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2018年08月28日
株式会社データ・アプリケーション

日経産業新聞フォーラム開催報告
企業間取引の変革期
「全銀EDIシステム(ZEDI)の稼働、EDI 2024年問題 効率経営のために何をすべきか」


企業間の商取引を支えるEDI(電子データ交換)が変革期を迎えている。12月には全銀EDIシステム(ZEDI)の稼働が予定され、企業間決済の事務作業が大幅に効率化される。2024年にはNTT東西の固定電話がIP網へ移行されISDNサービスが終了するため、企業はさまざまな対応を迫られることになる。EDIをめぐる環境変化にどう対応すべきか。7月4日東京で開催された日経産業新聞フォーラム「企業間取引の変革期 全銀EDIシステム(ZEDI)の稼働、EDI2024年問題 効率経営のために何をすべきか」(主催:日本経済新聞社、協賛:データ・アプリケーション)を紹介する。

セッション1
決済事務の効率化 企業の生産性向上に向けた金融EDIの利活用について

全国銀行協会 事務・決済システム部 次長 高倉 裕一氏

売掛金の消し込み作業が自動化できる

企業と銀行間における振り込みデータなどのやりとりである金融EDIと、企業間における受発注や請求などのやりとりである商流EDIの内容をひも付ける情報項目として、現状のファームバンキング(FB)やインターネットバンキング(IB)のデータ上にも20桁の「EDI情報」欄が存在する。しかし、桁数が少ないこともあり、受け取り企業は振り込まれた金額が、どの取引に対する支払いなのかを振り込みデータから把握することができず、売掛金の消し込みに時間がかかる課題があった。

その課題を解決するために、現状よりも多くの情報項目を柔軟に設定することのできるXML電文によるデータ送受信を可能にし、振り込みデータに取引明細などの情報を添付できる金融EDIを実現するのが、今年の12月に稼働予定の全銀EDIシステム(ZEDI)である。

XML電文となる振込入金通知データに添付された取引明細により、振込金額の内訳があることで正確な売掛金の消し込みができ、処理の自動化、効率化を可能にする。消し込み処理に携わっていた人的リソースを他の業務にシフトすることも可能となり企業の生産性向上にもつながる。

ZEDIの利用に当たっては、支払い企業、受け取り企業のいずれもXMLファイルへの対応(XMLファイルの振り込みデータの作成、XMLファイルの振込入金通知等データの取り込み)が必要になる。

また、現状、FAXや店頭での紙ベースあるいはATMで振り込み依頼を行っている企業においては、XML電文対応のFB、IBの導入が必要になる。一定の費用負担はあるが、業務の効率化による見えにくいコストの削減などを含め、費用対効果を検証しながら対応を検討いただきたい。

また、自行取引先の金融EDI情報の活用によって、金融機関から企業に対して新たなソリューションの提供が期待される。例えば、企業の取引情報の把握によるコンサルタント機能、受発注動向の集計によるビジネスの将来予測や業界動向の分析、小口融資等のサービス提供が考えられる。

ZEDI稼働当初からXML電文に対応したFBあるいはIBサービスを提供するのは92金融機関(6月6日時点)である。企業の皆様に金融EDIの利活用のメリット、合理化効果を知っていただき、XML電文に対応いただけるよう、全銀協・金融界と産業界、そして官と民で連携・協働して、引き続き本取り組みの推進を図っていきたい。

セッション2
今後5年で変貌する日本のデータ連携基盤 ~変革期を迎えたEDI/SCM~

データ・アプリケーション マーケティング本部 EDI/SCM企画推進
エグゼクティブ コンサルタント 藤野 裕司氏

データがシームレスで流れる時代が到来

日本におけるデータ連携基盤のターニングポイントは3つある。最大のポイントは固定電話のIP網への移行だ。2024年1月から「INSネットディジタル通信モード」が終了し、NTTの固定電話網がすべてIP網に変わる。通話に関しては従来通り問題なく使えるが、企業間のデータ交換で使われているISDN回線のサービスが終了するため、既存のEDIが使えなくなる。

流通を例に挙げると、商品の発注はインターネット化が進んでいるとはいえ、EDIは固定電話網の方がはるかに多く使われている。日本で年間約1000万台製造される自動車では部品の調達・組み立てなどコンピューターが自動的に情報を流しているが、このデータの多くは固定電話網を使っている。企業がIP網への対応をしなければ日本の産業は一斉にストップしかねないだけに、早急な対応が欠かせない。

2点目は、金融決済の高度化だ。これは銀行界のみならず、産業界全体、省庁を挙げて国策として取り組んでいる。経理部門は別にして、決済業務については銀行と産業界の個々の受発注と資金の流れにはつながりがなかったが、全銀EDIシステムにより取引と資金の流れがひも付けられ、正確なキャッシュフローが「見える化」されるようになる。

3点目はあらゆるものがインターネットにつながるIoTと人工知能(AI)だ。工場では、生産ラインで使われている部品の量や原料の調達量がリアルタイムで把握できるようになる。稼働状況から在庫量、流通量などもリアルタイムで把握でき、IoTによって産業界がつながる時代が到来しつつある。今後は固定電話も無線も社内LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)も関係なく、データがシームレスで流れる時代が到来する。

現在のEDI/SCM(サプライチェーン・マネジメント)は、ファイル転送、データ交換で行われ、一定量の情報を収集した後に一括して送信する方式を採っているが、これもリアルタイムで送受信できるようになる。これまでは「つなぐ」行為が必要だったが、常時接続のインターネットによって縦横無尽にデータを流せるようになり、この利便性を生かさないとビジネスが成り立たない時代になる。

今後5年で既存のEDIは、インターネットEDIに取って代わる。「Connected Industries」「次世代企業間データ連携事業」など、省によって名称は異なるが、国策として進んでいるのがデータ連携基盤の構築だ。企業にとって、対応が急務なのはいうまでもない。

セッション3
全銀EDIシステム(ZEDI)の稼働に対するSAPの取り組みについて

SAPジャパン グローバリゼーションサービス
グローバリゼーションプロダクトマネジメント
ローカルプロダクトマネージャー 渡邊 佐和子氏

各種対応フォーマットを急ピッチで開発中

企業間の取引には一般的に、支払い企業側は発注登録、請求書照合、仕入れ先請求書登録、支払い処理といったプロセスがあり、代金の受け取り企業側も受注登録に始まり請求書伝票登録、得意先請求書登録、月次請求書処理といったプロセスを踏む。入出金取引に利用されている総合振り込みや入出金取引明細、振込入金通知の電文は現状、固定長テキストファイルだが、今年のクリスマス以降はXMLファイルに変わる。

SAPでは最優先課題として、総合振込依頼明細レコード・フォーマット(pain.001)、振込入金通知結果明細レコード・フォーマット(camt.054)、入出金取引明細結果明細レコード・フォーマット(camt.052)の生成・変換・取り込み機能の開発を急いで進めている。ただ、通信機能やクライアント証明書管理機能、マスター設定機能については、SAPでは対応を考えていない。また、固定長テキストファイルをなくす予定はない。給与振り込みはXML文書にはならないためだ。

ZEDIの疎通テストが8月から予定されており、現在SAPでは全国銀行協会のサイトから公開されている「XML形式 適用業務およびレコード・フォーマット」を踏まえ、プログラムの修正やレイアウトの確定などを進めている。金融EDIの情報はXML構造では、アンストラクチャード(Unstructured)と呼ばれるタグ(〈Ustrd〉タグ)に入れることになる。このタグは140字まで情報が入り、金融EDI情報が140字を超える場合は、さらにこのタグを繰り返し設定して入れることになる。

現在の開発状況は、pain.001についてはアンストラクチャード・タグには情報が入っていないが、XML電文が生成できる段階になっている。camt.052とcamt.054の読み込みに関しては、入金転記できるまでプログラムを改修済みだ。ファイルの「取り込む」のボタンをクリックするだけで、自動的に入金の転記ができるため操作性に優れ、また振り込み元が複数ある場合も、それぞれに入金の転記ができる。XML対応するように改修したプログラムは、当社の保守サービスの範囲内のサービスとして既存顧客に提供される。

今後については、疎通テストを通じて何らかのエラーがあれば随時手直しをしていくほか、顧客の要望をヒアリングしながら、アンストラクチャード・タグにどのような情報を入れるべきか、SAPとしても積極的に提案していく予定だ。

セッション4
ビジネス変化に強く、セキュアで高可用性をもった「つなぐ」を提供するDALの取り組み

データ・アプリケーション マーケティング本部
シニアコンサルタント 中井 基雄氏

経営の効率化に威力を発揮

EDIは現在、データ連携基盤として通信プロトコル、サーバー間連携、業務実行管理、データ変換、データ管理、企業内外でのデータ連携といった役割を担っている。今後インターネットをベースとした新しい形になった時は、「DR(災害復旧対応)/BCP(事業継続計画)」「セキュリティー/多様性」「リアル連携」の役割が加わる。当社ではこれをビジネス連携基盤と呼称している。

「DR/BCP」は、災害などの突発事態があってもシステムが稼働し続けることを担保するものだ。「セキュリティー/多様性」は、いかなるサイバー攻撃に遭ってもダウンしないシステムであり、高いセキュリティーを担保しつつ高可用性を提供するものだ。「リアル連携」は、必要な情報をリアルタイムで入手するもので、IoTやAIを利活用することでより大きなビジネスの基盤になることが予想される。

ビジネス連携基盤へのニーズの一つに、分散する業務システムに点在するデータの統合と可視化がある。さまざまな場所からデータを収集するのが今後は当たり前になり、どこにどのようなデータがあるかを可視化することが大切になる。さらに自社内に設置した情報システム、オンプレミスだけではなくプライベートクラウド、パブリッククラウドなどさまざまなシステムと連携して一つの基盤とすることも重要だ。

同時に、事業の継続性やセキュリティー対策も欠かせない。ビジネス連携基盤構築には当然、データ連携ソリューションが必要になるが、当社が提案しているのがエンタープライズ・データ連携基盤「ACMS Apex」だ。これは当社のACMSシリーズの最上位モデルであり、ビジネス変化に強く、新たなイノベーションを生み出すものとしてリリースした。

例えば、取引先同士の社外EDIをカバーし、国内の生産拠点、支社など遠隔地とも連携できる。ACMS Apexにはさまざまな連携が可能になるだけでなく、既存のアプリケーション資産を生かせるメリットもある。企業で使っている、あるいは開発中のアプリケーションもそのまま使うことができ、インターフェースを変更するなどの手間は不要だ。

インターネットEDIへと時代が向かう中、IP網時代や金融決済の高度化やIoTやAIにも対応して連携でき、社内の仕組みと社外の仕組みもシームレスでつなげることができる。セキュアで高可用性をもった「つなぐ」を提供するのがACMS Apexであり、経営の効率化にも大きな力を発揮すると考えている。

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