必要になります。しかし、コスト削減や海外との取引に利用できるなど、メリットは多く、既に国内の様々な業界がインターネットEDIを利用しており、今後、さらに多くの業界での採用が予想されます。